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ワインコラム Archive
ワイン・コラム 第156回 イタリアの話 リブランディ編
この州でも上質なワインが造られておりますが、代表的な銘柄は何と言ってもチロCiróでしょう。
チロは白、ロゼ、赤の生産が認められています。白はグレコGreco、ロゼと赤はガリオッポGaglioppoから造られる、いずれも果実感のいきいきとしたフルーティなワインです。この土地では唐辛子を使った料理が食べられていますが、辛みの効いた料理と合うということで、韓国料理との相性の良さも指摘されています。
そのチロの代表的生産者であるリブランディLibrandiをご紹介いたします。
私がこのワイナリーを訪問したのは2008年の秋。北からイオニア海の海岸沿いを南下したのですが、とても美しい風景が広がっていました。
リブランディはチロ・マリーナという海に面した町の高台に位置しています。
この町の海岸のすぐそばに南北に道が通っていて、家々が立ち並んでいます。ホテルもあり、夏は観光客で賑わうのでしょうが訪問は10月上旬。ちょうど収穫の時期でした。
周辺にあるぶどう畑には収穫直前のぶどうがあり、ワイナリーには収穫されたぶどうが次々に運び込まれて来ていました。
ステンレス製の発酵容器の他に、小さな木製の発酵容器もあり、高品質ワインへのこだわりが感じられます。
特筆すべき点は、上質なグレコ、ガリオッポはもちろん、他にあまり他所では見かけない古代品種を保護し、そのぶどうから素晴らしいワインを生みだしていることです。例えばマリオッコMagliocco(黒ぶどう品種。)、マントニコMantonico(白ぶどう品種)など。
フレンチ・オークの樽発酵、樽熟成を施したマントニコの出来は特筆ものです!
今年の夏は、美しいイオニア海を思い浮かべながら、チロを飲んでみてはいかがでしょうか。唐辛子料理との相性を検証してみるのも面白いかもしれませんね!
Clos Yは、7月13日の極上ワインと料理のマリアージュ講座にリブランディの古代品種キュヴェEfesoを取り入れています。ワイン単体でも素晴らしいですが、料理と合わせてお楽しみ頂きます。ご興味がございましたらご連絡ください。
講座へのお申し込み、ご質問等はこちらのアドレスにご連絡ください。
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ワイン・コラム 第155回 ブルゴーニュ地方の話 クリオ・バタール・モンラシェ編
この土地では畑ひとつひとつに名前が付けられ、さらに特級Grand Cru、1級Premier Cruなど格付けもされています。
最上級の格である特級の畑グラン・クリュからは素晴らしいワインが生まれ、愛好家の垂涎の的となっています。
今回は、それらブルゴーニュ地方のグラン・クリュの中でも面積が小さく、希少なクリオ・バタール・モンラシェCriots-Bâtard-Montrachetをご紹介いたします。
ブルゴーニュ地方で、白ワインを産するグラン・クリュはミュジニーMusignyとコルトンCorton系、そしてモンラシェMontrachet系と3ヵ所しかありません。
中でも何も付かないモンラシェ(いわゆるル・モンラシェLe Montrachet)は世界中の辛口白ワインの頂点に立つワインと言って差し支えないでしょう。
モンラシェ系と前述しましたが、その偉大なモンラシェの周りに、「モンラシェ」という名前が付くグラン・クリュが4つあります。シュヴァリエ・モンラシェChevalier-Montrachet、バタール・モンラシェBâtard-Montranet、ビアンヴニュ・バタール・モンラシェBienvenues-Bâtard-Montranet、そしてクリオ・バタール・モンラシェです。
ピュリニー・モンラシェPuligny-Montrachetとシャサーニュ・モンラシェChassagne-Montrachetという単語がありますが、これらは村の名前であり、そしてその村で産されるワインの名前でもあります。これらは、ワインとしましてはグラン・クリュではありません。世界の頂点に立つような偉大なワインを産するモンラシェという畑が、ピュリニー村とシャサーニュ村にまたがって存在しているのですが、それぞれの村が偉大な畑の名を自らの村の名前に付け加えた結果、現在の名になっています。
モンラシェ系のグラン・クリュは、それぞれ微妙に質が異なりますが、やはり偉大な白ワインです。クリオ・バタール・モンラシェは、中でも最小の1.57haしかない極小畑です。偉大なモンラシェの斜め向かいに位置していて、南を向いていて、少し赤っぽい土壌です。
この小さな畑を複数の生産者が分割所有しているため、1樽(750mlのボトル約300本)以上のワインを生産できる面積を所有するのは僅か4人という状況です。そのため、ほとんど見かけることがないワインです。希少性に関してはモンラシェの上を行くグラン・クリュです。
