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ワインコラム 第110回 新酒の話

北半球では、早いところでは8月からぶどうの収穫が始まります。

 

一般的には9月から10月が収穫のピークですが、近年では地球温暖化の影響で収穫時期が少し早まっています。

 

米や麦など、穀物を原料とするお酒と違って、漿果であるぶどうを原料とするワインは、陰干しワインなど一部例外を除き、収穫したぶどうを直ちにワインへと仕込みを始めなければなりません。

 

10月の初めと言えば、既に収穫が終わったぶどうの仕込みと、現在進行中の収穫が重なる、ワイナリーが一年で一番忙しい時期です。

 

収穫したぶどうを搾り、果汁を得て、それを発酵させる場合、早ければ1週間弱でアルコール発酵が終わりワインができます。

 

秋は新酒の季節でもあるのです!

 

一般的には出来たばかりのワインはすぐに瓶詰めされず、ワイナリーで熟成されます。短いもので数ヵ月、長ければ6年以上も樽などで熟成期間が取られ、それから瓶詰め、さらに瓶内で熟成させて出荷という流れです。

 

しかし新酒は、ほとんど熟成期間を取らずに出荷されます。もう少しで、北半球産の2012年新酒が出てきます。いろいろな場所で新酒が造られていますが、日本でおなじみの代表的な銘柄を挙げますと、ボージョレ・ヌーヴォーBeaujolais Nouveauがあります。

 

(ちょっと寄り道。Beaujolaisはフランス、ブルゴーニュ地方のワイン生産地区のひとつです。日本語では「ボジョレー」もしくは「ボージョレ」と表記されますが、フランス語でeauで「オー」と発音し、laiで「レ」と発音しますので、「ボージョレ」と表記する方がフランス語に近い発音と言えるようです。)

 

日本ではボージョレと言えばヌーヴォー!というイメージが強いですね。普段ワインをあまり召し上がらない方でも、ボージョレ・ヌーヴォーは購入することがあるでしょう。

 

新酒(=ヌーヴォー)は、ワインの中でも特別な存在です。出来るだけ早くワインを仕上げて消費者に飲んでもらうように、醸造において特別なテクニックを用いることもあります。つまり、早く飲んでもらうように、特別にフレッシュ&フルーティに造られた、ボージョレの中でも特殊なワインと言えます。日本はボージョレ・ヌーヴォー世界最大の市場ですので、通常のボージョレよりボージョレ・ヌーヴォーのほうが知名度が高いという特殊な状況にあります。

 

「ボージョレはどうもいまひとつ...」ですとか「ボージョレなんて!」と言うワイン愛好家の方もいらっしゃいますが、ワイン産地としてボージョレを見た場合、ヌーヴォーだけではなく、長期熟成に耐える偉大なワインも生産されていることを忘れてはなりません。

 

ヌーヴォーはヌーヴォーで、私は素晴らしいワインだと思っています。高級レストランでしっかりした肉料理に合わせるようなワインではありませんが、美しい紫の色調を持ち、バナナやキャンディーのアロマを放ち、果実味に溢れる喜びのワインだと思います。

 

新酒を味わう楽しみは、その年の出来が感じられることにもあります。例えば、同じ造り手のボージョレ・ヌーヴォーを毎年の解禁日に試してみると、そのヴィンテージが偉大な年なのか、軽い年なのか、などなんとなく予想が出来て楽しいものです。

 

ボージョレ・ヌーヴォーの解禁日、2012年は1115です。レストランなど、14日の夜からカウント・ダウン・パーティを行うお店がありますね。また、南仏のヌーヴォーやイタリアのノヴェッロ(=新酒)はボージョレ・ヌーヴォーよりも一足早く市場に出てきます。新酒のフレッシュさを楽しみながら、今年の出来に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか?

 

Clos Yは、10月17日のレストラン講座のテーマを「ブルゴーニュ」とし、良質なブルゴーニュのワインをそれに合わせた料理と共にお楽しみ頂きます。ルイ・ジャドのまるで素晴らしいピノ・ノワール!のような極上ボージョレ地方の赤ワインも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。

 

 

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ワインコラム 第109回 ブルゴーニュ地方の話 ドゥニ・モルテ編

ワインが好きな方には、「お気に入りのワイン」というものがあると思います。

 

人によってはざっくりと「ボルドーの赤が好き」ですとか「カリフォルニアのシャルドネが好き」ですとか、あるいはもっと限定的にある造り手が好き、ですとか...

