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Clos Y Archive
ワイン・コラム 第188回 ハンガリーの話 カラカ・ワイナリー編
この国に行くこと自体が初めてでしたので、不安もありましたがかねてより世界三大貴腐ワインのひとつを生み出すトカイTokajに行ってみたい思いを強く持っていました。この度、ついに実現させることとなりました!
ブダペストを首都とするこの国は、四国のような横長の形をしていて、ハンガリー平原が広がり、ドナウ川が国の中心あたりを南北に流れています。気候は大陸性で、国の西部には大きなバラトン湖があり、その周囲にはワイン産地が複数点在しています。公用語はハンガリー語。E.U.に加盟していますが通貨はユーロではなくフォリントforint。日本の感覚からすると物価は安い状態です。
私は成田からブダペストのリスト・フェレンツ空港に入りました。直行便がありませんので、途中乗り換えをしたのですがその時にオーヴァー・ブッキングと言われ、予定と違う便になったのですが結果早く着くことができて良かったです。
空港からホテルまで車での移動でしたが、暗い郊外からブダペストの中心地に入ると町並みは他のヨーロッパの都市とあまり違いの無い、現代的な様子です。
夕食はホテルの近くで見つけたビストロで、ハンガリーの生ハム類とワインを頂きました。
翌日、いよいよトカイに向けて移動です。ハンガリーでワインを造る日本人、片木さんに紹介して頂いた、ハンガリーでワイナリーを営むハンガリー人のダニエルさんの車でトカイまで約3時間。ブダペストの西部のバラトン湖周辺のワイン産地とは反対の、この国で一番北東に位置しています。
トカイは、小さな山の東側にあるとても小さな町です(ホテルやレストランなどが並ぶメイン・ストリートは500mほど。)。この町の東側にティサTiszaとボドログBodrogという2つの川が流れていて、ちょうど合流します。トカイの町の周辺には、この地域のぶどう畑の5%ほどしか畑が無いのですが、この町に川を利用してワインが集まったため、その名は世界的に有名になりました。
トカイのワイナリーは4軒訪問させて頂きました。今回はそのうちのひとつ、カラカKalákaをご紹介いたします。
カラカは小さな村に位置する小さなワイナリーです。当主はブダペストでワイン屋さんを営んでいた知的な方で、トカイの格付け地図(ブルゴーニュのように畑を1級や特級などに格付けしたもの。)まで作ってしまいました。
スパークリング・ワインを始め、複数のワインをテイスティングさせて頂きました。トカイでは白ワインの生産のみが認められていますので、試飲ワインは全て白。
トカイと言えば貴腐ワイン、というイメージが強いと思うのですが、この造り手は「テロワールの神髄は辛口ワインに現れる」という哲学に則り、上級キュヴェは辛口白ワインに仕上げてあります。酸のしっかりとした非常にシリアスな味わい。このワインひとつ取っても世界のワインの多様性に改めて気づかされます。
ハンガリーのワインは全般的に、品質の割に安い値付けがされているように思われます。辛口白ワイン、甘口白ワイン、そして赤ワイン。この国独自の品種にも、見るべきものがあります。試してみてはいかがでしょうか?