この畑はシャサーニュ・モンラシェ村に属していますが、この村の平均的なワインに比べると、香りの複雑さ、強さ、果実味の豊かさ、ボリューム、余韻の長さにおいて勝り、全体的に密度が高いワインです。流石グラン・クリュです。
クリオ・バタール・モンラシェ。ブルゴーニュのグラン・クリュの中でも、興味深い畑のひとつです。
Clos Yは、6月2日のレストラン講座のテーマを「ブルゴーニュ」とし、素晴らしいブルゴーニュのワインを神楽坂の名店さ々木の特別料理と合わせてお楽しみ頂きます。希少なクリオ・バタール・モンラシェも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。
講座へのお申し込み、ご質問等はこちらのアドレスにご連絡ください。
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ワイン・コラム 第154回 アルザス地方の話 マルセル・ダイス編
小さな村々には色とりどりの美しい家が並び、観光客が多く集まります。
この土地は美食の地としても知られています。フォワ・グラやマンステールMunsterチーズ、ボリュームのある豚肉料理...
ワインの品質も素晴らしく、ワイン愛好家の中でも特に人気の高いワイン産地のひとつです。
この地方のワインは、単一品種により造られるのが一般的です。リースリングRieslingやピノ・グリPinot Gris、ゲヴュルツトラミネールGewurztraminerなど、品種の個性が生きた華やかなタイプのワインが多いです。
今回ご紹介する生産者マルセル・ダイスMarcel Deissはアルザス地方を代表する生産者でありながら、そのワインはアルザス地方の「例外」的なものが多い、特異な造り手です。
アルザス地方には特級Grand Cruに格付けされている畑が51あります。一般的にはアルザス地方でグラン・クリュを名乗るためには、指定されている畑のぶどうからワインを造らなければならないのはもちろん、高貴4品種と言われる限定されたぶどうだけしか使用が認められず、それもほとんどの場合単一品種でワインが造られます。
しかしマルセル・ダイスは、例えばグラン・クリュであるマンブールMambourgの場合、この地はピノに適しているという考えの下、Pinot Blanc, Pinot Gris, Pinot Noir, Pinot Beurot, Pinot Meunierを栽培し、ワインを造っています。Pinot Meunierなどアルザス地方でA.O.P.ワインを造るためには認められていない品種です!それを使ってでもなおグラン・クリュとしてワインを流通させることができるのはこの生産者のみでしょう。
Mambourgの畑
マルセル・ダイスはワイン法をも変える、まさに別格の生産者なのです。
他にもこの造り手の特筆すべき点として、ぶどう品種の混植、混醸、密植(1haあたり12,700株など)、低収量(1haあたり15~20hlなど)など、枚挙に暇がありません。
ワイン造りに何でもありのような感もありますが、この造り手が目指すものはただ一つ、「テロワールの表現」です。そのために土地と真摯に向き合い、ワインに表現しています。
マルセル・ダイスのワイン、特にグラン・クリュなどは高価です。アルザス・ワインが好きな方の中でも、15,000円を払ってマンブールを飲もうと思う方は少ないようです。そのため、知名度が高い割にそのワインは謎に包まれている部分が多いように思われます。
ある土地の声を聞いてみたいと思った時、マルセル・ダイスのワインを飲んでみてはいかがでしょうか。その土地でしか表現できない何が示されているはずです。
Clos Yは、マルセル・ダイスが手掛ける全てのグラン・クリュの試飲を含むワイン講座を企画しています。ご興味がございましたらご連絡ください。
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ワイン・コラム 第153回 コニャックの話 マーテル編
ブランデーを代表する銘柄のひとつですが、コニャックというお酒が、フランスにあるコニャックという町の周辺の限られたぶどう畑のぶどうのみを原料とする、原産地保護されている農産物であることはあまり知られていないようです。
コニャックの町は、フランス西部にありまして、ボルドーBordeauxの町の北、約100kmの所に位置しています。
同じく、ブランデーを代表する銘柄のひとつ、アルマニャックArmagnacはボルドーの町の南東、約120kmの所で、やはり限定されたぶどう畑のぶどうから造られています。フランスの代表的なブランデーの2銘柄は、ボルドーの町を挟んでそれぞれ100kmほどのところで対峙しているわけです。