 

世界中のワインを広く楽しんでいらっしゃる方の中で、「好きなワインは何ですか?」と聞かれて困ってしまった経験をお持ちの方は少なくないと思います。

 

ワインが大好きな私の場合も、好きなワインを聞かれると返答に困ってしまいます。

 

フランス、イタリア、オーストラリア、ドイツ、オーストリア、アメリカ...ひとつの国の中でもボルドー、ブルゴーニュ、フランス南西部、シャンパーニュ、ローヌ...

 

きりがありません。

 

例えばブルゴーニュにしても、シャブリChablisのドーヴィサDauvissatやマコネMâconnaisのヴァレットValette、コート・シャロネーズCôte ChalonnaiseのランプLumppなど...

 

きりがありません。

 

ブルゴーニュには素晴らしいワインを産出する尊敬すべき造り手がたくさんいらっしゃいますが、中でも私がその名を聞くと目の色を変えてしまうお気に入りの造り手が、数軒あります。

 

今回ご紹介するのは、その中の1軒、ドゥニ・モルテDenis Mortetです。

Denis Mortet 

ドゥニ・モルテのワインとの出会いは2005年のことでした。私は2005年の9月から11月まで、3ヵ月ほどブルゴーニュ地方のボーヌBeauneに滞在していました。

 

ボーヌはワイン好きにはたまらない町です。ワインやワイン・グッズを扱うお店が多く、それが歩いていける範囲に小さくまとまっています。

 

その中の1軒のワイン屋で、気になっていたドゥニ・モルテのブルゴーニュ・キュヴェ・ドゥ・ノーブル・スーシュBourgogne Cuvée de Noble Souche 2003のハーフ・ボトルを購入しました。当時6ユーロくらいだったと思います。

 

そのワインを飲んだ私は、今でも忘れられない衝撃を受けることになります。その時のテイスティング・コメントは以下の通りです。

 

「全体的に赤紫がかった、やや明るいガーネット。濃縮感のある深い香り。ミルティーユ、カフェ、パングリエ。回すと少しバニラ。香ばしい。アタックは中程度。しっかりとした果実味、中程度の酸。ややボリューム感があり、タンニンはほぼ溶け込んでいる。ボワゼの余韻が長い。濃縮感があり、がっしりしている。少しガスが残っていて若さを感じる。ローヌにでもありそうな、力強いワイン。」

 

2005年の秋に2003を飲んだので、収穫後2年というとても若い状態のワインです。樽から来る香ばしい香りが強く、果実味が濃厚で全体的にとても凝縮感が強かったです。本当に、北ローヌ、それもかなり上質なコート・ローティCôte-Rôtieを連想させられました。

 

2006年にドゥニ・モルテ氏は亡くなってしまい、現在はご子息のアルノー氏がドメーヌを引き継ぎ、現在も高品質なワインを造り続けています。

 

高品質なワインの秘訣は、先代の時も、今も変わらず、「ぶどうの質」にあります。難しいとされるヴィンテージでも、徹底したぶどう栽培を行うことにより、美しい、凝縮したぶどうを収穫しています。

D. Mortet Gevrey 収穫間近のピノ・ノワール 

ワインのあの凝縮感は、他でもない、ぶどうそのものの凝縮感なのです。

 

良いワインは良いぶどうから。当たり前のことですが、「極める」域にまで持っていくことができる造り手はそう多くありません。

 

どの国のものでも、素晴らしいワインは、ぶどうが生まれ育った土地や造り手の苦労も思いながら、大切に飲みたいものですね。偉大なワインは飲み手に何かを与えてくれるはずです。

 

Clos Yは10月8日のレストラン講座のテーマを「きのこと赤身肉祭り」とし、旬のきのこや旨味たっぷりの赤身肉の料理と、それに合わせた素晴らしいワインをお楽しみ頂きます。ドゥニ・モルテ氏の遺作、2003年のピノ・ノワールも登場します!ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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ワインコラム 第108回 ぶどう品種の話 プティ・クルビュ編

世界中の様々な国で多様なワインが造られている今日、消費者が求めるワインは、「どこにでもあるような分かり易いワイン」から「ある場所でしか造られていない個性的なワイン」へと移ろいつつあるようです。

 

