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ワイン・コラム 第147回 ローヌ地方の話 ギガル編

フランス南部に位置するローヌRhône地方。ローヌ川沿いに南北に広がるワイン産地です。

ローヌ地方は北部南部に分けられますが、それぞれ全くと言って良いほど違うタイプのワインを生産しています。北部と南部を別の産地として捉えたほうが良いのではと思います。

簡単に説明しますと、北部では赤ワインも白ワインも主に単一品種で造られ、ワインは力強いながらもエレガントさを備えています。それに対し南部(シャトーヌフ・デュ・パプの生産者、ネルトの方は我々はプロヴァンス地方にいるとおっしゃっていました。)では赤ワインも白ワインも主に複数のぶどう品種のブレンドで造られ、ワインは南の太陽の恩恵を受けふくよかでボリューム感が強く表現されています。

今回は、そんなローヌ地方を代表する生産者のひとり、ギガルGuigalをご紹介いたします。

手掛けるワインは広く、シャトーヌフ・デュ・パプやジゴンダスなど南ローヌ、そしてエルミタージュやコンドリウなど北ローヌ、つまりローヌ全域のワインを生産しています。

本拠地を置くのはアンピュイAmpuisの町です。この町はローヌ地方を代表する高級銘柄であるコート・ローティCôte-Rôtieの産地です。
Cote-Rotie畑2
Cote-Rotie畑3
ギガルを語る上で欠くことのできない看板ワインであるラ・テュルクLa Turque、ラ・ムーリーヌLa Mouline、ラ・ランドンヌLa Landonneの畑はこのギガルの本社の近くに位置しています。

ギガルのワインに限ったことではないのですが、コート・ローティは、フランス語で「焼けた丘」という名前から、いかにも「熱い(=ボリューム感が強くて重い)」ワインを想像してしまうと思うのですが、実際はローヌ地方最北端、ブルゴーニュに近い場所のワインなので、その名に反してエレガント系です。

加えて、コート・ローティに使われるシラーSyrahも少し誤解を受けている品種であるように私は感じています。

北ローヌが原産地とされるこの品種は、北ローヌではある程度高価なワインになります。オーストラリアなど別の産地では廉価なシラー(もしくはシラーズ)がたくさんあり、そのようなワインのほうが身近なことでしょう。しかし北ローヌのシラーとオーストラリアのシラーズでは同じ品種とは思えないほどワインのスタイルが異なります。オーストラリアのシラーズは一般的に果実味が豊かでボリューム感が強いワインに仕上がります。それに対し北ローヌのシラーは冷涼な雰囲気を持ち、ボリューム感は強くなり過ぎず、エレガントにまとまります。世界レヴェルのソムリエも、ブルゴーニュのピノ・ノワールと間違えることがあるほどです。

ギガルの話からそれてしまいましたが、このように、ギガルの看板ワインであるコート・ローティは常にエレガントさを備えています。

ギガルのワイン全体を見て、すごいと思うのは、そのボトム・レンジであるいわゆる「コート・デュ・ローヌ」の質の高さです。赤は18ヵ月もの間樽熟成され、(年により異なりますが)シラー主体です。驚くべきコスト・パフォーマンスの高さを誇っていますが、生産量の多いこのクラスのワインをあのレヴェルに仕上げることに驚かされます。

北から南まで、ローヌの上質なワインを造るギガル。この地のワインを知る上で、欠かせない存在です。特に今、冬季はジビエのシーズンです。野趣味溢れるジビエを、濃厚なソースで頂くとき、ボルドーやブルゴーニュも良いですが、ローヌのワインは鉄板です!試してみてはいかがでしょうか?

Clos Yは、2月2日のレストラン講座のテーマを「ジビエを食す!」とし、ジビエ料理をそれに合う素晴らしいワインとともにお楽しみ頂きます。ギガルのトップ・ワインのひとつ、コート・ローティ ラ・ムーリーヌ2006も登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。

講座へのお申し込み、ご質問等はこちらのアドレスにご連絡ください。
vinclosy@aol.com

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ワイン・コラム 第146回 ブルゴーニュ地方の話 ドメーヌ・ポンソ編

ワイン愛好家を魅了する、ブルゴーニュ地方のワイン。

素晴らしい造り手、歴史ある偉大な畑...

