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ワインコラム Archive
ワイン・コラム 第166回 2014年印象に残ったワインの話
どのような年でしたでしょうか?
私は毎年年末になると「今年のワイン」を考えます。今年はソムリエとして複数のコンクールに参加させて頂き、その内容により的を絞って試飲を重ねました。そういった環境の中で、強く印象に残ったものは...
Quinta dos Roques Dão Tinto Cãoキンタ・ドス・ロケス ダン ティント・カン 1999
ポルトガルの中でも重要なワイン産地、ダン。この土地を代表する生産者のひとりがキンタ・ドス・ロケスです。このポルトガルでもトップ・クラスの生産者が、希少な高級品種ティント・カンで造ったワインの15年熟成ものです。
香りは熟成感を伴う複雑なもので、温暖な地域で育ったぶどうを思わせる温かみがありながら繊細。味わいはピークを迎え、力強いもののどこかブルゴーニュのピノ・ノワールを思わせるような気品があり、なかなか他に類を見ない個性的なワインでした。
もはや通常に購入することは不可能なワインですが、丸の内のポルトガル料理屋さんでお目にかかれるかもしれません。
この生産者によるEncruzadoエンクルザ―ドの白ワインも実に秀逸であることを付け加えておきます。
あともうひとつ、挙げておきたいのはブルゴーニュのBizotビゾによるMarsannayマルサネイです。
ビゾと言えばヴォーヌ・ロマネの知る人ぞ知る生産者。高品質なワインを造っていますが生産量が少ないためなかなかお目にかかることができません。そのビゾがマルサネイのClos du Royクロ・デュ・ロワ畑で造るこの赤ワイン。どこかD.R.C.の雰囲気を感じたので印象に残っています。
みなさまはいかがでしたでしょうか?来年もきっと素晴らしいワインとの出会いがあるはずです。
本年も大変お世話になりました。2015年も、引き続きよろしくお願い申し上げます。
Clos Y代表 中西 祐介
Le 31 Décembre 2014
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ワイン・コラム 第165回 イタリアの話 マッツェイ編
世界で最も有名なワインの銘柄のひとつでしょう。
このイタリア・ワインは、なだらかな丘陵、連なる糸杉が美しい、トスカーナ州で生まれます。
名が知られている割に、その実態はあまり知られていないと思います。キアンティにも数種類あります。まずはキアンティ。一般的にはキアンティの中で最もカジュアルなワインで、サンジョヴェーゼSangioveseという黒ぶどうを主体に、他の黒ぶどう、そして白ぶどうの使用も認められています。そして地区名付きキアンティ。例えば斜塔で有名なピサの町の近くのぶどうで造られたものでキアンティ・コッリーネ・ピサーネChianti Colline Pisaneなど、7つの小地区が認められています。そして、キアンティの中で私は最も心を動かされる、キアンティ・クラッシコChianti Classico。古くからぶどう畑が拓かれていた場所のぶどうから造られたワインのみが名乗ることができ、現在のキアンティの名声の礎です。キアンティ・クラッシコが素晴らしかったので、キアンティと名乗ることができるワインの産地が周囲に広がっていきました。キアンティ・クラッシコは白ぶどうの使用が認められていません。郷土料理のビステッカ・アッラ・フィオレンティーナなどとは相性抜群の、「肉が食べたくなる」赤ワインです。そしてそれぞれに、長期熟成の上級版、リゼルヴァRiservaがあります。
今回は、上質なキアンティ・クラッシコを造る、マッツェイMazzeiをご紹介いたします。
マッツェイはフォンテルトリFonterutoliという銘柄で上質なキアンティ・クラッシコを造っていますが、他にも白ワインやスーパー・トスカーナのシエピSiepi、さらにはトスカーナ州以外でもワイン造りを行っています。
私がこの生産者を訪問したのは2010年の9月末のことでした。
自然の美しいトスカーナ州ですが、マッツェイの醸造所は山の中にひっそりと佇んでいます。
そのワイナリーは近代的で、とても効率的にできています。
ぶどうが運ばれてくる地上部分。
部分的に丸い蓋があり、取り外しできるようになっています。穴の真下にはアルコール発酵が行われるステンレス・タンクが待ち受けています。