Clos Yは、3月12日のレストラン講座を恵比寿のフレンチ・レストラン Emuで行います。笹嶋シェフの、春の旬の素材を用いた素晴らしい料理にワインを合わせます。前菜のフォワ・グラのプレッセには、カラカのトカイを合わせます。ご興味がございましたらご連絡ください。
講座へのお申し込み、ご質問等はこちらのアドレスにご連絡ください。
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ワイン・コラム 第187回 ブルゴーニュ地方の話 ジャック・プリウール編
この村に居を構えるドメーヌ・ジャック・プリウールDomaine Jacques Prieurは、ブルゴーニュ地方全体で見ても最も重要なドメーヌのひとつに挙げることができると思います。
モンラシェMontrachet
シュヴァリエ・モンラシェChevalier-Montrachet
コルトン・シャルルマーニュCorton-Charlemagne
シャンベルタンChambertin
シャンベルタン・クロ・ド・ベズChambertin Clos de Bèze
ミュジニーMusigny
クロ・ド・ヴージョClos de Vougeot
エシェゾーEchézeaux
コルトン・ブレッサンドCorton Bressandes
といったグラン・クリュの中でも別格の畑を含む約21ha(ピノ・ノワール11ha、シャルドネ10ha)の畑を所有し、上質なワインを世に送り出しています。
1990年から醸造に携わるナディーヌ・ガブリン氏は、ベスト・ワイン・メーカー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたこともある、世界的に見ても重要な女性醸造家のひとりです。
私がこのドメーヌに惹かれるのは、錚々たるグラン・クリュの数々や全体のワインの品質はもちろんですが、他にボーヌ村の1級畑の面白さにあります。
クロ・ド・ラ・フェギーヌClos de la Féguineという畑を単独所有しており、白と赤を造っています。また、ボーヌのプルミエ・クリュの中で筆頭格のひとつ、グレーヴGrèves(ブシャール・ペール・エ・フィスのヴィーニュ・ド・ランファン・ジェジュが有名)から赤ワインと、そして白ワインも!造っています。興味深いことです。
アルコール発酵は天然酵母で行い、樽での熟成は白ワインでも12から18ヵ月と長い期間行います。いずれのキュヴェも心を打つ品質です。
チリの高品質ワイン生産者、コノ・スルCono Surはピノ・ノワールに力を入れておりますが、そのトップ・キュヴェであるオシオOsioはやはり素晴らしい品質です。このワインの生産に、ジャック・プリウールのマルタン・プリウール氏が関わっています。オシオの品質の向上にジャック・プリウールの伝統や経験が一役買っているわけです。
ジャック・プリウール。未経験の方は、是非試して頂きたいドメーヌです。
Clos Yは8月17日のレストラン講座で、ドメーヌ・ジャック・プリウールの白ワインを含む上質なワインを料理と合わせて提供いたします。ご興味がございましたらご連絡ください。
講座へのお申し込み、ご質問等はこちらのアドレスにご連絡ください。
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ワイン・コラム 第186回 ロワール地方の話 ギベルトー編
フランス最長の川、ロワール川沿いに広がるワイン産地です。
長い川ですので、ひとつのワイン産地が4つの地区に分かれています。以下、上流から下流に向かって
1、サントル・ニヴェルネCentre Nivernais
2、トゥーレーヌ Touraine この地区にはロワールLoire川の支流のロワールLoir川が流れています。
3、アンジュ・ソーミュール Anjou Saumur
4、ペイ・ナンテ Pay Nantais
地区によって主に栽培されているぶどう品種が異なります。そのためワインのスタイルも地区によって異なりますが、共通するのは冷涼な気候によってもたらされる軽やかさと上品さです。重厚なワインは稀で、食事と合わせて楽しめるフード・フレンドリーなワインが多く、パリのビストロなどで重宝されています。
今回ご紹介するドメーヌ・ギベルトーDomaine Guiberteauは3、アンジュ・ソーミュール地区に属する、ソーミュールのアペラシオンのワインを産する素晴らしい生産者です。