使われるぶどう品種は主にシャルドネとピノ・ノワール2種類だけですが、その魅力は深く、多岐に渡ります。

ブルゴーニュ地方を代表する偉大な畑には、それぞれ「この畑はこの生産者!」という組み合わせがあるように思われます。

例えばシャンベルタンChambertinはアルマン・ルソーArmand Rousseau、ミュジニーMusigyはヴォギュエVogüéなど。

今回ご紹介するドメーヌ・ポンソDomaine Ponsotは、モレイ・サン・ドゥニ村Morey-Saint-Denisに居を構え、同村のグラン・クリュ クロ・ド・ラ・ロシュClos de la Rocheを代表する生産者です。

現当主ローラン・ポンソ氏は、ぶどう栽培もワイン醸造もできる限り人の手を加えず、自然に任せるようにしています。栽培は独特で、殺虫剤などを用いず、天体の動きを考慮に入れますが、ビオロジックともビオディナミとも異なる独自の自然栽培法です。収穫量は常に低く、手摘みされたぶどうは畑で厳しく選果されます。

醸造所は4層構造になっていて、エレヴェーターが備わっています。グラヴィティ・フローで、ワインに負担をかけるとされるポンプは一切使いません。

醸造中の様々な選択は、各ヴィンテージのぶどうの状態により判断して行きます。そのため、特定の決まりがありません。

かつて訪問させて頂いた、極上ワインの造り手南ローヌのドメーヌ・デュ・ペゴーDomaine du Pégauでも、「醸造に関するレシピは無い」というお話を伺いましたが、優れた造り手が持つ勘というものがあるのでしょうか。

熟成に用いる樽に関しては、新樽は使わないという決まりがあり、そのような樽で熟成されたワインは新樽の香りを纏わず、テロワールをピュアに表現します。

亜硫酸も極力使いません。

生まれるワインは非常に個性的(アリゴテ100%のプルミエ・クリュがありますが、それ以外のキュヴェも)で、熟成と共に開いていくタイプのようです。

そのためか、玄人好みのワイン、というイメージがあります。しかし、ブルゴーニュ愛好家としては一度は試すべきですし、避けて通るべきではない造り手だと思います。

知的当主が生み出す「土地の声」が宿ったワイン、一度試してみてはいかがでしょうか?

Clos Yは、2月9日の単発講座「偉大なワインを飲む!」のテーマを「ドメーヌ・ポンソ」とし、看板のクロ・ド・ラ・ロシュ・ヴィエイユ・ヴィーニュ、クロ・デ・モン・リュイザンを含むワインの試飲と講義を行います。ご興味がございましたらご連絡ください。

講座へのお申し込み、ご質問等はこちらのアドレスにご連絡ください。
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ワイン・コラム 第145回 美食の話 コルディアン・バージュ編

明けましておめでとうございます。

2014年もよろしくお願い申し上げます。

年末・年始にかけて、お酒を飲む機会が多く、合わせて美食を楽しまれることも多いと思います。

今回は美食のお話。ボルドー地方最高のレストランのひとつコルディアン・バージュCordeillan Bagesをご紹介いたします。

ボルドー市の北部、メドック地区のポイヤック村に位置するこのレストランは、素晴らしい評価を得ているワイナリーであるシャトー・ランシュ・バージュのオーナーが所有しています。

ボルドーの方からメドックを北上してくると、ポイヤックに入って間もないところに位置しています。主要な道の傍らにあるので、ポイヤックの中心部に入る前に通り過ぎることになります。

私がここを訪れたのはもう9年ほど前になります。当時と今とでは異なる点も多々あると思いますが、まずは落ち着いた雰囲気のサロンに通され、アペリティフを楽しみます。続いてメイン・ダイニングへ。

お昼のコースを取ったのですが、今でも印象に残っている料理はpousse de sojaのリゾットです。pousseとは「新芽」などの意味があります。sojaは「大豆」。つまり、「もやしのリゾット」が出てきました。もやしを米粒ほどの大きさに切ったものをリゾットのように調理したものです。まさかボルドーのミシュラン星付きレストランまで来てもやしを食べることになるとは!でも牡蠣とトリュフのソースで、口に含むと海と土の香りが広がり、なかなかの一皿でした。

せっかくなのでホーム・ページに載っている現在のメニューをご紹介しますと、一番カジュアルなお昼限定(日曜、祝日を除く)のものが
選べる前菜
選べるメイン・ディッシュ
選べるデザート
白ワイン1杯、赤ワイン1杯、ミネラル・ウォーター、コーヒー付き
これで60ユーロ(飲み物無しの場合45ユーロ)です。

具体的に料理を、ア・ラ・カルトの所から紹介しますと、
前菜
カリフラワーのヴァリエーション 牡蠣とキャヴィアと共に
(そう言えばボルドー地方の隠れた特産品のひとつにキャビアがあります!)