ワインの魅力の一つに、「テロワール(=原料となるぶどうが生まれ育った環境)」を感じ取ることができる飲料である、というものがありますし、その土地を思うことによって旅をしているような気分を楽しめることもあると思います。

 

これは、インターネットの普及による情報量の増加も影響を与えていると思います。完全に未知なワインには手を出しづらいですが、未経験のワインでも、産地の様子や醸造方法、さらには造り手の顔まで見えれば、試してみようという気になると思います。

 

ABC(=Anything But Chardonny)という単語が象徴しているように、ある程度ワインに慣れ親しんだ消費者は個性的なワインを求め、まずはぶどう品種に注目しました。ぶどう品種は、ワインの香味の構成の大部分を占めますので、これは当然な流れと言えるでしょう。

 

一昔前のイタリアが良い例です。ワイン大国でありながら第一線を行く他の国々に遅れを取っていたイタリア。醸造、栽培技術の近代化と共に、カベルネ・ソーヴィニヨンシャルドネといったいわゆる「国際品種」により、高品質なワインを生みだし注目を集めました。

 

しかし今日では、国際品種を引きぬき、代わりにその土地ならではの地場品種を植える動きが活発になってきています。

 

世界中のどこにでもあるぶどう品種でワインを造るよりも、その土地ならではぶどう品種を育て、ワインを造る、というのは健全な姿だと私は思います。最近ではスペインでもこのような動きがあり、目が離せません。

 

前置きが長くなってしまいましたが、今回ご紹介するのはフランス南西部でひっそりと栽培されている白ぶどう、プティ・クルビュPetit Courbuです。

 

フランス南西部は、フランスの中でもあまり知られていないぶどう品種の宝庫です。それらの地場品種から、驚くほどの高品質ワインが生まれていますが、中でも特に注目に値するのがこのプティ・クルビュです。

 

プティ・クルビュは伝統的に栽培され続けているぶどう品種で、産地としてパシュラン・デュ・ヴィク・ヴィルPacherenc du Vic-Bilhが挙げられます。素晴らしい甘口白ワインですが、名前の後ろにSecの文字が付いている場合は辛口の白ワインです。

 

ワインにすると柑橘類やはちみつ様のアロマを備え、樽との相性が良く、最上のものは極上のソーテルヌやブルゴーニュの極上白ワインに肩を並べるほどの品質に達します。

 

世界には、それこそ数えきれないほどのぶどう品種が存在しています。中にはプティ・クルビュのような「スター」品種もあるわけです。気になるぶどう品種によるワインを見つけたら、是非試してみてください。今までの自分の味覚に無かった香味を与えてくれるような、夢のような出会いもあることでしょう...!

 

Clos Yは10月8日のレストラン講座のテーマを「きのこと赤身肉祭り」とし、旬のきのこや旨味たっぷりの赤身肉の料理と、それに合わせた素晴らしいワインをお楽しみ頂きます。プティ・クルビュによる極上辛口白ワインも登場します!ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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ワインコラム 第107回 イタリアの話 マシャレッリ編

今回のワイン・コラムは、2010年にイタリアのアブルッツォAbruzzoを訪問した時のお話です。

 

アブルッツォ州はイタリア中部、少し南寄りに位置し、東はアドリア海に面しています。この州を代表するワインと言えば、モンテプルチアーノMontepulcianoという名の黒ぶどうから造られる赤ワイン、モンテプルチアーノ・ダブルッツォMontepulciano d’Abruzzoでしょう。イアリア全体で見ても安くておいしいワインの代表格と言えるワインですが、中には高値を付けられる極上ワインも存在しています。

 

そんな別格的な造り手のひとりとして、マシャレッリMasciarelliをご紹介いたします。

 

ワイナリーが位置するのは海から内陸に入った山間部で、ローマの真東くらいの緯度の所です。

DSC00541 

2008年に亡くなられたジャンニ・マシャレッリ氏は個性的な天才醸造家として知られ、数々の素晴らしいワインを世に送り出してきました。地場品種のモンテプルチアーノやトレッビアーノ・ダブルッツォTrebbiano d’Abruzzoを始め、シャルドネなどの国際品種でも見事なワインを造っています。

 

私がこの造り手を訪問させていただいたのは9月末という、ワイナリーはとても忙しい時期でしたが、印象に強く残るほど親切丁寧な案内をして頂きました。まずは醸造設備をひと通り見させて頂いて、それから車で畑へ連れて行ってもらいました。私にとって初めての訪問だったアブルッツォで、収穫前のモンテプルチアーノを見せて頂いて、とても良い経験になりました。