ソーミュールではカベルネ・フランを主体にした赤ワインとシュナン・ブランによる白ワインの生産が行われています。
ギベルトーでは現在、赤ワイン3種類(4ha)と白ワイン5種類(5.5ha)を造っています。
赤ワインの醸造はコンクリート・タンクで行い、白ワインの醸造はステンレス・タンクで行います。
訪問時(2012年)に試飲させて頂いたのは
赤ワイン 2011
レ・モテルLes Motelles 2009
レ・ザルボワーズLes Arboises 2009
白ワイン 2011
クロ・ド・ギショーClos de Guichaux 2010
ブレゼBrézé 2009
赤ワインは緯度の高い土地であるにもかかわらず果実感がしっかりしていて、キュヴェが上がるごとにタンニンの充実度が増し、複雑さと余韻の長さが伸びて行きます。
白ワインは、このドメーヌではマロ・ラクティック発酵を行いません。そのため全てのキュヴェで心地良い、締まりのある酸味が感じられます。
印象に残っているのはクロ・ド・ギショーの充実した果実味、そしてブレゼのエレガントな的まとまりのボリューム、そして新樽香も含む余韻の長さです。
ピュリニー・モンラシェのようなワインがお好みの方には是非試して頂きたい、シュナン・ブランの傑作のひとつです。
これからの湿度が高く暑い季節、さらに魅力的に感じられることでしょう。
Clos Yは7月3日の極上ワインと料理のマリアージュ講座で、ドメーヌ・ギベルトーの白ワイン、クロ・ド・ギショー2013を含む上質なワインを料理と合わせて提供いたします。ご興味がございましたらご連絡ください。
講座へのお申し込み、ご質問等はこちらのアドレスにご連絡ください。
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ワイン・コラム 第185回 ブルゴーニュ地方の話 ヴァンサン・ドーヴィサ編
世界で最も名の知れたワインのひとつと言えるでしょう。
名前は知っていてもそれがフランス、ブルゴーニュ地方北部シャブリの町の周辺で栽培されているシャルドネからできる白ワインであることを知っている消費者は多くないでしょうし、ソムリエでもプルミエ・クリュやグラン・クリュを含むシャブリのワインの幅広く奥深い魅力をお客様に熱く語る人は多くないのが現状だと思います。
今回のコラムではシャブリの中でもトップ・クラスの生産者のひとり、ヴァンサン・ドーヴィサVincent Dauvissatをご紹介いたします。
まずはシャブリの場所を確認しましょう。ブルゴーニュ地方北部、イヨンヌYonne県にあるシャブリの町は、ブルゴーニュ地方のワインの中心地であるボーヌBeauneの北西約120kmのところにあります。シャブリから、シャンパーニュ地方南部の都市トロワTroyesまで60km弱。ロワール地方のサンセールSancerreが南西に約90kmという位置です。やはり北のワイン産地ということが確認できます。
街中を流れるスラン川
白ワインのみ生産するシャブリのワインは、北の風土を反映してきりっとした酸が主体の爽やかな辛口タイプになります。プルミエ・クリュ、グラン・クリュと格が上がるとワインはより密度を増し、骨太になり厚みが増します。生産者によっては上級キュヴェには部分的に新樽での熟成を施し、樽から来る香ばしい香りが感じられます。
ドーヴィサは、プティ・シャブリ、シャブリ、シャブリ・プルミエ・クリュ、シャブリ・グラン・クリュとシャブリの中でも4つのアペラシオンを造っています。
シャブリのプルミエ・クリュは、複数のリウ・ディが近隣の有名なリウ・ディの名を名乗るのが一般的です(例えば、フォレForêts、ビュトーButteauxはモンマンMontmainsを名乗ることができる)。
ドーヴィサはこのようなことはせず、例えモンマンのほうが有名でもフォレ(ドーヴィサではLa Forestと綴りますが)はフォレの名でワインを世に送り出します。ドーヴィサのテロワールへのこだわりが感じられる部分ですね。
ワイン造りは、ステンレス・スティールのタンクも用いますが伝統的な132ℓ容量の樽フィエットFilletteも用いて行います。マロ・ラクティック発酵は100%行い、熟成は9~12ヵ月、清澄は行わず軽くろ過して瓶詰め。
ワインは思わず背筋が伸びるような厳格さを持ちつつ小さな樽で熟成したことによる微妙な酸化熟成による複雑さ、奥行きのある所謂グラン・ヴァンです!