魚料理
オマール・ブルー 小さな野菜のリゾット コライユのカプチーノ

肉料理
野兎のア・ラ・ロワイヤル ブルゴーニュ地方のトリュフ添え
アニョー・ド・レ(乳飲み仔羊)のグリル
(ポイヤックでは仔羊も名産です。メニューにはポイヤックの仔羊とは明記されていませんが)

もちろんワインはボルドーの品揃えが豊富です。シャトー・ランシュ・バージュは多くの年代がありましたし、シャトー・コルディアン・バージュのワインもありました。

ボトルで注文した赤ワインはデキャンタージュしてくれましたが、印象に残っているのはミネラル・ウォーターまで別の容器に移してくれたことです。やる必要があるのかどうかはともかく、なかなか他のレストランには無いサービスでした。

ボルドーの町からは車で1時間ほどかかりますが、ホテルも併設されていますのでゆっくり滞在できます。ボルドーにいらした際には、町を離れカベルネ・ソーヴィニヨンの聖地で、ゆっくりとした滞在を楽しむのも良いかもしれませんね。

Clos Yは、1月15日のレストラン講座のテーマを「ボルドー」とし、良質なボルドーのワインと、それに合わせた特別料理をお楽しみ頂きます。コルディアン・バージュのグラス・ワインとして使われる白ワインも登場いたします。

講座へのお申し込み、ご質問等はこちらのアドレスにご連絡ください。
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ワイン・コラム 第144回 ボルドー地方の話 シャトー・シュドュイロー編

甘口ワイン

赤、白、スパークリングなど複数あるワインのカテゴリーのひとつですが、最も注目されていない分野と言えるでしょう。

ワインは食事と合わせて楽しむもの、と考える場合、甘いワインを飲みながら食事をするのは、相性の良い料理があることは確かですが、一般的には難しいように思われます。

そうなると、甘口ワインの出番は、食前酒として、もしくはチーズやデザートと合わせて食事の後半に、もしくはそれ自体を単体で楽しむ、と比較的限られてしまいます。「食」が軽い傾向になり、忙しい現代では、フランス料理でもコースの後半にチーズを食べること自体少なくなっていますし、じっくり上質な甘口ワインと向き合う時間も無くなっているのではないでしょうか。

こうした状況や、身近にある甘口ワインが大量生産の安価なものが多いという現実から、ワイン愛好家の間でも甘口ワインが注目されていないと思われます。

しかし、ワインの品質に対して情熱を持つ生産者が、自然と向き合い生み出す上質な甘口ワインは、まさに自然の賜物で、ある程度の生産量がある高価な赤ワインなどの何倍もの価値があるように思えてなりません。

今回は、もっともっと注目すべき世界の極上甘口ワインの中から、フランス、ボルドー地方のソーテルヌSauternesシャトー・シュデュイローChâteau Suduirautをご紹介いたします。

甘口ワインには遅摘みで自然に糖度が上がったぶどうから造られるものやぶどうを陰干しして少し干しぶどう状態になったぶどうから造られるものなど複数の造り方がありますが、ソーテルヌは世界屈指の貴腐ワインの産地です。

貴腐ワインは、ボトリティス・シネレアという特殊な菌がこれまた特殊な環境の下発達し、かびに覆われて一見腐ったような状態の、水分が飛んで凝縮されたぶどうから造られる甘口ワインです。

様々な条件を満たさないと生まれない、自然の産物なので、貴腐ワインの産地は世界的に見ても非常に限られています。

ソーテルヌに話を戻しますと、ここはかつてより知られた貴腐ワインの名産地で、1855年にはナポレオン3世の命により特に優れたシャトーが「グラン・クリュ」に格付けされました。

シャトー・シュデュイローはグラン・クリュの中でも栄えある1級に格付けされ、格付け制定から1世紀半以上経った現在でもその格付けに恥じない素晴らしいワインを造り続けています。

プレイニャックPreignac村に位置するこのシャトーを私が訪問したのは2004年のことになります。この辺りは一面ぶどう畑が広がる静かなところですが、シュデュイローには実際に立派な「」があります。