ちょうど収穫時期で、タンクの中ではアルコール発酵がまさに行われているところでした。
シエピを含む複数銘柄を試飲させて頂きましたが、マッツェイのワインは果実味に張りがあり、酸味との均整が美しく、かっちりとエレガントにまとまっているという印象を受けました。
キアンティ・クラッシコといってもいろいろなタイプがあります。フォンテルトリは品質において上位に来るのは間違いありません。
美しいトスカーナが生む素晴らしいワイン、キアンティ・クラッシコ。美味しい食材が増えてくるこの時期、マッツェイの作品を、料理と共にじっくりと味わってみてはいかがでしょうか。
Clos Yは11月30日のイタリア・ワイン基礎講座のテーマをトスカーナとし、マッツェイのキアンティ・クラッシコを含む3種類のワインを料理と共にお楽しみ頂きます。ご興味がございましたらご連絡ください。
講座へのお申し込み、ご質問等はこちらのアドレスにご連絡ください。
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ワイン・コラム 第164回 オーストラリアの話 ジャコンダ編
カルト・ワインを生みだす、オーストラリアの生産者です。
オーストラリアのカルト・ワインと言うと、ヌーンNoonなどに代表されるような、黒く、濃く、アルコール度数の高い、超凝縮ワインを想像されるかもしれません。
今回ご紹介するジャコンダは、シラーズやルーサンヌなどローヌ系品種も造っておりますが、ブルゴーニュ風に造られるピノ・ノワールやシャルドネも見逃せない品質です。
居を構えるのはヴィクトリア州北部、ビーチワースBeechworthです。この生産者により有名なワイン産地ですが、他にもソレンバーグSorrenberg、カスターニャCastagna、サヴァテールSavaterreなど偉大なワインを生みだす素晴らしい生産者が町の付近に点在しています。
ワイナリーによりワインのスタイルは当然異なるのですが、過度に濃くはない、エレガントさを備えたワインと言う点で共通しています。
今回ご紹介するジャコンダは、この高級ワイン産地でも筆頭に来るワイナリーです。
標高約400mの乾燥した地に、僅か6haほどの畑を所有しています。
私がこのワイナリーを訪問したのは2008年の2月末、収穫期のことでした。忙しい時期にもかかわらず、醸造所の見学とワインの試飲もさせて頂きました。
いずれも素晴らしい品質!トータルで6haほどしかありませんので、当然全てのキュヴェが少量生産。ワインは入手困難ですので、品質の割に知名度は高くないかもしれません。
しかしワイン・メーカーのリック・キンツブラナー氏は世界の白ワインメーカートップ10に選ばれるなど、評価されています。
もしかするとどんなに素晴らしくても、1本1万円以上のオーストラリア・ワインに手を伸ばすのは勇気がいることかもしれません。しかし、全オーストラリアで別格のワイン産地、ビーチワースのトップ生産者のワインは、試す価値があると思います。
Clos Yは、11月3日のレストラン講座のテーマを「新世界」とし、リッジのモンテ・ベッロなど素晴らしいワインを料理と合わせてお楽しみ頂きます。ジャコンダのナンチュア・ヴィンヤード・シャルドネ2006も登場いたします!ご興味がございましたらご連絡ください。
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ワイン・コラム 第163回 イタリアの話 ピエモンテ州 ブローリア編
ネッビオーロNebbioloによるバローロBarolo、バルバレスコBarbarescoが特に有名ですが、近年ではバルベーラBarberaやドルチェットDolcettoのD.O.C.G.銘柄も増え、トスカーナ州Toscanaと並びイタリアでもトップ・クラスのワイン産地として知られています。
ピエモンテ州のワインとして、白ワインも忘れてはいけません。ロエロRoero地区のアルネイスArneisやエルバルーチェErbaluceも良いです。
今回は、コルテーゼCorteseという白ぶどう品種で造られるガヴィGaviをご紹介いたします。
ピエモンテ州のワイン生産の中心はアスティAstiなどが造られる州の中部から南部にですが、北部でも上質なワインが造られています。ワイン名ガヴィの名のもとになっているガヴィの町は、州の最南東部に位置しています。