これから夏に向け、シャブリのようなスタイルのワインが飲みたくなる場面も増えてくると思います。時にはゆっくりと時間を取って、ドーヴィサのような素晴らしいワインと向き合ってみてはいかがでしょうか。
Clos Yは6月5日のレストラン講座のテーマをブルゴーニュとし、会場であるレストラン・エミュさんの料理とブルゴーニュ・ワインを合わせてお楽しみ頂きます。ヴァンサン・ドーヴィサ2009プルミエ・クリュの水平も含まれております!ご興味がございましたらご連絡ください。
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ワイン・コラム 第184回 肉の話 その2
タルタル・ステーキ
生の牛肉を細かく切ったものに、レモン果汁やケッパーなどの酸味、タバスコの辛み、卵黄とオリーヴ・オイルの油分、塩、胡椒などを加え混ぜ合わせた料理です。私はとても好きでいろいろな場所で食べるのですが、日本で食べるのは困難になってしまいました...フランス各地で食べられますので、例えばボルドーで食べる場合はボルドーの赤ワインを、ブルゴーニュで食べる場合はブルゴーニュの赤ワインを私は合わせます。それぞれの土地で、地元の牛肉(例えばブルゴーニュ地方ではシャロレ牛)を使うことが多いので、地元のワインとしっくりくるのですね。
こんな焼きタルタルもあります!
美味しくなかった...。タルタルの表面だけ焼き、中は生という料理。
こちらはスイス南部、イタリア語圏のティチーノTicinoで。付け合わせの野菜の安っぽさからは想像できない高品質肉!びっくりしました。とてもおいしかったです。ワインはティチーノのメルロMerlot!この辺りでは高級サンテミリオンやポムロールなどに比肩し得る上質なメルロのワインがあります。やはり上質なものはそれなりに高いのですが。他にはメルロのロゼ、そしてメルロの白もあります!中には樽発酵・樽熟成を施した高価なメルロの白ワインもあり、ティチーノはとても興味深いワイン産地です。
イタリアでは、これ!
ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナBistecca alla Fiorentina。トスカーナ州、キアナ牛のTボーン・ステーキ。厚みが薄いのはこの料理にあらず、最低800gとも言われる骨付きの肉塊を炭火で焼き上げます。フィレとサーロイン、2種類の肉を楽しめる、ほぼ素焼き、最後に上等なオリーヴ・オイルを振りかけるだけの豪快な料理です。
このような料理なので、料金はグラム単位で設定されています。私が食べたのは1,100g(骨付き)ほど。とろけるようなフィレ肉の美味しさがはっきりと記憶に残っています。
前菜は軽くスープにしましが、その後のデザートまで頂けるほどおいしく頂きました。やはりキアナ牛の肉質がポイントなのでしょうか。シンプルにグリルして、オリーヴ・オイルと塩、という味付けも良いのでしょう。素材の良さを楽しめます。ワインはもちろんキアンティ・クラッシコChianti Classico。
最後に、私が働いていたボルドーのビストロ・デュ・ソムリエBistro du Sommelierの1品。
コート・ド・ブフCôte de Bœuf。こちらも大きな塊で、時間をかけてじっくりと焼きます。大きな塊で焼いてこそ旨いので2名様から。ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナほどの量があります。焼き加減は指定できますが、セニャンsaignant(レア)、もしくはブルーbleu(日本には無い焼き加減でしょうか、レアよりももっと生に近い焼き加減です。)を指定されることが多かったです。
そして付け合わせのポム・フリットが絶品。外側はかりかりで中はフォンダン(とろけるような)。粗塩をまとった揚げたては3つ星?!日本の芋との素材の違いもあるのでしょう。
この料理とはやはりボルドーの赤ワインと合わせることになります。私が働いていた2005年には、シャトー・ボー・ソレイユ(ポムロール)のセカンドのプティ・ソレイユやシャトー・レ・ゾルム・ソルベ(メドック)などが良く出ていました。シャトー・ラトゥールのサードのポイヤック・ド・ラトゥールも安かった...レストラン(ビストロですが)で1996が38ユーロ...
めくるめく牛肉料理の世界。ひとつの料理に合わせるワインはもちろんひとつではありません。近頃暑い日もありますので、冷やした白ワインと牛肉料理も良いでしょう。
連休の締めくくりは肉とワインで決まり?ですね!
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ワイン・コラム 第183回 肉の話 その1
2016年4月19日にアルゼンチンで行われました。
第15代目チャンピオンはスウェーデンのJon Arvid Rosengren氏、31歳!