 DSC00544

DSC00543 やや粒の大きなぶどう 

マシャレッリは、醸造所から少し離れたところに、城を改築したホテル・レストランを所有しています。重厚な城の雰囲気に、現代的な家具が調和しています。試飲はこの城の1室で行われました。

DSC00545 試飲を行った部屋 

ワインはいずれも素晴らしい品質です。高級レンジはもちろん、お手頃な価格のワインもとても良く出来ています。イタリアのワイナリーではよくあることですが、マシャレッリも自家製のオリーヴ・オイルも販売していました。こちらも品質の良いものでした。

 

ジャンニ氏亡き後、奥様がこの偉大なワイナリーを更なる高みへ到達できるよう努力を続けているようです。いろいろ大変であろうことは容易に想像できますので、個人的にも応援したいワイナリーのひとつです。

 

イタリアに行く予定がある人の中でも、アブルッツォ州に行く人はとても少ないのかなと思います。アブルッツォには海の食材山の食材があり、イメージに無いかもしれませんが冬はスキーも楽しめるところです。休日の過ごし方の選択肢の一つとして、アブルッツォのシャトー・ホテルに泊まり、美味しいワインと美味しい料理を楽しむ...というのも悪くない、ですよね!

 

Clos Yは、9月19日のレストラン講座のテーマを「イタリア」とし、イタリアの地場品種による上質なワインを、それに合わせた特別料理と共にお楽しみ頂きます。ジャンニ・マシャレッリ氏が2004年に手掛けたモンテプルチアーノも登場します!ご興味のある方はご連絡ください。

 

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ワインコラム 第106回 ぶどう品種の話 サグランティーノ編

ワイン愛好家、といっても世界中に様々なタイプのワインがありますので、ワイン愛好家の中でも好みのワインのタイプは分かれるようです。

 

専ら白ワイン、という方もいらっしゃいますし、魚でも生牡蠣でも赤ワイン、という方もいらっしゃいます。シャンパーニュは特に女性に人気があるように感じています。

 

ワインの中でも特に赤ワインが好き、という方でも、ブルゴーニュ一筋の方もいれば濃いボルドーが好きな方もいらっしゃいます。

 

濃い赤ワインと言えば、温暖な産地を真っ先に思い浮かべます。南仏やカリフォルニア、スペインやイタリアなど...

 

濃い赤ワインを生むぶどう品種としては、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ、場合によりグルナッシュ、ムルヴェードル、タナ、ジンファンデル、シラーズ、マルベックなどが挙げられます。

 

しかし、広い世界の中で、ごく一部の地域でしか栽培されていない希少なぶどう品種も少なくありません。そのような品種の中で、世界でも最も濃厚な赤ワインを生みだす力を秘めているぶどう品種があります。それこそ、今回ご紹介するサグランティーノSagrantinoです。

 

サグランティーノはイタリアのウンブリアUmbriaで栽培されています。数年前の調査では、この品種の最大の産地と言われるモンテファルコMontefalcoでさえ僅か100haほどの栽培面積しかない希少なぶどう品種です。

DSC00508 Montefalco

 DSC00507 Montefalcoからの風景

この黒ぶどうから造られる赤ワインは、色が濃く、果実味が豊かで、豊富なタンニンを含んでいます。極上のものは、時に「大地を揺るがすような」と形容されるほどです!

 

サグランティーノはサンジョヴェーゼとブレンドされることがありますが、D.O.C.G.に指定されているサグランティーノ・ディ・モンテファルコSagrantino di Montefalcoではサグランティーノを100%使用することが義務付けられています。

 

サグランティーノ・ディ・モンテファルコは、甘口と辛口、2種類の赤ワインがあります。甘口はぶどうを陰干ししてぶどうの水分を飛ばし、糖度を上げることにより造られる「パッシート」ワインです。濃厚でヴィンテージ・ポートのような印象があります。この甘口も良いですが、この品種の個性は是非辛口(甘くない)赤ワインで体感して頂きたいものです。特に極上の造り手によるサグランティーノ・ディ・モンテファルコは、数多くのワインを飲んできたワイン愛好家にも忘れがたい経験を与えてくれるはずです。

 