ピエモンテは「山の麓」の意味があります。バローロやバルバレスコなどはしっかりとした肉料理と合わせたいものですが、ガヴィはやはり魚介類でしょうか。山のイメージが強いピエモンテ州。しかしガヴィは、実は海から直線で30kmほどの所に位置しています。ティレニア海の新鮮な魚介類と楽しむのも良いですし、ピエモンテ州の郷土料理バーニャ・カウダと楽しむのも良いでしょう。
私が訪問したのは、ガヴィトップ生産者のひとり、ブローリアBrogliaです。
こぢんまりとした、静かなガヴィの集落の北西に位置し、ワイナリーの周りはぶどう畑に囲まれています。
一般的にガヴィは品質が安定していて、コスト・パフォーマンスが高いです。だいたい1,500円ほどで良いものが手に入りますし、3,000円を超すものはほとんどありません。
ブローリアは複数のガヴィを生産しています。珍しいガヴィ・スプマンテや、日本で5,000円を超すものまで、それぞれが良質です。
特筆すべきなのはやはり最高峰のブルノ・ブローリアBruno Brogliaでしょう。ラ・メイラーナLa Meirana畑の中でも特に優れた区画の、樹齢の高い樹の、低収量により凝縮されたぶどうから造られます。香りの成熟度、味わいの密度が異なります。このようなタイプのワインはなかなかガヴィには見られないものです。
ガヴィ。コスト・パフォーマンスが高く、イタリアン・レストランで重宝するワインだと思います。覚えておいて損は無い銘柄です。機会がありましたら、ブローリアも試してみてはいかがでしょうか?
Clos Yは、10月26日のイタリア・ワイン基礎講座のテーマをピエモンテとし、バローロ、バルバレスコ、そしてブローリアのガヴィの試飲も行います。この講座ではバローロやバルバレスコなど実際に現地を訪れた時の話や、郷土料理の話もいたします。ご興味がございましたらご連絡ください。
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ワイン・コラム 第162回 ブルゴーニュ地方の話 ブシャール・ペール・エ・フィス編
ドメーヌは自らが栽培するぶどうからワインを造るもので、家族経営の小規模な生産者が多いです。それに対しネゴシアンは他者が栽培したぶどうを購入してワインを造る、もしくは他者が生産したワインを購入してそれを熟成させて販売するもので、規模の大きな会社が多いです。
しかしその図式ももはや過去のものになりつつあります。
今日では、家族経営の小規模ドメーヌが小規模ネゴシアンとして購入ぶどうからワインを造るケースが増えています(その場合、同じ人間がワインを造ってもドメーヌものとネゴシアンものは別会社の名前を用い、ラベルも異なります。そうでないと区別がつかないですね。)
また、規模の大きなネゴシアンが自社畑を取得し、ドメーヌものとしてワインを造っています。特に名の知れた、規模の大きなネゴシアンは所有する畑の面積もとても広く、ドメーヌとして見逃せない存在になっています。
今回はそのようなネゴシアン兼ドメーヌで、上質なワインを生産しているブシャール・ペール・エ・フィスBouchard Père et Filsをご紹介いたします。
ブルゴーニュ地方のワイン文化の中心の町、ボーヌBeaune。城壁に囲まれた、まさにワインの町ですが、ブシャール・ペール・エ・フィスの社屋は鉄道の駅からまっすぐ町に向かって進んだ、城壁を入ってすぐのところに位置しています。
この造り手を、私は2度訪問させて頂きました。一度目は2004年。社屋の地下に張り巡らされたカーヴを案内して頂きました。そして2度目は2008年。今度は、ボーヌの北隣りの村、サヴィニー・レ・ボーヌ村Savigny-Lès-Beauneに行きました。というのも、2005年、ブシャール・ペール・エ・フィス社はこの地に最新鋭の醸造所を新たに設けたからです。
2008年の訪問はちょうど収穫時期でした。一年で最も忙しい時なのですが、次々とぶどうが搬入されてくる醸造所、そしてまさに収穫の最中の畑などを案内して頂きました。
選果
白ぶどうも選果
まさに、ぶどうからワインが生まれる現場です。
ドメーヌものも、ネゴシアンものも上質です。良いぶどうを、テロワールの表現に努め醸すブシャール・ペール・エ・フィス。今後も素晴らしいワインを世に送り出していくことでしょう。
Clos Yは、10月8日のブルゴーニュ ステップ・アップ講座 続編のテーマを「ボーヌとその周辺」とし、それぞれのアペラシオンの代表的な銘柄の試飲も行います。ボーヌ代表として、ブシャール・ペール・エ・フィスの「ヴィーニュ・ド・ランファン・ジェジュ」が登場します!