Suduiraut1

美しく手入れがされている畑の土壌は小石や砂が多く、白っぽい色をしています。

Suduiraut2

高品質な貴腐ワインを造るためには凝縮した貴腐状態の果実が必要不可欠ですので、収穫は人の手によって粒単位で行われるとのことです。ぶどうを粒単位で収穫する...気が遠くなりそうで、この時点で通常の高級ワインの何倍もの値がついてもおかしくないように思われます。

実際のところ、貴腐菌が付いたぶどうは凝縮し、収穫量が通常のワインの1/4程度になってしまうので、単純に考えると普通のワインの4倍の値が付くはずですが、ソーテルヌの高級ワインが例えばボルドーの高級赤ワインの4倍の値が付いているかというとそんなことはありません。生産者が不憫なようにさえ思われます。品質を考えるととてもお買い得なワインであると断言できます。

糖度が高い貴腐ワインのアルコール発酵はゆっくりと進みますが、シャトー・シュデュイローでは酵母は天然のものを使用します。熟成はバリック(ボルドー地方で伝統的に使われる225l容量の樽)で18~20ヵ月行われます。

肝心のワインは、流石、極上の甘口ワインに求められる要素を満たしています。黄金の美しい色調、ただ甘いだけでない複雑な香り、凝縮された甘味とそれを支える酸味。そして偉大なワインに欠かせない長い余韻も備えています。まさに世界屈指のワインのひとつと言えます。

このような美しいワインは単体でじっくり楽しめますが、料理と王道で合わせるならフォワ・グラ(冷製のテリーヌ、もしくは香ばしく焼き上げたポワレ)、塩味のしっかりとしたブルー・チーズ(特にロックフォール!)。私はソーテルヌは鶏の脂と相性が良いと思いますので鶉やシャポンなどのロースト(ファルシ)にやや塩を効かせた香ばしいソースを添えたものも楽しめると思います。

地元の美食レストランでは、贅沢に洋梨をソーテルヌで煮たデザートなども供されます!

12月は普段に増して忙しいと思いますが、甘美なソーテルでひと時の安らぎを得てみてはいかがでしょうか?心が満たされ、リラックスすることにより疲れも取れることと思います。

Clos Yは2014年第1回目のワイン講座である1月5日の「名店を巡る!極上ワインと料理のマリアージュ2014」のテーマを半年に一度の豪華版とし、世界各国から選りすぐったワインをそれに合わせた特別料理と共にお楽しみ頂きます。デザートにはシャトー・シュデュイロー1975を合わせます!ご興味がございましたらご連絡ください。

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ワイン・コラム 第143回 イタリアの話 ドリゴ編

イタリア北東部に位置するフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州Friuli-Venezia Giulia。ヴェネツィアという単語が入っていますが、州都はトリエステ(ヴェネツィアはお隣のヴェネト州に位置します。)で、オーストリアとスロヴェニアに接しています。

この州は、イタリア屈指の上質白ワインの産地として知られています。

ソーヴィニヨン・ブランSauvignon BlancやシャルドネChardonnayなど、国際的に広く栽培されている品種から、ヴェルドゥッツォVerduzzoやピコリットPicolit、リボッラ・ジャッラRibolla Giallaなど、他の地ではほとんど栽培されていない地場品種まで、ヴァリエーションに富み、質も高いです。

私は2013年の10月に、この州のワイン生産者ドリゴDorigoを訪問させて頂きました。

場所は、比較的大きな町ウディーネUdineの北東で、緩やかな起伏がある土地にぶどう畑が拓かれています。北には山脈が連なっています。
DSC01589ドメーヌ前の畑
2013年はここ数年では収穫が遅く、訪問させて頂いた日も収穫の最中でしたが、当主のアレッシオAlessioさんに案内して頂きました。

一年で最も忙しい時期で、醸造所は多少危険な部分もあることから醸造設備などの見学はさっと済ませ、試飲へと移ります。

スパークリング・ワインから始まり甘口ワインまで、14種類のワインを試飲させて頂きました。そのほとんどが単一品種によるワインです。特に印象に残っているものをご紹介させて頂きますと、

シャルドネ 2011 ドリゴには複数のラインがありますが、これはプレステージ・ラインprestige lineのキュヴェ。厚みがあり、マチエール(ワインを構成する要素)が豊か。モンラシェを目指している、とのことでしたが、ブルゴーニュで言えば暖かい年のシャサーニュ・モンラシェが思い浮かびました。