Clos Yは、9月2日のレストラン講座のテーマを「多彩なイタリアワイン」とし、極上のイタリアワインをそれに合わせた料理と共にお楽しみ頂きます。サグランティーノの最高峰のひとつ、パオロ・ベアのサグランティーノ・ディ・モンテファルコ2003も登場します!ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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ワインコラム 第105回 ボルドー地方の話 シャトー・ラフィット・ロートシルト編

ワイン愛好家なら一度は口にしてみたいワインがあると思います。

 

シャンパーニュのドン・ペリニョンDom Pérignon、ブルゴーニュのアンリ・ジャイエHenri Jayer、オーストラリアのグランジGrange、スペインのウニコUnico、アメリカのハーラン・エステイトHarlan Estateなど...

 

中でも多くの人が憧れるのはロマネ・コンティRomanée-Conti、そしてボルドーの5大シャトーでしょう。

 

いずれも10年前は少し頑張れば購入できるくらいの金額でしたが、近年では飲み物としては非常識な高値が付けられています。もはや投機の対象にもなっていて、原産国のフランスに行っても値段は高いので、純粋なワイン愛好家には悲しい状態です。

 

今回はそんな5大シャトーの中でも、1855年の格付け時に筆頭に選ばれたシャトー・ラフィット・ロートシルトChâteau Lafit Rothschildをご紹介いたします。

 

ボルドーの中でもその品質で名を轟かせるポイヤックPauillac村の北部に位置するこのシャトーは、現在約103haの畑を持ち、年間15,000から20,000ケースを生産しています。

 

まずこのシャトーのすごいところは、生産量に対する品質の高さです。世界中を見渡すと、驚くべき品質の極上ワインがいろいろな産地で見られますが、生産量は数千本から、多くても1万数千本というところがほとんどだと思います。中には1年の生産量が僅か300本というものもあります。ワインに限った話ではないと思いますが、極上の品物を作るときに、あらゆる労力を集中させて極僅かな、極めて完成度の高いものを作るということはそれほど難しいことではないかもしれません。しかし、その完成度を保ちつつ、かつある程度の量も作ろうと思うと大変です。ラフィットはそれを可能にしているのです。

 

では、どのようにラフィットは高品質なワインを安定して生産できるかと言うと、まず一番重要な点として挙げられるのが、畑(テロワールの優位)でしょう。

 

実際に畑に立って驚きました。世界的に有名なメドック地区ですが、大半の畑は平坦です。迫力を持って迫り、見上げてしまう急斜面のローヌ北部やドイツの銘醸畑のような神々しさは感じられません。そんな中にあり、ラフィットの畑には起伏があります。傾斜のある畑は効率良く陽を浴びて、雨の時は排水を促します。結果として良く熟したぶどうが収穫できるということです。

Lafite畑 

メートル・デュ・シェ(醸造長)のシャルル・シュヴァリエ氏を筆頭とした醸造チームの努力は言うまでもありません。細部にこだわり、新旧の道具を巧みに使い、熟成用の樽の一部は自社で作るというこだわりようです。

 

品質には直接関係ないかもしれませんが、マーケティングに注目してみても面白いです。マーケティングと言えばシャトー・ムートン・ロートシルトChâteau Mouton Rothschildの毎年変わるアート・ラベルが有名ですが、ラフィットも2008年ヴィンテージのボトルに「八」と漢数字を入れています。近年重要な顧客になっている中国市場を意識したものでしょう。実際ラフィットは高級ワインの大切なマーケットになりつつある中国で最も人気のある銘柄であるようです。

 

そのような一部の高い需要により、ラフィット(と残りの5大シャトーなど)の価格の上昇にはため息が出ます。2005年や2009年、2010年など出来の良かった年の価格の上昇には苦い顔をしながらも納得をするしかありませんが、そうではない年に劇的に値段が下がるかと言えばそうではありませんので困ったものです。

 

ワイン愛好家のみならず、多くの人が気軽に上質なワインを楽しめるようになってもらいたいものです。Clos Yは恐らく(日本の)どのお店よりも優しい値段で上質なワインを販売しています!

 

Clos Yは、8月26日(日曜日)12時から、シャトー・ラフィット・ロートシルト1960の試飲を含む単発講座を企画しております。受講料は低めにしてありますので、ラフィットを試してみたい方、古いワインに興味のある方はこの機会をお見逃しなく!

