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ワインコラム Archive

ワインコラム 第46回 ロゼワインの話

3月に入り、まだ寒い日もありますが、春の訪れを感じますね。
 
春といえば、桜でしょう!
 
花見を楽しみにしている方もいらっしゃると思いますが、花見のときに何を飲みますか?ビールでしょうか?
 
ワイン好きのみなさまは、ワインを飲まれることもあるでしょう。花見にぴったりのワインと言えば、ロゼワインでしょうね。今回はロゼワインのお話です。
 
ロゼワインと聞くと、赤でも白でもない、どちらつかずの存在というイメージで、正当に評価しないワイン愛好家もいます。しかし、その特徴こそロゼワインの魅力ではないでしょうか。
 
簡単に造り方をご紹介すると、大きく2種類の製法があります。
 
ひとつは、黒ぶどうを用いて、白ワインと同じように醸造する方法です。黒ぶどうを圧搾すると、ほのかにピンク色がかった果汁が流れ出します。このピンク色のぶどう果汁をワインにすると、ロゼワインになるわけです。この場合、このワインは白ワインに近いロゼワインと言えると思います。
 
もうひとつは、セニエ法と呼ばれるやり方で、赤ワインを造るように醸造します。つまり、黒ぶどうの皮を透明なぶどう果汁に漬けておくと、皮から色素が出ていきます。この状態を長く保つとしっかりした色調の赤ワインになるのですが、ほのかに色づいたところで皮と液体を分離すると、美しいロゼの色調になるわけです。こちらの場合は、赤ワインに近いロゼワインと言えるでしょう。
 
近年は世界的なロゼワインブームのようで、各国で優れたロゼワインが造られています。上質なロゼは、美しい色調を呈し、華やかな香りを持ち、いきいきとした果実味と酸味のバランスが良く、微かな渋みが余韻を引き締めてくれます。樽で熟成されたものもあり、ロゼと言っても様々なタイプがあります。
 
有名な銘柄を挙げると、フランス、ローヌ地方のタヴェルTavelプロヴァンス地方のコート・ド・プロヴァンスCôtes de Provence、ロワール地方のロゼ・ダンジュRosé d’Anjou、アメリカのホワイト・ジンファンデルWhite Zinfandelなどがあります。後者2銘柄はやや甘口ですが、近年は辛口タイプのロゼが流行っているようです。
 
私も個人的にロゼワインが大好きで、年間を通じてよく飲みます。今までに、ロゼワインを相手にしないワイン愛好家に飲ませてあげたいような感動的なロゼワインに出会いました。
 
強烈に記憶に残っている順にご紹介すると、スペイン、プリオラートPrioratのロゼが筆頭に挙がります。プリオラートはスペインの高級ワイン産地で、濃厚な赤ワインで知られています。実は白ワインもロゼワインも造られているのですが、ごく少量のため、日本で見かけることはほとんどありません。私は現地で飲んだのですが、しっかりとした色調といい、口に含んだ時に感じられる渋みといい、まるで赤ワインのようでした!
Prioratロゼ - コピー プリオラートのラベル 
 
逆にエレガントで上質なロゼと言えば、ピノ・ノワールを原料としたロゼでしょう。ブルゴーニュ地方のマルサネイ・ロゼMarssanay Rosé や、シャンパーニュ地方のロゼ・デ・リセイRosé des Riceysなどは素晴らしい品質です。
Marsannay-la-Cote マルサネイ村のぶどう畑 
他にはプロヴァンス地方のパレットPalette、ボルドー地方のクレレClairet、ルシヨン地方のコリウールCollioure、イタリアのモンテプルチアーノ・ダブルルッツォ・チェラスオーロMontepulciano d’Abruzzo Cerasuolo、オーストリアのシルヒャーSchilcher、オーストラリアのカスターニャCastagnaなどなど...

きりがありません!上に挙げたのはごく一部です。 

世界には素晴らしいロゼワインがたくさんあります。残念ながら日本では手にすることが難しいものもありますが、機会があれば講座で紹介していきたいと思っております。 

この春、ロゼワインを持って花見をしてみてはいかがでしょうか? 

Clos Yでは、4月11日のレストラン講座でテーマを「春とロゼ」とし、フランスの上質ロゼワインと食事を合わせる企画をしております。エレガント系から濃厚系まで、上質なロゼワインをお楽しみいただけます。 

 

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ワインコラム 第44回 ワイン産地で見つけた面白い看板の話

毎度とりとめもないことを書いているこのコラムをいつも読んでくださっている方、ありがとうございます!

今回は、ワインとは関係の無い(?)、ワイン産地で見つけた面白い看板をご紹介いたします。

恐らく今までで一番くだらない内容になりますが...

少しでも笑っていただければと思います。

まずは初級編。イタリアで、シチリア島のパレルモPalermoへ電車で移動しようとしていたときのことです。ホームで確認のため掲示板を見てみると...