コニャックとアルマニャックでは、使用するぶどう品種やぶどうが植えられている地質、蒸留の方法などが異なります。また生産者のスタイルの違いなどもあり、一言で両者の酒質の違いを述べることは難しいのですが、敢えて表現するならばコニャックは華やかでエレガント、アルマニャックは質実剛健で重厚と言えるかもしれません。
今回は、数あるメゾンの中からマーテルMartellをご紹介いたします。
コルドン・ブルーCordon Bleuという銘柄で有名なこのメゾンは、コニャックを造ることができる限定された地域の中でも、ボルドリBorderiesという小地区のぶどうをブレンドに多く用いることが特徴です。
コニャックは蒸留酒ですが、ワイン同様原料となるぶどうの品質が重要です。品種としましてはユニ・ブランUgni Blancが主体で、同じ品種でも育つ地区により性質が異なります。
コニャックの代表的な生産地区としまして、グランド・シャンパーニュGrande Champagneやプティット・シャンパーニュPetite Champagne等が挙げられます。前述したボルドリも重要な地区です。
ボルドリの土壌
マーテルが重要視するボルドリの特徴として、すみれの花の香りが出ると言われています。
ワインがお好きな方の中でも、食後に蒸留酒まで楽しまれる方は、今の時点の日本ではあまり多くありません。
忙しい現代、時間の問題もあると思いますが、時にはオー・ド・ヴィeau de vie(=命の水)と呼ばれるコニャックなど蒸留酒の時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。深い癒しの時間にもなることでしょう。
Clos Yは、5月6日のレストラン講座のテーマをボルドーとし、シャトー・ヴァランドローやシャトー・ラトゥール・マルティヤックなど特級格付けのシャトーを含むワインをお楽しみ頂きます。食後にはマーテルのコニャックも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。
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ワイン・コラム 第152回 ジュラ地方の話 レトワール編
より正確には、フランシュ・コンテ地域圏のジュラ県で造られるワインを指します。
ワイン産地の括りとしてサヴォワSavoieとまとめられることが多いですが、ジュラのワインとサヴォワのワインは、使用する品種も一部を除き異なり、タイプも異なります。
ジュラのワインは黄ワインとして知られるヴァン・ジョーヌVin Jauneや藁のワインヴァン・ド・パイユVin de Pailleなど、個性的なものがありますが、シャルドネやピノ・ノワールも栽培されています。実はブルゴーニュからほど近い(ボーヌBeauneからアルボワArboisまで70kmほど)ワイン産地です。
今回は、小さなジュラ地方の中でも特に小さなワイン産地、日本であまりお目にかかることがないレトワールL’Etoileをご紹介いたします。
フランス語でエトワールは星を意味します。そんな美しい名を持つこのアペラシオンは、ジュラのワイン産地のちょうど中央あたりに位置しています。
レトワールの名を名乗ることができるワインを生みだすことができる畑は僅か80haほど。レトワールのワインはフランスでもあまり出会うことができない希少なワインです。
レトワールのワインは白のみ。白と言っても個性的で、いわゆる一般的な白ワインの他、前述したヴァン・ジョーヌ、ヴァン・ド・パイユがあります。
ヴァン・ジョーヌはサヴァニャンSavagninというジュラの地場品種のワインなのですが、樽で6年も熟成させる他に類を見ないワインです。濃い色調とシェリーのよう、と例えられる独特の風味が特徴です。
ヴァン・ド・パイユは、ジュラ地方以外でも見られますが、藁の上で収穫したぶどうを乾燥させて造る複雑な味わいを持つ甘口ワインです。
私はこのアペラシオンを代表する生産者であるシャトー・ド・レトワールChâteau de l’Etoileを訪問しました。
小高い丘の上にあるワイナリーは風情があり、この地方の風景に溶け込んでいます。
この生産者はスパークリング・ワインも造っていますが、こちらはレトワールではなくクレマン・デュ・ジュラCrémant du Juraのアペラシオンが適応されます。
レトワールのシャルドネによる白ワインは、お隣のブルゴーニュのシャルドネの白ワインと、やはりタイプが異なります。樽熟成を2~3年もの長い間行うこともあるといった醸造上の違いもありますが、やはり同じ品種とは言えぶどうの質が異なるのでしょう。少しスパイシーでナッツのような香りがあります。
このようなワインは、まさに食事と共に楽しむべきワインです。甲殻類、特にほんのりカレーの風味を纏わせた料理との相性は抜群です。
もしレトワールのワインが手に入る機会がありましたら、試す価値ありです!