レフォスコRefosco 2008 こちらもプレステージ・ラインのキュヴェ。地場品種レフォスコの赤ワインです。この晩熟の品種を3年間樽熟成。色が濃く、香りも豊か。凝縮感が強いワイン。

そしてスイート・ラインsweet lineから、ヴェルドゥッツオとピコリット。どちらも素晴らしいものでしたが、特に希少なピコリット2009は1ℓあたり約180gの糖があり、複雑な香り、豊かな味わい。余韻も長く、見事なワインでした。

この州は白で有名、と冒頭でご紹介しましたが、甘口の白も、ピニョーロなど地場品種の赤も素晴らしいものがあります。爽やかなものから重厚なものまで幅広くありますので、この晩秋に、重厚なタイプをゆっくりと楽しんでみてはいかがでしょうか。

Clos Yは、12月1日のレストラン講座のテーマを「地場品種の魅力」とし、フランス、スイス、イタリアの地場品種のワインをそれに合わせた料理と共にお楽しみ頂きます。日本で入手困難なスイスのユマーニュ・ルージュや、ドリゴのピニョーロ2006も登場します!

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ワイン・コラム 第142回 ぶどう品種の話 ガメイ編

11月の第3木曜日はボージョレ・ヌーヴォーBeaujolais Nouveauの解禁日です。

普段ワインに関心が無い人も(メディアも)この時ばかりはワインに注目します。

ボージョレはブルゴーニュ地方のワイン産地の一部ですが、この土地と深いつながりがあるのがガメイGamayという品種です。正式名称はガメイ・ノワール・ア・ジュ・ブランGamay noir à jus blanc(白い果汁を持つ黒いガメイ)と言います。世の中のほとんどの黒ぶどうは、果皮は黒いものの果肉は緑がかった透明で、果汁には黒い色素は含まれておりません。そのため、黒ぶどうから白いシャンパーニュが造られるわけです。

この品種から造られる一般的なワインの特徴としましては、色は明るいルビー色で、紫色を帯びています。香りは華やかで、赤い果実、バナナ、黒砂糖、カンゾウなど甘い香りが立ち昇ります。味わいは果実味を主体とし、酸味は強すぎることなく、タンニンは多くなく、全体として軽やか。フルーティで、若いうちに楽しむべき(数年を経るとピークを越え、衰えて行く)ワインです。

素直においしいワインだと思います。ワイン単体でも楽しめますし、地元風にシャルキュートリー(生ハム類の盛り合わせ)と合わせると最高でしょう。

ガメイはボージョレ地区を中心に、フランス国内では近隣のオーヴェルニュ、サヴォワ、ロワール川流域などで栽培されています。世界に目を向けると、イタリアや東欧、カナダやカリフォルニアなどでも栽培されているようですが、フランスとの国境に近いスイス西部ではガメイとピノ・ノワールのブレンドによるドールDôleという特産品があり、私は個人的にとても気に入っています。

それから珍しいところではオーストラリアのトップ生産者が、隠しワインのように極少量のガメイを醸しています。

珍品ということでは、黒っぽい果汁を持つ黒い果皮のガメイも存在しています。世界には赤黒い果肉そして黒っぽい果汁を持つぶどう品種があります。フランス語でタンテュリエteinturierと呼ばれます。代表的な品種としてアリカンテ・ブーシェAlicante Bouschetが挙げられますが、ガメイにもタンテュリエの種があります。

私の知る限りでは、ロワール地方でアンリ・マリオネHenri Marionnetという生産者が、Les Cépages Oubliés(忘れられたぶどう品種)と名付けたキュヴェを造っています。品種名はガメイ・ド・ブーズGamay de Bouze。果汁自体に色素が含まれていますので、やはりワインの色は濃く、黒っぽい色調を呈しています。香りも黒を連想させる、墨や潰したブルーベリーの皮など、味わいはややボリューム感があり、一般的なガメイとは異なるワインです。本当に世界には様々なワインがあるものです。

ガメイから造られるワインの代表であるボージョレ。ヌーヴォーは、素直においしいと思いますし、最新のヴィンテージがどのようであるのか予想することもできますから、是非とも試したいものです。2013というヴィンテージ、どうなのでしょうか ?!