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ワイン・コラム 第161回 イタリアの話 プロセッコ編
ワインの中でも、何かしらの方法を用いてワインに発泡性を持たせたものです。上質なワインは醸造中に発生する炭酸ガスをワイン中に取りこんで造ります。
フランス北東部、シャンパーニュ地方で造られるシャンパーニュChampagneというスパークリング・ワインが世界で最も有名ですね。日本では「シャンパン」の名前で親しまれています。本来シャンパンというものはこのシャンパーニュ地方で造られた、原産地保護されているスパークリング・ワインのみを指します。
他にはカジュアルに楽しめるスペインのカバCava、そしてシャンパーニュ越えを目指しているイタリアのフランチャコルタFranciacorta...世界には数えきれないほどのスパークリング・ワインがあり、それぞれの土地で、その土地のぶどうを使い、「テロワール」を表現したワインになっています。
今回は、イタリア北東部で造られるプロセッコProseccoをご紹介いたします。
プロセッコは品種の名前、でしたが2009年にプロセッコを使用したスパークリング・ワインの一部がイタリアのワイン法上最高格付けであるD.O.C.G.に昇格したのをきっかけに、その名がグレラGleraという、地元で使われてきた名前に改められました。同時に、プロセッコという単語は、D.O.C.G.に昇格しなかったかつてのプロセッコ品種を用いて造られるスパークリング・ワインのD.O.C.名として現在は使われています。
ぶどう品種の名前が、ワインの名前にすり替わってしまったわけです。
ややこしいですね。整理すると、2014年現在は、プロセッコというのはカジュアルな(D.O.C.G.ではない)スパークリング・ワインの名前。そのプロセッコ・ワイン(そしてD.O.C.G.に昇格したスパークリング・ワイン)の原料となるぶどう品種名はグレラ、というわけです。
私は2013年の秋に、ヴェネト州北部に位置するプロセッコの産地に行ってまいりました。特に興味があるのはD.O.C.G.に指定された地域、中でも最高のぶどうが収穫できるとされるカルティッツェCartizzeでした。
ヴェネツィアのマルコ・ポーロ空港から北西へ50kmほど、ヴァルドッビアーデネValdobbiadeneの町へ行き、ヴァルドValdo社を訪問しました。
事前に訪問の交渉を続けたのですが、残念ながらお互いの時間が合わず、短いテイスティングだけさせて頂きました。短時間でしたが最上級品のカルティッツェのワインまで開けて頂きまして、良い勉強をさせて頂きました。
その後カルティッツェ地区の畑へ。グレラによるスパークリング・ワインは、例えD.O.C.G.銘柄でも決して超高価ではありません。そのようなワインを生みだす畑ですが、上質なぶどうが収穫できそう、同時に農作業が大変そうな斜面畑です。
このような畑での1年の重労働、そして完成したワインの品質を考えると、「あり得ない」値付けがされています。私も含め、ワイン愛好家にとっては上質なワインが安ければ有り難いことなのですが...