Clos Yは、4月16日のレストラン講座のテーマを「ジュラ地方」とし、入手困難な銘柄を含む素晴らしいワインをそれに合わせた特別料理と共にお楽しみ頂きます。レトワールも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。
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ワイン・コラム 第151回 イタリアの話 マルケ州 イエージ編
真っ先に思い浮かぶ銘柄は、キアンティChiantiやバローロBaroloなど赤ワインが多いと思います。
白ワインでは、イタリア北部のヴェネトVeneto州やそのお隣のフリウーリ・ヴェネツィア・ジュリアFriuli-Venezia Giulia州などで上質なものが見られます。
比較的低価格で楽しめる銘柄は、ピエモンテ州のガヴィGaviやヴェネト州のソアヴェSoave、そしてマルケMarche州のヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージVerdicchio dei Castelli di Jesiなどがあります。
今回は、マルケ州のお話です。
アンコーナAnconaを州都とするこの州は、イタリア中部の東側に位置しています。北はエミリア・ロマーニャ州、西はウンブリア州、南はアブルッツォ州と接し、東側には美しいアドリア海が広がっています。
この州を代表するワインは、上述したヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージです。日本では、銘柄によりますが1,000円ほどで入手できる、名前の長さに反して(?)カジュアルなワインです。
海に面したマルケ州では新鮮な魚介を使った料理がありますが、そのような料理と気軽に楽しむことができるワインです。
さて、この長い名前のワイン、解読するとカステッリ・ディ・イエージ(地名)のヴェルディッキオ(ぶどう品種の名前)、となります。
イタリア語で緑のことをヴェルデverdeといいますが、ヴェルディッキオという白ぶどう品種は緑がかった色をしていますので、そのように名づけられました。
重要な産地であるイエージの町は、アンコーナから内陸に20kmほどの所に位置しています。この州では比較的大きめの町で、私は車で街中を通っただけでしたが、大きめの通りが長く続いており、落ち着いた雰囲気を感じました。
もうひとつ、挙げるべき産地としてマテリカMatelicaがあります。
マテリカは海から50km以上離れた内陸にあり、イエージと同じヴェルディッキオでできる白ワインながらこちらの産地のものは「山のワイン」というイメージがあります。ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージよりヴェルディッキオ・ディ・マテリカのほうが、一般的にはよりしっかりした構成をしています。そうなると、合わせる料理はイエージの方には魚介類を、マテリカには魚介も良いですが白身の肉類と合わせても良いと思います。
どちらも軽めのタイプが主流ですが、中には熟成に耐えるワインもあります。そのようなワインはほとんどの場合ClassicoやSuperiore(もしくはその両方)が名前の後に付いています。前者は歴史的に古い、言い換えると長いぶどう栽培の歴史を持つ、特に上質なぶどうが収穫できる限定された地区のワイン、後者は一定の基準よりも良く熟し、糖度が上がったぶどうから造られるワインが名乗ることができる単語です。
優れた生産者のこのようなワインを飲むと、ヴェルディッキオのイメージが変わると思います。
しっかりめのヴェルディッキオのワインは、春の訪れを告げる山菜などと合わせてみても良いと思います。試してみてはいかがでしょうか?