刺激になります。
日本代表の石田さん、森さんもお疲れ様でした。
どれだけの努力を積んでこのコンクールに臨まれたか、少しだけですが存じておりますので私も残念に思います。
来年は全日本最優秀ソムリエ・コンクールが行われる年です。第16回チャンピオンを目指してまた挑戦されることでしょう。ひとまずはアルゼンチンの美味しい料理とワインと共に疲れを癒されたことと思います。
アルゼンチン料理と言えば、肉です!アルゼンチンのひとりあたりの年間肉消費量は約110kgで、うち牛肉は60kgとか。ステーキや炭火焼で食べるようです。
そこで今までで印象に残っている牛肉料理を思い出してみました。
まず美味しかったな、と思い出すのはアメリカ合衆国、カリフォルニア州の
確かリブロース。火入れが素晴らしく、特に芯の部分なのか柔らかく、旨味が強く、本当に強く。しっかりと記憶に残っております。
ワインはナパ・ヴァレーNapa Valley、グロースGrothのカベルネ・ソーヴィニヨンCabernet Sauvignon。しっかりと、凝縮度の高い上質な赤ワインでした。
こちらはロックフォール・チーズの生産者を訪問した時に、フォックフォール・シュール・スールゾンRoquefort-sur-Soulzon村のすぐ近くのホテル・レストランで頂いた一皿です。濃厚なチーズのソースがたっぷり。肉が硬くておいしくなかったのを覚えています(笑)。
こちらはミラノで、オッソ・ブーコ。仔牛のすね肉の輪切りで、骨の中の髄も頂きます。サフランを使ったミラノ風リゾットが添えてあります。ワインはオルトレポ・パヴェーゼOltrepò Paveseを頂きました。
ウィーンではヴィーナ―・シュニッツェル
やはり仔牛は成牛よりもあっさりとした肉質ですね。薄く叩いて伸ばし、油で揚げ焼くことによってこくのある料理に仕上がります。私は赤ワインと頂きましたが、ウィーンのゲミシュター・サッツGemischter Satsとも相性が良いと思います。
次回は肉の話その2、イタリアのビステッカ・フィオレンティーナやスイスの肉料理、ワインなどをご紹介いたします!
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ワイン・コラム 第182回 アルザス地方の話 トリンバック編
フランスの中でも独特の文化を持ち、特筆に値する美しい村々があり、滋味豊かな郷土料理、そして香り高いワインが生まれる土地です。
優れたワインを造る造り手は枚挙に暇が無いのですが、今回ご紹介するトリンバックTrimbachはこの地方を代表する生産者のひとりです。
居を構えるのはアルザス地方南部の重要な町、コルマールの近く、リボーヴィレRibeauvillé。土産物屋や気軽に入れて美味しい料理を出すお店、そしてワイナリーで賑わうこの辺りでは比較的大きな村です。
アルザス地方にもグラン・クリュがあり、アルザス・グラン・クリュのワインは一般的なアルザスのワインより充実した内容のものが多いと思いますが、トリンバックはアルザス・グラン・クリュを否定しています。確かに50以上あるグラン・クリュの中で、指定面積が広過ぎ、グラン・クリュに値しない土地までグラン・クリュになっているところもあります...これはアルザス・ワインだけの話では無く、世の中の様々な分野でもこのようなことはあるのでしょう。しかしせっかくグラン・クリュ指定の畑を所有していながらそれを名乗らない、というのは職人気質と言いますか、他所者の私などには分からない根深い事柄があるのかもしれません。
グラン・クリュの話は置いておくとして、いずれにせよこの造り手のワインは高く評価されています。実質グラン・クリュである、ロザケール畑のクロ・サン・チューヌClos Sainte-Hune、そしてキュヴェ・フレデリック・エミルCuvée Frédéric Emile両リースリングは実に素晴らしいですし、肉厚なピノ・グリ レゼルヴ・ペルソネルRéserve Personnelle、凝縮感の強いゲヴュルツトラミネール キュヴェ・デ・セニュー・ドゥ・リボーピエールCuvée des Seigneurs de Ribeaupierreも見事です。そして遅摘み、貴腐による甘口も見逃すわけにはいきません。
醸造と熟成に用いられる伝統的な大樽
最近は日本でもシュークルートChoucrouteやベッコフBaeckeoffeといったアルザスの郷土料理も以前に比べ浸透してきたように思います。まだ寒い日が続きますが、暖かなアルザスの郷土料理とトリンバックのワイン、試してみてはいかがでしょうか?