 

 

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ワインコラム 第104回 イギリスの話 ナイティンバー編

オリンピックで盛り上がっているイギリス。料理が美味しくないという不名誉な評判が定着してしまっておりますが、ワインという点で見ると、ボルドーをはじめとする高級ワインの消費国として長い歴史があります。また、世界的に有名なワイン・ジャーナリストを数多く輩出しています。

 

まさに、イギリスはワインの先進国と言えます。

 

しかし、ワイン生産国としてイギリスを見てみると、ほとんど無名の国になります。イギリスでワインが造られていること自体あまり知られていないでしょうし、イギリスのワインを飲んだことがある方は、とても少ないのが現状だと言えるでしょう。

 

ですが、知名度は低くても、生産量は少なくても、とても上質なワインが造られております!

 

イギリスでは、上質なワイン用のぶどうはイングランドの最南端のあたりで栽培されています。ドーヴァー海峡を渡ればフランスまですぐ、というところです。

 

この辺りの土壌はシャンパーニュ地方と同じと言われています。気候も似ています。となると、上質なスパークリング・ワインが造れるのではないかと思いますよね。実際、イギリス・ワインで有名なものは、現時点ではスパークリング・ワインです。

 

上質なイギリスのスパークリング・ワインは(安くはありませんが)高品質なシャンパーニュに比肩し得る品質を備えています。イギリスが秘めている高品質スパークリング・ワイン造りの可能性は、シャンパーニュ地方の造り手がイギリスにワイン生産用に土地を購入している事実を見ても確認できるでしょう。

 

特に有名なイギリスのワイン生産者として挙げられるのはナイティンバー・ヴィンヤードNyetimber Vineyardです。その歴史が始まるのは1986年からで、現時点で26年ほど経っております。世界的に見るとまだ新しい造り手ですが、イギリスでも20年以上前から上質なワインが造られていたということですね。

 

この造り手は、シャンパーニュと同じ手間暇のかかる製法でスパークリング・ワインを造り、6年もの長い熟成を経てから初めてワインを売りに出します。そのため、私たち消費者は熟成感を伴った複雑な風味のスパークリング・ワインを楽しむことができます。

 

今日では世界中で素晴らしいスパークリング・ワインが造られています。世界的にこのナイティンバーのスパークリング・ワインを見てみると、やはりシャンパーニュに近い個性を備えていると思います。

 

ワインが好きな方は、一度試すべきイギリスのワインでしょう。オリンピックを見ながら、というのも今だけの粋な飲み方かもしれないですね!

 

Clos Yは、8月15日のレストラン講座のテーマを「イギリス」とし、高品質なイギリスのワインをそれに合わせた料理と共にお楽しみ頂きます。ナイティンバーもブラン・ド・ブラン2001とクラシック・キュヴェ2001と、2種類登場いたします!ご興味のある方は是非いらしてください。

 

 

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ワインコラム 第102回 フランスの話 コルシカ島編

7月4日現在、東京はまだ梅雨ですが、これから先1週間の天気予報を見ると、傘マークが見られません。

 

梅雨明けが近いのでしょうか?梅雨が明けるといよいよ真夏の到来ですね。

 

夏の空を想像すると、コルシカ島Corseの情景が浮かんできます。私はいろいろなワイン産地を訪れましたが、コルシカ島、特に北西部の海沿いの道からの景色は、強く心に残る美しさでした...

 

私がコルシカ島を訪れたのは、2004年5月のことでした。当時私はボルドーに住んでおりましたが、ボルドーから東へひた走り、サヴォワSavoie、ピエモンテPiemonteなどのワイン産地を訪問し、トスカーナToscanaのリヴォルノLivornoという町からコルシカ島の北東に位置するバスティアBastiaという町まで、車ごと船で移動しました。

 

バスティアから海沿いに南下し、島の西に位置するアジャクシオAjaccioに行き、そこから島の中央の道を通り北東方面に行き、それから海沿いを西へ。ちょうど「&」の字を書くように島を回りました。

 

鮮明に覚えているのは、海から山が突き出しているような島の様子、それから海の美しさです。

 

海は透明度が高く、ハーバーではとげの長いウニが生息している様子が見られます。島の北西部は、一部舗装されていない、土煙がもうもうと立ち上る道をうねうねと長時間走り閉口しましたが、その後の岩、海、夕陽の風景には感動させられました。

 