Palermoへ
看板の文字がおかしいですね!掲示板が壊れていたのか、細かいことにこだわらないイタリア気質か...危うく別の世界に連れて行かれるところでした(笑)

さて、続きまして、オーストラリアの広い公園で見つけた看板です。

PICT0184
日没から日の出までの間、アルコール禁止!よほど夜中に酔って騒いだ人がいたのでしょうね。この看板が立って以来、この公園は昼間からアルコールを飲む人であふれたそうです。←(うそです...)

続きまして、またまたイタリアから、シュールな看板です。
Montepulciano5
「?」マークは私が書いたのではありませんよ!ホテルはこちら、という看板だと思うのですが、確かに、ベッドはわかりますが、傍らにある謎のボックスの意味がわかりませんね...

では最後に、とあるブルゴーニュのドメーヌを訪問した時に見つけたフランスらしいユーモアあふれるものです。

D. Hudelot-Baillet - コピー

訳しますと、「このメゾンは、両親を連れ添った70歳のお客さまにしか掛売りをしません。」

...

そんな客いないって!!

素直に掛売りはしません、と言えばいいのに...

そんなフランスが好きです(笑)

ワインとともに楽しい生活を!

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ワインコラム 第43回 ジュラの話 その2

コラム第29回で、ジュラJuraについて書きました。

個性的な、注目に値する産地です。

今回は、実際に訪問した時のお話です。

ワイン産地としてのジュラ地方は、アルボワArboisの町を中心に、南北に細長く広がっています。

アルボワは小さな町ですが、この地方の大手ワイン生産者やミシュラン・ガイド2つ星のレストラン、ジャン・ポール・ジュネJean-Paul Jeunetなどがあります。特にこの町の名を有名にしているのは、ルイ・パストゥールLouis Pasteur(生化学者、細菌学者で、発酵のメカニズムを解明した)が暮らしたこと、そして今日ではその記念館があることでしょう。

Arbois2008 アルボワの教会

今回ご紹介するドメーヌ・ジャック・ピュファネイDomaine Jacques Puffeneyを私が訪問したのは2005年の11月でした。フランスで評価の高いこの造り手は、アルボワの町のすぐ隣村にあります。

案内してくれたのは一見怖そうなひげもじゃのムッシュ。しかし私の質問に丁寧に答えてくれて、いろいろな種類のワインをテイスティングさせてくれました。

ここで珍しいワインを見つけました!ムロン・キュー・ルージュMelon Queue Rougeというもので、梗の部分が赤い、小さな房の白ぶどう品種です。ワインは熟した黄色い果実のニュアンスがあり、アルザスAlsaceのピノ・グリPinot Grisが連想させられました。

Arbois Melon-Queue-Rouge - コピー

しかし、なんと言っても圧巻は黄ワインVin Jauneです。サヴァニャンSavagninというこの地独自のぶどう品種を発酵させ、6年以上も樽で熟成させたこの地の特産品です。偉大なワインの要素として、長い余韻が必要不可欠ですが、このワインの余韻は強く、果てることなく続くかと思われるようなものでした。

帰り際にムロン・キュー・ルージュを買おうとしたのですが、ムッシュは「お金はいらない!」とのこと。風貌は怖い(失礼!)けど心は優しいかたでした。お金は払いました(笑)。

ジュラ地方の白ワインは、全体的に共通した個性があるようです。スペインのシェリーにあるような、ナッツのような香り、ややしっかりした酸味です。このような風味は、料理と合わせると実に楽しいものです。ジュラ地方では料理にジュラ地方のワインを使い、ますます食事とワインの相性を高めています。

少しもったいないかもしれませんが、例えば鶏肉の煮込みなどに少しジュラの白ワインを入れるだけで、料理の風味がぐっと深くなります。一度試してみてはいかがでしょうか?

Clos Yでは、心優しきジャック・ピュファネイのなかなか見つけることができないアルボワ・黄ワインを3月7日のレストラン講座で登場させます!興味のある方はご連絡ください。

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ワインコラム 第42回 ドイツの話 美食編

前回に引き続き、ドイツのお話です。
 
今回はドイツの食についてご紹介いたします。

ドイツ料理と聞いて、何を思い浮かべますか?
 

ザワークラウトSauerkraut(フランスではシュークルートといいますね。厳密には酸っぱいキャベツの漬け物のことを指しますが、豚肉を伴った一皿も意味します。)、アイスバインEisbein(塩漬けの豚すね肉を、野菜やスパイスとともに煮込んだもの。)、ソーセージ...

 

豚肉料理が多いのではないでしょうか?

 

実際、ドイツではハムやサラミなどの豚肉加工品がとても充実していました。冷涼な土地なので、長い冬を乗り切るための保存食として、このような加工品が発達したことが考えられます。

 

もちろん、豚肉だけではなく、ドイツには他にもおいしい食材がたくさんあります。

 

2010年の1月に私が訪れたのはドイツ南部。海から離れた土地の魚料理は川魚が中心になります。フェルヒェンFelchenと呼ばれるマスの一種が良く見られますが、調理法はムニエルにするのが一般的なようです。あとはサーモンなどがありますが、魚料理はそれほど多くないようです。

 

やはり肉料理が中心になります。前述の豚肉の他には、牛肉、仔牛肉、鴨、ジビエなど...