Clos Yは、4月6日のレストラン講座のテーマを「イタリア」とし、イタリア全土から選りすぐった素晴らしいワインをそれに合わせた特別料理と共にお楽しみ頂きます。樽熟成を施した、別格のヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージ クラッシコ スペリオーレも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。
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ワイン・コラム 第150回 オーストラリアの話 タンバランバ編
そう聞くと、アルコールのヴォリュームが強く、果実味が主体で酸味が控えめのワインが想像されるかもしれません。
それは正しくもありますが、もちろんそうではないワインも多く存在しています。
今回は、オーストラリアの南東部、ニュー・サウス・ウェールズ州New South Walesの中でも冷涼な南部に位置するタンバランバTumbarumbaをご紹介いたします。
ワイン造りの歴史の長いヨーロッパなどでは、シャブリChablisやポイヤックPauillacなどワイン産地とその土地で造られるワインの特徴が認識されています。例えば、シャブリと言えばブルゴーニュ地方北部のシャルドネで造られる軽やかな白ワイン、というように。
ではオーストラリアはどうでしょうか。ハンター・ヴァレーHunter Valleyやマーガレット・リヴァーMagaret River、ヤラ・ヴァレーYarra Valleyなどある程度広く認知されつつある産地が出てきておりますが、それぞれの土地で複数のぶどう品種が栽培されていますし、まだ産地自体とその産地を代表するワインのスタイルが確立されていない部分があるように思われます。
それは問題なのかもしれませんが、逆に考えるとそれぞれの土地に多様性があり、知られざる部分が多いとも言えると思います。
特に、注目したいのが、知名度は低いもののしっかりとした特徴を持つ、冷涼な気候に属するワイン産地です。
タンバランバはまさにそのようなワイン産地のひとつです。
James Halliday氏のWine Atlas of Australiaによると、標高は300~800m。ぶどう栽培上の主な懸念事項としては「霜」が挙げられる、冷涼な産地です。栽培されている主要な品種はピノ・ノワールとシャルドネです。
上質なぶどうが収穫できるのに、タンバランバの名前はあまり知られておりません。なぜかというと、大手生産者が、上質なスパークリング・ワインの原料の一部としてこの土地のぶどうを購入し、ブレンドして用いるためです。必要不可欠なのですが、最終的な商品の一部を成すに過ぎませんのでタンバランバの名前がラベルに表記されることはありません。このような事情のため、この土地の名前を聞いたことが無くても、この土地で栽培されるぶどうから造られたワインを口にしている方もいらっしゃると思います。
稀に、タンバランバの名を記したラベルのワインに出会うことがあります。そのワインは、冒頭で書いたようなヴォリュームのあるタイプではなく、シャブリのようとまでは言いませんが、線が細めながらも充実した果実味を備えた素晴らしいものが多いです。まさに「テロワール」が良く表現されています。当然のことなのですが、オーストラリアにもテロワールの妙があるのです!
このようなワインは、ワインが好きながらもあまり新世界のワインを飲まないような方に是非試して頂きたいと思います。
人生にまたひとつ楽しみを増やしてみてはいかがでしょうか?
Clos Yは、3月19日のレストラン講座のテーマを「オーストラリア」とし、オーストラリア全土から選りすぐった素晴らしいワインをそれに合わせた特別料理と共にお楽しみ頂きます。ハンギング・ロックのマセドンやデ・ボルトリのノーブル・ワン、そしてペンフォールドのタンバランバ シャルドネも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。
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ワイン・コラム 第149回 ぶどう品種の話 プティット・シラー編
実際には数えきれず、その数は5,000以上になるようです。
今回ご紹介するぶどう品種プティット・シラーPetite Sirahは、その名からシラーSyrahの仲間と思ってしまいますが、実際はシラーとは関連が無いようです。
よく見ると、シラーのスペルがSirahとSyrahで異なりますね。
ワイン用ぶどう品種のバイブルとも呼ぶべきジャンシス・ロビンソン氏による「ワイン用葡萄ガイド」によりますと、
「おそらく本物のシラーには関連が無く(中略)幾つかの異なる、あまり知られていない品種を総称して適用される名称」
衝撃です!ひとつの名前が、複数のぶどう品種に対して使われていると言うのですから。
つまり、A社のプティット・シラーとB社のプティット・シラーは異なる品種である、という可能性があるわけです。
このようなこともあるのですね。実際ぶどうは突然変異を起こしやすく、同じぶどう品種でも複数の色を持つ(例えばグルナッシュ・ノワールとグルナッシュ・ブランなど)ことは少なくありません。
プティット・シラーの場合、複数の品種の総称と言うことですが、流石に全くタイプが異なるぶどうが同じ名前で呼ばれることは無いと考えるのが普通ですよね。
私は今までそれほどたくさんのプティット・シラーに接してきていませんが、この品種の最高峰と評されるのがサッカリーThackreyのワインです。
ただこの造り手は、数百年前の醸造文献を解読し、「昔の」ワイン造りにこだわっています。そのためこの生産者のプティット・シラーを「この品種の特徴が良く出た基準」にするのはやめておいた方が良いかもしれません。
私が言えることは、プティット・シラーのワインは、主にカリフォルニアで生産されており、ワインの特徴としては色が濃く力強く、ボリュームがあります。繊細な北ローヌのシラーとは方向性が違います。
現時点では謎に包まれているプティット・シラーですが、謎の多いものは私たちの身近に多いですよね。
いろいろ想像を巡らせながらワインを楽しむのも一興でしょう。
Clos Yは、3月2日のレストラン講座のテーマを「アメリカ」とし、素晴らしくリッチなシャルドネや冷涼地の酸味の美しいワインなどを、それに合わせた特別料理とお楽しみ頂きます。鬼才サッカリーのプティット・シラーも登場します!