肝心のワインの品質ですが、細やかな泡を持つ、少し甘味が感じられるタイプが主流となっています。その点では世界のスパークリング・ワインの中でも独自の立ち位置にいますが、最近では辛口のいわゆるブリュットBrutも増えてきています。
世界的に流行りのグレラによるスパークリング・ワイン、気軽に楽しめるスパークリング・ワインのひとつとして、覚えておいて頂いて損は無いと思います。
Clos Yは、9月28日からイタリア・ワイン基礎講座を始めます。第1回のテーマはイタリア概論。イタリア全般のお話をいたします。3種類の試飲ワインには、D.O.C.G.格付けのグレラのスパークリング・ワインも含まれております。ご興味がございましたらご連絡ください。
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ワイン・コラム 第160回 ブルゴーニュ地方の話 ルイ・ラトゥール編
ブルゴーニュ地方、コート・ド・ボーヌ地区唯一の赤ワインのグラン・クリュです。
ラドワ・セリニーLadoix-Serrigny村、アロース・コルトンAloxe-Corton村、そしてペルナン・ヴェルジュレスPernand-Vergelesses村、これら3ヵ村にまたがり、コルトンの丘があります。
遠くからでも目立つ、ぽこっとした丸いこの丘の日当たりの良い部分にはぶどうが植えられていて、特に上質なぶどうが収穫できる畑はコルトンやコルトン・シャルルマーニュCorton-Charlemagneといったグラン・クリュに格付けされています。
コート・ド・ニュイのグラン・クリュ、例えばマジ・シャンベルタンMazis-Chambertinやボンヌ・マールBonnes-Maresなどに比べると、コルトンの赤はやや地味な感じがあります。一般的なコルトンの価格がグラン・クリュとしては控えめで、それより高価なプルミエ・クリュもたくさんあることを考えると当然なのかもしれませんが、このアペラシオンを引っ張っていくような傑出した生産者が多く無いこともその理由の一つと言えるでしょう。
コルトンの優れた生産者としては、ボノー・デュ・マルトレイBonneau du Maltray、トロ・ボーTollot-Beaut、ブシャール・ペール・エ・フィスBouchard Père et Fils、ドメーヌ・ド・ラ・ヴージュレDomaine de la Vougeraie(近年ではD.R.C.)などが挙げられますが、今回はコルトン最大の所有者でるルイ・ラトゥールLouis Latourをご紹介いたします。
1731年からの歴史を持つこの生産者は、今日ではブルゴーニュだけでなく南仏でもワイン造りを行っていて、多くのアペラシオンを手掛けています。一般的には「ネゴシアン」としての認識が強いことと思われますが、自社畑を所有するドメーヌとしての顔も持ち合わせています。
極上のロマネ・サン・ヴィヴァンRomanée-Saint-Vivantなども造っていますが、この生産者のハートはコルトンにあるようです。
私がこのメゾンを訪問した時、まずはボーヌの街中にあるオフィスを訪ねました。するとすぐに車でコルトンの丘まで移動して、そこにある醸造所を案内してくださいました。
こだわりのある醸造設備や醸造方法など面白い点がありますが、私が興味深いと思う部分は、この生産者は複数のコルトンを造り分けているところです。
まずは、一般的な「コルトンCorton」。コルトンというグラン・クリュは複数の畑の集合体ですが、あるひとつの畑のぶどうのみからコルトンを造る場合、その畑の名を表記することができます。例えば、コルトン・ブレッサンドCorton Bressandesなど。ルイ・ラトゥールのコルトンの一番下に位置するこのキュヴェは、コルトンの複数の畑のぶどうをブレンドしたもので、畑名を名乗ることはできません。
それから、畑名入りのコルトン。コルトン・クロ・ド・ラ・ヴィーニュ・オ・サンCorton Clos de la Vigne Au Saintなど。普通に考えると、畑まで絞り込んだ、コルトンの中でも一番上に来るものです。しかし、ルイ・ラトゥールにはこの上があります。
それが、同社の看板ワインであるシャトー・コルトン・グランセイChâteau Corton Granceyです。ルイ・ラトゥールの自社畑のコルトン4つの畑の高樹齢のぶどうをブレンドして造ります。同社のコルトンの最上品、であるのかもしれませんが、ブルゴーニュの真の愛好家は畑の表現を確かめたいもので、複数畑のブレンドものには興味が無い、という方もいらっしゃるかもしれません。
今回はコルトンの話が中心になりましたが、同社のグラン・クリュの白、コルトン・シャルルマーニュはコルトンの赤以上の高い評価を得ています。ひとまずコルトンがどのようなワインか確かめたい場合には、この造り手のコルトンはひとつの基準になることでしょう。
コルトン上部から
Clos Yは、9月から始まるブルゴーニュ ステップ・アップ講座 続編の第1回の内容をコルトンとその周辺とし、ルイ・ラトゥールの畑名入りのコルトンも試飲に登場してもらいます。ご興味がございましたらご連絡ください。
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ワイン・コラム 第159回 チリの話 コノ・スル編
そう聞いて、どのようなイメージが浮かぶでしょうか?カベルネ・ソーヴィニヨン、赤ワイン、安い、濃い...