Clos Yは2013年のボージョレ・ヌーヴォーの解禁日である11月21日に、ガメイをテーマにした単発講座「偉大なワインを飲む!」を行います。オーストラリアのピノ・ノワールのトップ生産者による「隠しワイン」的なガメイ、同じくオーストラリアのガメイのカルト・ワイン、まるで上質なピノ・ノワールの様なボージョレのガメイなど、ガメイの多様性をお楽しみ頂きます。ガメイの深い魅力を楽しみましょう!

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ワイン・コラム 第141回 ブルゴーニュ地方の話 シルヴァン・ロワシェ編

フランス、ブルゴーニュ地方。
 

前回は南部のマコン地区をご紹介いたしました。要注目の産地で、この地区では高いワインでも1本15,000円程度で購入することができます。

 

しかし、ブルゴーニュと言えば世界でもトップ・クラスの高級ワイン産地です。有名なロマネ・コンティRomanée-Contiは軽く100万円を超える金額が付けられます。

 

今回は、ロマネ・コンティを含む高級ワインが生まれるブルゴーニュ地方の中心地、コート・ドールCôte d’Or地区で注目すべき若手生産者、シルヴァン・ロワシェSylvain Loichetをご紹介いたします。

 

この造り手は、約9haの自社畑を所有していて、ドメーヌ(自分が所有するぶどう畑のぶどうからワインを造る造り手)と言えますが、同時に購入したぶどうからもワインを造るので、ネゴシアン(他者から購入したぶどうもしくはぶどう果汁からワインを造る、もしくはワインを購入して自社で熟成させる造り手)としての顔も持っています。

 

本拠地はボーヌBeauneのすぐ北隣りのショレイ・レ・ボーヌChorey-Les-Beaune村にあります。ぶどう栽培は有機(ビオロジック)農法を採用し、アルコール発酵も天然酵母で行うなど、ナチュラル志向のようです。

DSC00935 まだ新しいセラー

DSC00936 

当主のシルヴァン・ロワシェ氏は、2005年に21歳の時にドメーヌを立ち上げたという人物です。まさに若手。

DSC00937

肝心のワインはどうかと言いますと、現時点で特に白ワインに良い評価が与えられているようですが、私は赤も含めて素晴らしいワインを造っていると思います。

 

白に関しては、アペラシオンごとの特徴がなかなか典型的に表現されていて、各ワインに共通して言えるのは「きれいな酸味」です。十分に果実味もあり、バランスが良いのですが、シルヴァン・ロワシェの白ワインに透明感を与えているのはこの酸味(そしてミネラル)にあると思います。

 

赤は充実した果実味があり、タンニンがしなやかです。軽めのヴィンテージでも、ヴィラージュ・クラスのアペラシオンでさえ充実した凝縮感があります。2009年に関しては、暑い年でしたので濃厚なワインが生まれています。コート・ド・ボーヌのワインを飲んでも、コート・ド・ニュイのアペラシオンの様な印象を私は受けました。

 

白も赤も樽が程良く効いています。

 

私がこの造り手を訪問させて頂いたのは2012年の7月のことです。この時点では赤は100%除梗して造っているとのことでした。しかし、満月の日はアルコール発酵が早く進むとおっしゃっていたので、ビオディナミに興味があるのかもしれませんし、醸造も変わっていくかもしれません。何しろまだ若いですから!

 

嬉しいことに、日本でもこの造り手のワインを手に入れることができます。少し前に比べ、入手可能なキュヴェも増えてきました。一度試してみてはいかがでしょうか?

 

Clos Yは、10月30日に単発講座を行います。テーマは「ワインの保管状態とそれによるワインの品質について」です。ひとつの銘柄のワインを、それぞれ異なる保管状態に置いて、その違いがワインの品質にどのような影響を与えるのか検証します。対象となるワインは、シルヴァン・ロワシェのコート・ド・ニュイ・ヴィラージュです。もはや入手困難な2007を試飲頂けますので、それだけでも価値があると思います。ご興味がございましたらご連絡ください。

 

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ワイン・コラム 第140回 ブルゴーニュ地方の話 ドメーヌ・ド・ラ・ボングラン編

今回は、2013年10月に訪問してきたばかりの造り手さんをご紹介いたします。

 

ブルゴーニュ南部、マコンMâcon地区(=マコネMâconnais)で日本でも大人気のワインを造る、ドメーヌ・ド・ラ・ボングランDomaine de la Bongranです。