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ワイン・コラム 第148回 ブルゴーニュ地方の話 シャブリ編
世界で最も有名なワインのひとつでしょう。
しかし、そのワインが、フランス、ブルゴーニュ地方の北部にあるシャブリという名の小さな町の周辺のシャルドネ100%で造られる白ワインであることまで知っている人はそう多くは無いと思います。
このワインの魅力は、凛とした酸味としっかりとしたミネラル感を持つ締まった構成にあると思います。樽熟成をしないものが多いので、同じブルゴーニュ地方のコート・ド・ボーヌ地区のムルソーなどと比べると、香りの豊かさなどで引けを取ることがあるかもしれませんが、透明感のある美しいワインです。
シャブリは若い状態で飲まれることが多いと思うのですが、極めて残念に思います。シャブリ、特にプルミエ・クリュやグラン・クリュは長期の熟成に耐えます。10年ほど熟成したシャブリを試されたことが無い方が、初めて熟成シャブリを経験すると、「シャブリ」というもののイメージとかなり異なるワインなのでとても驚かれることが多いです。熟成シャブリは黄金の色調を呈し、例え樽熟成を経ていなくても樽香のような香ばしい香りを放ちます。元来しっかりとした酸味を備えたワインですので骨格はぶれません。特にシャブリ・グラン・クリュは、コート・ド・ボーヌ地区の偉大な白ワインに比べて遜色の無いグラン・ヴァンに成長します。
食事との組み合わせを考えてみますと、「牡蠣にはシャブリ」ということがよく言われますが、上記のような熟成シャブリには甲殻類やソースを添えた魚料理、もしくは白身の肉料理が合うと思います。生牡蠣と合わせる場合は、若いフレッシュなもの、特にさらっとしているプティ・シャブリPetit Chablisあたりが良いと思います。まあシャブリの土壌に含まれている牡蠣の化石を思いながら楽しめば、多少のマリアージュのずれも気にせずに済むのかもしれませんが...
シャブリの町を紹介しますと、人口2,600人ほどの小さな町です。ワイナリーがひしめき、中心部には手ごろなビストロなどもあり、シャブリとそれに合う料理(エクルヴィスのサラダ、グルヌイユなど)を楽しむことができます。
町にはスラン川Le Sereinが流れています。
この川はシャブリの畑の中を蛇行しながら南北に流れ、東側(右岸)と西側(左岸)に畑を分けています。おおまかに、右岸は厳しいスタイルのワインを、左岸は柔らかなスタイルのワインを生むとされています。
生産者としまして、シャブリの1/4ほどを造っている、ラ・シャブリジェンヌLa Chablisienneをご紹介いたします。
量だけでなく、質の面でも非常に高い評価を受ける協同組合です。シャブリにある7つのグラン・クリュのうち6つのワインを造り、それぞれ畑の力を見事に引き出していますが、グラン・クリュのように高価なキュヴェだけではなく、シャブリA.C.のラ・ピエルレLa Pierreléeなども良くできています。
この造り手を訪問し、その多彩なワインを試してみるとシャブリ全体がよくわかると思います。
夏にはよく冷やした若いものを、冬には温かい鍋料理と、シャブリは日本の食卓で一年を通して活躍することができるワインだと思います。豪華な料理には熟成したシャブリ・グラン・クリュを冷やし過ぎずに合わせると良いでしょう。様々な魅力を持つシャブリを、「再発見」してみてはいかがでしょうか?