恐らく「エレガント」や「(価格が)高い」というイメージはほとんど無いことでしょう。
一般的にはその通りだと思います。今回は、コノ・スルCono Surをご紹介いたします。日本でも人気の生産者ですね。ここのワインは特に「安い!」というイメージがあると思います。私はもう何年も前に、コノ・スルの日本で3桁の値段のワインを開けてみて、これはどうしたものかと悪い意味で驚かされた経験があります。
私は2013年にコノ・スルを訪問させて頂きました。果たして今日現在、コノ・スルは、そしてチリのワインは世界的にどの程度の位置にいるのか、確かめてみましょう。
コノ・スルが居を構えるのはチリの首都サンティアゴの南、ワイン産地としてはコルチャグア・ヴァレーColchagua Valleyに位置しています。
その歴史は1993年からとまだ新しいワイナリーですが、既に世界的に高い評価を得ています。
安く、質もそれなりだった経験のあるこのワイナリーのワイン。しかし比較的最近発売されたスパークリング・ワインの品質にとても良い印象を持っていましたので、現在はどうなのだろうと不安と期待を交えての訪問でした。
到着は夜。ゲスト・ハウスに案内され、コノ・スルのワインとバーベキューでもてなしてくださいました。
夜空は月と星が美しかったです。
広大な敷地には、畑と大きな醸造所があります。
訪問させて頂いたのはちょうど収穫&醸造の時。
丁寧な選果は上質ワイン造りに必須の工程です。
さて、肝心なテイスティングですが、シングル・ヴィンヤードSingle Vineyardと20バレルズ20Barrelsシリーズを中心に行われました。
結果は驚きの連続でした。いずれも高品質!これが日本で1,000円台後半から2,000円台前半で売られているのを考えると、素晴らしく充実した内容です。
そしてコノ・スルの虎の子オシオOcio。チリで最高の、そして世界的にもトップ・クラスの、エレガントさを備えた、完成度の高いピノ・ノワールです。
訪問を終え感じたことは、この生産者のワインは「安い」のではなく「コスト・パフォーマンスが高い」ということです。品質に合わない低価格だと思います。そしてリースリングやピノ・ノワールはもちろん、カベルネ・ソーヴィニヨンなどにも「エレガントさ」が感じられました。
いわゆる新世界で「濃いだけ」のワインを造ることは難しいことではないのかもしれません。しかしそこにエレガントさを持たせるのはとても大変なことです。
コノ・スル1社を見ただけでも、チリ・ワインが世界的に高い位置づけにあることがわかります。
特にワインが好きという方々、今一度チリのワインを見直してみてはいかがでしょうか?