DSC01673 

まずは大まかにマコン地区をご紹介しますと、北はシャブリから南はボージョレまで南北に細長いブルゴーニュ地方のワイン産地の中で、最南端のボージョレ地区の北隣りに位置する産地です。比較的大きな町であるマコンMâconがその名の由来になっています。

 

お隣のボージョレ地区が主にガメイによる赤ワインを生産するのに対し、マコン地区では主にシャルドネから白ワインを生産しています。

 

ブルゴーニュの白、と言えばシャブリやムルソー、モンラシェ等が有名ですが、マコン地区の白ワインは同じシャルドネでありながら他のどのワインとも異なる個性を備えています。わかり易く言うとシャブリなど他のブルゴーニュの白ワイン生産地区より南にあるのでぶどうが良く熟して果実味が豊かな味わいです。しかしながら、上質なマコンの白はしっかりとしたミネラル感を備え、偉大なワインの仲間入りをしています。

 

ドメーヌ・ド・ラ・ボングランが造るワインは間違いなくとても上質と言えるのですが、一般的なマコンのワインとはやや趣が異なっています。

 

ボングランを有名にしているのは、その貴腐ワインでしょう。珍しいことに、マコン地区では極少量の貴腐ワインが生産されています。シャルドネによる、れっきとしたA.O.P.のワインです。ボングランのゴーチエMr. Gautierさんによると、ボングランが所有する畑の中で、非常に日当たりが良いというわけではない畑では、ある程度の湿度が保たれ、貴腐菌が発達するそうです。

 

ボングランが位置するのはマコン地区の中心部あたりですが、少しだけ離れたマコン地区内の他の場所でも貴腐による甘口ワインが極少量ですが造られています。ブルゴーニュ地方のシャルドネによる貴腐ワインは希少品なのでいずれも高価な値が付けられていますが、甘口だけでなく、それほど高価では無いボングランの辛口ワインも実に見事なものです。

 

この造り手の特徴として、醸造には樽を一切用いないため、ぶどうの本質がピュアにワインに表現されています。さらに、数年の熟成を経てからようやく市場に出荷するため、ワインは若過ぎることなく、ある程度の熟成したニュアンスを備えています。そして、辛口でありながら一般的な辛口白ワインよりほんの少しだけ多く糖分を含んでいます。それがミネラル感と相まって、ボングランのワインを唯一無二の味わいにしているように感じられます。

 

このようなワイン造りの秘訣は、自然を尊重すること、それに尽きるということです。

 

ブルゴーニュの白ワインが好きな方で、マコンのワインを軽んじている、もしくはボングランのワインを未経験の方は是非試してみてください。損はしないはずです。

 

Clos Yは、10月23日のブルゴーニュ基礎講座のテーマを「マコネ」としています。正直マコネは注目に値する重要な地区に成長していると思います。4種類の試飲には、ボングランのワインも含まれています。ご興味がございましたらご連絡ください。

 

 

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ワイン・コラム 第139回 イタリアの話 マストロベラルディーノ編

有形であれ、無形であれ、世界のあらゆる伝統的なもので、失われてしまったもの、失われつつあるもの、しっかりと(もしくは細々と)守り続けられているものがあると思います。

 

ワインの世界では、世界の一部の地域でしか見られない、その地域特有の伝統的なぶどう栽培方法や醸造方法などがありますが、地場品種というものはワイン愛好家から見て、確実に後世に守り伝えてもらいたいもののひとつだと思います。

 

というのもワインの魅力の一つとして、多様性があるからです。世界中のいろいろなワインの中から、その日の気分に合うワインを選ぶ楽しさ、未知のタイプのワインと出会う喜びなどがあります。

 

そして、地場品種など、伝統的なものこそがその土地を表現していると思います。世界中どこに行っても同じものばかりでは、旅をする喜びなど無くなってしまいますよね。

 

世界中の情報が容易に得られるようになった今日では、世界的にワインの質が上がってきています。その反面、栽培に手間がかかって収量(=収益)の少ない伝統的に栽培され続けているある地域特有の地場品種が引き抜かれ、国際的に人気のある(往々にして栽培し易く収量が上げやすい)ぶどう品種に植え替えられるという悲しむべき事態が発生しました。

 

しかしワイン愛好家から見ると、どこででも造られているありふれたぶどう品種のワインよりも、ある地域にしか見られない地場品種のワインにこそ、興味を引かれるのです。

 