この島は海と同時に、「山」らしい要素が多い土地です。食文化で言えば羊乳の新鮮なチーズ、ブロッチュBrocciuや土地の生ハム、サラミ類は、コルスを訪れる際には是非試してみたい逸品です。

 

さて、ワインですが、全般的に見ると、正直あまりぱっとしない印象を私は持っています。それなりにおいしいのですが、心を打つほどの品質のものは少ないようです。

 

しかし、もちろんこの島でも極上のワインが造られています。特に注目すべき土地は、島の北東部に位置するパトリモニオPatrimonioというアペラシオンです。「あの」、もしくは「伝説の」と形容したいアントワーヌ・アレナAntoine Arenaはこの土地の畑から素晴らしいワインを造っていますし、他にも注目すべき生産者がいます。

 

私が訪問したのはドメーヌ・レッチアDomaine Lecciaです。島北部の港町、サン・フローランSt-Florentから細い道を内陸に入って行きます。サン・フローランの東には、小さな山がありますが、その山を西から南へ回り込むように移動します。山の南側の斜面は一部地盤がむき出しになっていて、その麓に畑が拓かれています。

Leccia 

土壌は粘土・石灰質とのことですが、表面はやや黄色っぽい砂状のように感じられます。

 Leccia2 Lecciaの畑 

レッチアのワインは品質が高く、フランスでは高く評価されているのですが、生産量が少なく、日本ではほとんどお目にかかることができません...しかし、幸いにも大御所アントワーヌ・アレナのワインはレッチアより比較的容易に入手可能です。

 

美しい島、コルスが育んだワインで、夏の訪れに乾杯してみてはいかがでしょうか?

 

Clos Yは、7月22日のレストラン講座のテーマを「オマール海老と地中海のワイン」とし、高級食材オマール海老を使用したフル・コースの料理と、地中海の上質なワインを合わせてお楽しみ頂きます。アントワーヌ・アレナのパトリモニオ白も登場します!ご興味のある方はご連絡ください。

 

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ワインコラム 第100回 ブルゴーニュ地方の話 アルマン・ルソー編

2009年にClos Yクロ・イグレックを立ち上げ、ワインに関するコラムを細々と書いてまいりましたが、今回で100を迎えました。

 

今回は、ブルゴーニュを代表する生産者のひとり、アルマン・ルソーArmand Rousseauについてご紹介したいと思います。

 

ジュヴレイ・シャンベルタン村Gevrey-Chambertinに居を構えるこの造り手は、多くのブルゴーニュ・ワイン愛好家が憧れる赤ワインの名手です。巨匠という言葉が相応しい造り手さんでしょう。

 

所有する畑の面積は約14ha。そのうち8haほどがグラン・クリュであり、その他にもプルミエ・クリュの筆頭格であるクロ・サン・ジャックClos Saint-Jacquesなど豪華なクリュを所有しています。そのため、見かけるワインはグラン・クリュが多く、ヴィラージュ・クラスのワインにはほとんどお目にかかることができません。

 

畑はほとんどGevrey-Chambertin村内にあり、唯一の例外がお隣のモレイ・サン・ドゥニ村Morey-Saint-Denisのクロ・ド・ラ・ロシュClos de la Roche(これもグラン・クリュ)です。

 

かねてから訪問してみたいと思っておりましたが、それが実現したのは2004年の11月でした。私はひとりで予約を取り、伺ったのですが、北欧からのワイン関係者のグループと一緒にドメーヌを案内して頂きました。

 

地下のセラーに降りて、当時まだ樽熟成中だった2003年を中心に試飲です。

 

大きめのグラスを受け取り、まずは自慢のモノポール、リュショット・シャンベルタン クロ・デ・リュショットRuchottes-Chambertin Clos des Ruchottesから。瓶詰め前のサンプルの状態ですが、甘く、華やかな香り、豊かに広がる果実味、長い余韻にいきなり圧倒されました。次いでクロ・ド・ラ・ロシュマジ・シャンベルタンMazis-Chambertinシャルム・シャンベルタンCharmes-Chambertinとグラン・クリュが続き、次いでプルミエ・クリュのラヴォー・サン・ジャックLavaux Saint-Jacquesクロ・サン・ジャック。そして真に偉大な2つのグラン・クリュ、クロ・ド・ベズClos de BèzeシャンベルタンChambertinで締めくくりです。

 