Clos Yは3月6日のレストラン講座のテーマをアルザスとし、グラン・クリュを中心に厳選したワインをそれに合わせて特別に作って頂く料理と共にお楽しみ頂きます。クロ・サン・チューヌ2009も登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。
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ワイン・コラム 第181回 ローヌ地方の話 オーギュスト・クラープ編
ローヌRhône地方北部にはコート・ローティやエルミタージュ、コンドリウといった偉大なワインがいくつかありますが、私は特にこのコルナスに強く心を惹かれます。
アルデーシュ県にある、人口2,200人ほどのコルナスという名の小さな村の周辺に、約130haの畑が標高125~400mの間に広がっています。
ローヌ地方北部の赤ワインと言えばシラーSyrahですが、複数あるアペラシオンの中でもシラー100%で赤ワインを造ることが義務付けられているのはこのコルナスだけです。
コート・ローティやエルミタージュといった花形アペラシオンに比べるとどことなく地味なイメージの、質実剛健なところが、コルナスの魅力かもしれません。
私はコルナスのトップ生産者のひとり、オーギュスト・クラープAugust Clapeを訪問させて頂きました。
ドメーヌは村の大通りに面していますが、いわゆるワイン生産者的な看板などは無く、外から見た感じでは普通の民家、といった感じです。そう言えば北ローヌのトップ生産者のひとりジャン・ルイ・シャーヴのドメーヌもこの道を少し北に行ったところにありますが、外観は全くワイン生産者的ではありませんでした。この辺りはそんな気風があるのでしょうか。
クラープは7haほどの畑を所有し、小さなセラーで伝統的なワイン造りを続けています。
コンクリート・タンクで天然酵母によるアルコール発酵。赤ワインは700~1,200リットルの大樽での熟成。卵白で清澄し、フィルターはかけずに瓶詰め。
造るワインはコート・デュ・ローヌやお隣サン・ペレイの白ワイン、そしてコルナス2種類。他にパリでル・ヴァン・デ・ザミLe Vin des Amisというヴァン・ド・ターブルを見つけたことがあります(素晴らしかったです!)。
試飲は興味深いものでした。まだ樽熟成中のワインを区画ごとに。それぞれ樹齢も異なり、樹齢が上がるにつれ凝縮感が増すようでした。
シラーのひとつの指針。未経験の方は試す価値のあるワインだと思います。
Clos Yは、2月7日のレストラン講座のテーマを「ジビエ」とし、ジビエ料理をローヌ地方のワインと合わせてお楽しみ頂きます。クラープのコルナスも登場いたします。ご興味のある方はご連絡ください。
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ワイン・コラム 第180回 ボルドー地方の話 シャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン編
5大シャトーのひとつ、シャトー・オー・ブリオンとオーナーが同じであり、そのワインの品質は高く評価され、シャトー・オー・ブリオンを上回ることもあります。
位置するのはボルドー市街からすぐそば、タランスTalence。アペラシオンはペサック・レオニャン。グラーヴGraves地区に属しますが、その名の通り(グラーヴは砂礫の意。)25haの粘度石灰質の畑には小石が多く見られます。
永らく赤ワインのみの生産を行っていましたが、2009年から白ワインも造り始めました。
私が2013年10月に訪問させて頂いた時の情報では、赤ワインは、
カベルネ・ソーヴィニヨン45%
メルロ45%
カベルネ・フラン10%
という構成。手摘みで収穫されたぶどうはステンレス・タンクでアルコール発酵が行われ、フレンチ・オークのバリック(新樽80%)で18ヵ月の熟成が施されます。卵白で清澄後瓶詰め。
白ワインは、
セミヨン80%
ソーヴィニヨン・ブラン20%
やはり手摘み収穫。まずステンレス・タンクでアルコール発酵を始め、始まったらバリック(新樽40~50%)に移しアルコール発酵の続きを行います。9ヵ月の熟成後、瓶詰め。
この時、実は白ワインに強い興味があったのですが試飲に白は供されませんでした。約2.5haしか畑がありませんので、生産量も少ない(年産500~700ケース。)から仕方ありませんね。