イタリア屈指のワイン銘醸地であるカンパニア州Campania。この州は「地場品種の宝庫」と言えますが、一時絶滅しかかった上質な地場品種を救ったのが、今回ご紹介するマストロベラルディーノ社Mastroberardinoなのです。

Mastroberardino 

お陰様で飲んでいて楽しい、興味深い上質なワインを今日でも味わうことができます。個人的にもとても感謝しています。

 

この造り手はその素晴らしい功績もさることながら、この州のワイナリーとしては規模が大きく、世界にカンパニアのワインを発信する、この州を代表する造り手です。

 

代表的なワインとして、アリアニコAglianico種から造られるタウラジTaurasiが挙げられますが、他にはポンペイの遺跡で栽培したぶどうから造るヴィッラ・デイ・ミステリVilla dei Misteriなどがあります。

 

そしてやはり、マストロベラルディーノを語る上で外せないのが、同社が救った地場品種であるフィアーノFianoグレコGrecoでしょう。

 

特に、私が完成度が高いと思うのがフィアーノ・ディ・アヴェッリーノFiano di Avellinoのモレ・マイオルムMore Maiorumというキュヴェです。ボルドー地方で伝統的に使われている(そして今日では世界中で使われている)バリックBarriqueという225l容量の小樽で熟成されたもので、地場品種という伝統とモダンな醸造技術の融合と言えると思います。

Mastro4 樽熟成庫 

カンパニア州はナポリを擁する、美食の土地でもあります。水牛のモッツァレラ・チーズやピッツァと一緒に、マストロベラルディーノのワインを試してみてはいかがでしょうか?

Campania5 

Clos Yは10月20日のレストラン講座のテーマを「イタリア」とし、イタリア全土から選りすぐった極上のワインを食事と共にお楽しみ頂きます。マストロベラルディーノのモレ・マイオルムも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。

 

 

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ワイン・コラム 第138回 アルザス地方の話 マルク・クライデンヴァイス編

日本でも人気の高いアルザスAlsace地方のワイン。

 

その華やかな香りと凝縮した味わい、余韻の長さなどが人気の理由だと思うのですが、それはフランスでもトップ・レヴェルに乾燥した気候多彩な土壌構成がもたらすワインの凝縮感複雑性にあるのでしょう。

 

今回ご紹介する造り手さんは、アルザスでも最高級の評価を得ているマルク・クライデンヴァイスMarc Kreydenweissです。

 

アルザス地方にも、ボルドー地方やブルゴーニュ地方同様にグラン・クリュGrand Cruがあります。アルザス地方では、上質なぶどうが実るとされる51の畑が特級に格付けされています。

 

51も特級畑があると、やはり別格扱いされるクリュがあります。そのうちのひとつが、アルザスで唯一シスト(粘板岩)土壌であるカステルベルクKastelbergです。

Kastelberg 滑り落ちそうな急斜面畑。 

アルザス地方を代表するぶどう品種であるリースリングRieslingの原産国のドイツの2大銘醸地のひとつ、モーゼルMoselと同じ土壌を持つこのグラン・クリュは、やはり偉大なリースリングを生み出しています。

 

中でも最高級の評価を受けているのがこのマルク・クライデンヴァイスのワインなのです。

 

改めて造り手をご紹介しますと、アルザス地方北部、アンドローAndlauの村に居を構えています。家族経営のこのドメーヌは、並みはずれたワインの品質によって世界にその名を知らしめています。

 

看板はカステルベルクのリースリングですが、他にも複数のグラン・クリュを所有しており、目が覚めるようなワインを造り続けています。

 

肝心のカルテルベルク・リースリングは、本当に一生に一度でも体験すべきワインだと思います。自然のままにワインを造る造り手なので、収穫年のぶどうの糖度により甘味のレヴェルがまちまちなのですが、甘い、甘く無いを凌駕した圧倒的な完成度で迫ってきます。世の中には知名度の高い高級ワインが複数ありますが、それらを差し置いてでも経験すべきワインがあるという、良い例です。

 

一度、試してみてはいかがでしょうか?

 

 

Clos Yは、10月16日のレストラン講座のテーマを「アルザス」として、アルザス地方の上質ワインとそれに合わせた料理をお楽しみ頂きます。マルク・クライデンヴァイスのグラン・クリュ、Mœnchebergも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。

 

このコラムを読まれて、ご意見・ご感想等ございましたら下記メール・アドレスまでご連絡ください。

vinclosy@aol.com

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