まだ樽熟成中の、しかも熱波に襲われた2003年でしたが、畑ごとの違いははっきりとワインに示されており、興味深い試飲となりました。上質なワインは若いうちから素晴らしいものです。例年よりもタンニンの強いヴィンテージで、しかもまだ瓶詰め前の若過ぎる状態なのに、口中がぎしぎしなどせずに、タンニンが溶け込んでいたことには驚かされました。

 

高い平均樹齢低収量によるぶどうの凝縮など、この造り手の高評価の理由はいくつでも挙げられますが、根底にあるのは丁寧なぶどう栽培と、それを実現させるワインへの情熱、ぶどうへの優しさ、ひいては人柄の優しさにあるのだなと、お話をうかがいながら思いました。

 

近年では若い世代による上質なワインも出てきているブルゴーニュですが、時にはルソーのような巨匠のワインを飲むことが必要なように思われます。少なくとも、ジュヴレイ・シャンベルタンという村、そしてそのワインを理解するうえでは欠くことのできない生産者です。

 

アルマン・ルソーを未体験の方は、まずはヴィラージュのジュヴレイ・シャンベルタンから試されることをお勧めいたします。入手困難ですが、その品質の高さに驚かされるでしょう。そしてジュヴレイの真髄に触れることになります。

 

Clos Yは、6月23日の単発レストラン講座で、アルマン・ルソーのジュヴレイ・シャンベルタン・プルミエ・クリュ・レ・カズティエ2006を含む、2006年の上質ブルゴーニュ・ワインの水平比較を企画しております。名高いグラン・クリュも登場します!ご興味のある方はご連絡ください。

 

ワインコラム100回記念!このコラムを読んでくださった方への特典として、3名の方を対象に、無料出張ソムリエを行います。友人が集まるワイン会などで、ソムリエによるプロのサービスをご提供いたします。(※企業によるご依頼は除かせて頂きます。)ご希望の方はワイン会が行われる場所、ワイン会の規模(参加する人数)、日時と代表者の氏名、ご連絡先をご連絡ください。

 

 

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レストラン講座 世界の銘醸地を巡る!2012 募集中です!

レストラン講座とは、レストランを会場に料理とワインを合わせて楽しむ講座です。ワインの勉強ができて、料理とのマリアージュも体感できる、一石二鳥の講座ですね!
この講座は、テーマの産地の優良ワインと、そのワインに合わせて料理長に特別に作って頂くフルコースのフランス料理(冷前菜、温前菜、主菜、デザート)をお楽しみ頂ける講座です。毎月、世界の銘醸地を旅するように楽しい時間をお過ごしいただけます。

 
日時&テーマ
12月19日(水曜日) 20時から テーマ 半年に一度の豪華版 ※ワインも料理も豪華版です!

 

場所 

池袋 オザミ・サンカントヌフ (サンシャイン60ビルの59階にあります。)

 

受講料 

12月19日の豪華版 15,750円(税込) 

 

最大定員 

7名

 

詳細

12テーマ 半年に一度の豪華版

2012年最後のこの講座は、ワインも料理も、質・量ともにグレード・アップでお届けいたします!

アペリティフに クレマン・ダルザス ブリュット0 2006 ジュリアン・メイエ

冷前菜と プラ・デ・バジェス ピカポル 2009 アバダル

温前菜と ヴァン・ド・ペイ・デ・コート・カタラーヌ グルナッシュ・ブラン ヴィエイユ・ヴィーニュ 2005 ドメーヌ・クロ・デ・フェ

肉料理と コート・デュ・マルマンデ シャント・クークー 2003 エリアン・ダ・ロス

チーズと コート・ド・カスティヨン 1999 プピーユ

デザートと ソーテルヌ 2001 シャトー・フィロ

  

オザミ・サンカントヌフ杉原シェフによる、ワインに合わせた特別料理にもご期待ください!

DSC00854 仔いのししのソーセージとブーダン・ノワール(温前菜)

DSC00859 濃厚な魚介のパエリア!1993 Rioja白と一期一会のマリアージュ。

DSC00855 ジビエもあります!スコットランド産ヤマウズラ。

DSC00856 濃厚なチョコレートのテリーヌ。バニュルスとの相性は抜群でした...

受講ご希望の方、使用予定のワイン、料理などについて気になる方はメールでご連絡ください。

vinclosy@aol.com

 

※以上の予定ワインは変更になる場合があります。また、予期せぬワインの劣化(ブショネなど)が起こり得ることを予めご了承ください。

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