しかし興味深い試飲ができました。シャトー・オー・ブリオン赤2007とシャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン赤2007の比較試飲です。
この時は、シャトー・オー・ブリオンの方は赤い果実や土っぽい香り、酸がややしっかりしていてタンニンは溶け込んでいて、柔らかい印象。シャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオンの方は黒系果実にロースト香。しっかりとした果実味、タンニンが多く細かく、力強い印象でした。
ボルドー地方最高峰のシャトーのひとつ、ラ・ミッション・オー・ブリオン。赤の品質は折り紙つきですが、未だ知られざる白も興味深いですね。Clos Yは、2016年1月11日にワイン持ち寄りの新年会を企画しております。ラ・ミッション・オー・ブリオン白2009を参加されるみなさまと共有すべくご用意いたしますので、ご興味のある方はご連絡ください。
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ワイン・コラム 第179回 ボルドー地方の話 シャトー・オー・ブリオン編
世界で最も名の知れたワインの一群であり、高価。内容も見事です。
1855年の格付けで最高位の1級に格付けされたシャトー(うちシャトー・ムートン・ロートシルトのみ1973年に例外的に昇格。)ですが、そのうちの4つはメドックMédoc地区にあります。というよりメドック(とソーテルヌ)の格付けだったのですが、高い名声のため例外的に地区外から格付けに入れられたのが今回ご紹介するシャトー・オー・ブリオンChâteau Haut-Brionです。
シャトーはボルドー市街のすぐ近く、ペサックPessacにあります。
その歴史を1533年まで遡ることができると言うこのシャトーを、1935年にオーナーとなったクラレンス・ディロン氏(アメリカの銀行家)一族が経営しています。今日ではルクセンブルク大公国のロベール皇太子殿下が最高経営責任者に就任しています(クラランス・ディロン氏の孫娘がルクセンブルク大公国大公子シャルル・ド・リュクサンブール妃。後のムシー公爵夫人ジョアン・ディロン。)。
5大シャトーの中で真っ先にステンレス・タンクを導入し、シャトー内に樽職人を抱えるなど品質のための改革・努力を怠りません。
近年では系列シャトーの統合を行い、シャトー・ラ・トゥール・オー・ブリオンChâteau La Tour Haut-Brionとシャトー・ラヴィユ・オー・ブリオンChâteau Laville Haut-Brionはいずれも格付けシャトーながらシャトー・オー・ブリオン、そしてシャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオンChâteau La Mission Haut-Brionに組み込み消滅させてしまいました。
同時にセカンド・ワインの改新やシャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン白の導入も行いました。
今日では、シャトー・オー・ブリオンは
シャトー・オー・ブリオン 赤
シャトー・オー・ブリオン 白
ル・クラランス・ド・オー・ブリオンLe Clarence de Haut-Brion
ラ・クラルテ・ド・オー・ブリオン La Clarté de Haut-Brion
を生産しています。
尚ラ・クラルテ・ド・オー・ブリオンはシャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオンと共有しているセカンド・ワインです。
セカンド・ワインでさえ気軽に購入できない価格が付けられておりますが、ワイン愛好家としては一度は試してみたい銘柄ですね。実際試す価値のある品質であることは間違いありません。
Clos Yは1月3日の極上ワインと料理のマリアージュ講座でラ・クラルテ・ド・オー・ブリオン2009をラインナップの中に組み込んでいます。ご興味がございましたらご受講ください。
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