Clos Yは、2月から7月まで月に一度ブルゴーニュ ステップ・アップ講座を行います。初回の2月26日のテーマは「シャブリ グラン・クリュとプルミエ・クリュ」です。長期熟成の可能性を秘めた上質な白ワインであるシャブリについて詳しく解説していきます。プルミエ・クリュ1種とグラン・クリュ3種の試飲も経験して頂きます。ご興味がございましたらご連絡ください。
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ワイン・コラム 第147回 ローヌ地方の話 ギガル編
ローヌ地方は北部と南部に分けられますが、それぞれ全くと言って良いほど違うタイプのワインを生産しています。北部と南部を別の産地として捉えたほうが良いのではと思います。
簡単に説明しますと、北部では赤ワインも白ワインも主に単一品種で造られ、ワインは力強いながらもエレガントさを備えています。それに対し南部(シャトーヌフ・デュ・パプの生産者、ネルトの方は我々はプロヴァンス地方にいるとおっしゃっていました。)では赤ワインも白ワインも主に複数のぶどう品種のブレンドで造られ、ワインは南の太陽の恩恵を受けふくよかでボリューム感が強く表現されています。
今回は、そんなローヌ地方を代表する生産者のひとり、ギガルGuigalをご紹介いたします。
手掛けるワインは広く、シャトーヌフ・デュ・パプやジゴンダスなど南ローヌ、そしてエルミタージュやコンドリウなど北ローヌ、つまりローヌ全域のワインを生産しています。
本拠地を置くのはアンピュイAmpuisの町です。この町はローヌ地方を代表する高級銘柄であるコート・ローティCôte-Rôtieの産地です。
ギガルを語る上で欠くことのできない看板ワインであるラ・テュルクLa Turque、ラ・ムーリーヌLa Mouline、ラ・ランドンヌLa Landonneの畑はこのギガルの本社の近くに位置しています。
ギガルのワインに限ったことではないのですが、コート・ローティは、フランス語で「焼けた丘」という名前から、いかにも「熱い(=ボリューム感が強くて重い)」ワインを想像してしまうと思うのですが、実際はローヌ地方最北端、ブルゴーニュに近い場所のワインなので、その名に反してエレガント系です。
加えて、コート・ローティに使われるシラーSyrahも少し誤解を受けている品種であるように私は感じています。
北ローヌが原産地とされるこの品種は、北ローヌではある程度高価なワインになります。オーストラリアなど別の産地では廉価なシラー(もしくはシラーズ)がたくさんあり、そのようなワインのほうが身近なことでしょう。しかし北ローヌのシラーとオーストラリアのシラーズでは同じ品種とは思えないほどワインのスタイルが異なります。オーストラリアのシラーズは一般的に果実味が豊かでボリューム感が強いワインに仕上がります。それに対し北ローヌのシラーは冷涼な雰囲気を持ち、ボリューム感は強くなり過ぎず、エレガントにまとまります。世界レヴェルのソムリエも、ブルゴーニュのピノ・ノワールと間違えることがあるほどです。
ギガルの話からそれてしまいましたが、このように、ギガルの看板ワインであるコート・ローティは常にエレガントさを備えています。
ギガルのワイン全体を見て、すごいと思うのは、そのボトム・レンジであるいわゆる「コート・デュ・ローヌ」の質の高さです。赤は18ヵ月もの間樽熟成され、(年により異なりますが)シラー主体です。驚くべきコスト・パフォーマンスの高さを誇っていますが、生産量の多いこのクラスのワインをあのレヴェルに仕上げることに驚かされます。
北から南まで、ローヌの上質なワインを造るギガル。この地のワインを知る上で、欠かせない存在です。特に今、冬季はジビエのシーズンです。野趣味溢れるジビエを、濃厚なソースで頂くとき、ボルドーやブルゴーニュも良いですが、ローヌのワインは鉄板です!試してみてはいかがでしょうか?
Clos Yは、2月2日のレストラン講座のテーマを「ジビエを食す!」とし、ジビエ料理をそれに合う素晴らしいワインとともにお楽しみ頂きます。ギガルのトップ・ワインのひとつ、コート・ローティ ラ・ムーリーヌ2006も登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。
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