Clos Yは8月24日の「偉大なワインを飲む!」単発講座のテーマをピノ・ノワールとし、同品種による世界各国のテロワールの表現に注目してみたいと思っております。コノ・スルのオシオも登場いたします!ご興味がございましたらご連絡ください。
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ワイン・コラム 第158回 ブルゴーニュ地方の話 ブルノ・クレール編
軽いタイプの赤、白が造られますが、近年では優良生産者はなかなかしっかりとした赤白を生みだしていて、注目に値します。
この村のワインと言えば、赤も白も良いのですが、何と言ってもロゼRoséが有名です。100%ピノ・ノワールで造られる、淡い色調のマルサネイ・ロゼは、ピノ・ノワールのワインであることをしっかりと感じさせてくれる、とてもエレガントなワインです。エレガントなロゼ・ワインとしては、フランスの中でもトップ・クラスの品質であると言えます。
そのマルサネイ・ロゼを生みだしたのが、今回ご紹介するブルノ・クレールBruno Clairの祖父に当たるジョゼフ・クレール氏です。ブルノ氏は偉大な祖父を持ちながらも、相続問題で苦労し、自分の名のドメーヌを立ち上げたのは1979年のことでした。
当時は4つの村に僅かな畑を持つのみでしたが、今日ではグラン・クリュを含む22のアペラシオンを手掛ける、重要なドメーヌに成長しました。
私がこのドメーヌを訪問したのは2013年の2月末。雪の降る寒い日でした。
試飲は地下のカーヴで行われました。
温度は年間を通じてほぼ一定に保たれています。やはりシャンベルタン・クロ・ド・ベズなどグラン・クリュが素晴らしいのはもちろんですが、マルサネイ・ラ・コート村に居を構える造り手ですので、マルサネイのワインも大変興味深いものです。
マルサネイにはプルミエ・クリュもグラン・クリュもありませんが、ブルノ・クレールは畑の個性を尊重し、ワインを造り分けています。
1級畑に昇格するかもしれない可能性を秘めたレ・ロンジュロワLes Longeroies、しっかりした果実味、細かいタンニンを備えるレ・ヴォードネル、Les Vaudenelles、そして凝縮感が強く、力強いワインが生まれるレ・グラス・テットLes Grasses Têtes。
マルサネイのワインに端的に現れていますが、ブルノ・クレールのワインは現代的なきれいな造りで、過度の抽出など無く、気品のあるスタイルのように感じられます。
「苦労人」ブルノ・クレール氏が醸すワインには、どのアペラシオンでもそのテロワールがきれいに反映されていると思います。
Clos Yは、8月16日の夏のワイン会でお楽しみ頂くワインの中に、ブルノ・クレールのマルサネイ・ロゼ2010も含めております。ご興味がございましたらご連絡ください。
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ワイン・コラム 第157回 ロワール地方の話 トゥール・グリーズ編
A.O.C.アンジュのスパークリング・ワインなどそれ以来見たことがありませんが、それは2004年、ボルドーに住んでいる時に、近くの大きなスーパーの片隅で見つけた、確か4ユーロほどのものでした。樽熟成をしたのかと思うほどロースト香が強く、印象はまるでクリュッグ。その時の驚きは今も色褪せていません。
そんな規格外のワインを生みだす可能性を秘めたロワール地方。今回はトゥール・グリーズTour Griseという生産者をご紹介いたします。
居を構えるのはル・ピュイ・ノートル・ダムLe Puy Notre Dame。アペラシオンはソーミュールSaumurです。
Saumur付近地図。
このアペラシオンで注目すべきトップ生産者のひとりです。日本での知名度は依然高くありませんが、フランスでは高い評価を得ています。
私がこのドメーヌを訪問させて頂いたのは2005年の3月でした。静かな村を、他所者のように感じながら行きましたが、出迎えてくださった当主はホスピタリティにあふれ、少し離れた畑やカーヴなど丁寧に案内してくださいました。
畑はこの通り。
土壌は石灰質が強く、ワインにはミネラル感が強く現れます。
この生産者で特筆すべき点は、栽培にビオディナミを採用しているなどありますが、長期熟成を経てからワインを出荷するというところがあります。
若いヴィンテージもあるものの、10年以上熟成したものが大半を占めています。世界的に見ても稀な生産者と言えるでしょう。実際、今日本で流通しているソーミュール・ブリュットSaumur Brutは2002年という有様です。それがお手頃な価格なのですから、感心させられます。知っておくべき生産者ですね。
ドメーヌでカベルネ・フランの赤ワインを購入し、当時働いていたボルドーのビストロ・デュ・ソムリエBistro du Sommelierのスタッフとお昼の賄いの時にテイスティングしました。
ロワールのカベルネ・フランは日本ではあまり受けが良くないですが、トゥール・グリーズのカベルネ・フランはビストロ・デュ・ソムリエで好評でした。飲み手の嗜好の違いか、トゥール・グリーズの品質が高かったのか...
今考えるとどちらも当てはまると思います。
トゥール・グリーズ、未経験の方は一度経験して頂く価値があると思います。
Clos Yは7月16日のレストラン講座のテーマを「ロワール」とし、上質なロワールのワインをそれに合わせた特別料理とお楽しみ頂きます。幕開けはトゥール・グリーズのスパークリング・ワイン2002です!ご興味がございましたらご連絡ください。
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