 

特に仔牛肉は、「シュニッツェルSchnitzel」と呼ばれる、肉を叩いて薄く伸ばしたカツレツとして、至る所で食べられます。一般的にはできたての熱々のところにレモンを絞って食べますが、私がラインガウ地方のワインの中心地リューデスハイムRüdesheim村で立ち寄ったレストランでは、リースリングのクリーム・ソースがかかっていました。

リューデスハイム夜4

確かにワインの香りがして、程よい酸味があり、リースリング・ワインとよく合いました!

 

あとは、野菜で挙げるとホワイト・アスパラガス。フランス人は春の味覚として愛してやみませんが、ドイツ人も大好きのようです。日本でも、もう出回っていますね。この野菜独特の甘みと苦み、1年に1度は経験したいですね!

 

あと、一般的な料理としてスープが挙げられます。やはり寒い国なので、冬は暖かいスープが欲しくなります。粗引きの小麦粉でできた団子や、肉団子など、団子が入ったスープが代表的です。他には、クレープを麺のように細長く切ったものが入っているのも、この国では一般的なもののようです。

 

他にもチーズやきのこ、じゃがいも料理など、おいしいものがたくさんあります。ソーセージひとつとっても、地方ごとに特徴がありますので、土地のワインと土地の料理を合わせるという楽しみは、ドイツでも満喫できました!

ミュンヘンワイン居酒屋2

レバーを使ったソーセージの一種、レバーケーゼLeberkäse。上には目玉焼きが乗っています。 

 

日本ではあまりドイツ料理店を見かけませんね。Clos Yでは2月18日のレストラン講座で、ドイツワインとドイツ風料理をお楽しみいただけるよう企画しております。ご興味のある方はご連絡ください。vinclosy@aol.com

 

ドイツワインは普段あまり飲まれないという方、この週末にでも是非飲んでみてください。凛とした美しい酸味は、世界でも稀有なドイツワインの魅力だと思います。ワインの楽しみの幅が広がりますよ!

 

 

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ワインコラム 第41回 ドイツ訪問の話 ラインガウ編

2010年1月8日から、ドイツ、チェコ、オーストリアを巡る旅に行ってきました。

 

帰ってきたばかり(何やら眠いのは時差のせいでしょうか。一年中眠い気もしますが...)、熱々の情報をお届けいたします!

 

ドイツはミュンヘンMünchenに到着しました。この町はワイン、ではなくビールで有名ですね。私の兄がこの町に住んでいるので会って来ました。

 

ミュンヘンから、ドイツが誇る極上ワイン産地のラインガウRheingauまで電車で約5時間。早朝に出発した私はお昼頃ラインガウのハッテンハイムHattenheimに到着しました。

Hattenheim 

ここから西へ、雪が降る中、地図を片手に畑を歩いて見ていきます。

 

辺りは雪、雪、雪...

Hattenheim4 

千葉県出身の私は雪道を歩くのに慣れていません。できればこの季節に来たくなかったです...

 

さて、ドイツワインの畑の名前は、通常その畑が位置する村の名前の後にラベル上で表示されます。

例えば、キードリッヒ村にあるグレーフェンベルク畑は、キードリッヒャー・グレーフェンベルクKierdicher Gräfenberg、となります。

 

数多あるドイツの畑ですが、特に評価の高いわずか5つの畑は、村の名前を伴わずに畑の名前をラベルに表示することができます。その5つの畑をまとめてオルツタイルラーゲOrtsteillageと言います。

 

ドイツ全体で5つしかないオルツタイルラーゲの、なんと4つがこのラインガウ地区にあります(もうひとつはモーゼルMosel地区にあります。)

 

この事実だけでも、ラインガウがいかに優れたワイン産地かがわかりますね!

 

以下、4つのオルツタイルラーゲです。

 

シュタインベルクSteinberg (石の山、という意味)

Hattenheim2 - コピー 

シュロス・ライヒャルツハウゼンSchloss Reichartshausen (ライヒャルツハウゼン城、という意味)

Oestriche Schloss Reicharshausen3 

シュロス・フォルラーツSchloss Vollads (フォルラーツ城、という意味)

Schloss Vollrads 2 - コピー 

シュロス・ヨハニスベルクSchloss Johannisberg (ヨハニスベルク城、という意味)

Schloss Johanisberg5 

全て表土は雪で覆われていますが、これらの畑が高く評価されてきたのは一目瞭然でわかります。どれも(シュロス・ライヒャルツハウゼンは除く)急な斜面を持っていて、日当たりに恵まれています。

 

参考までに、残る一つのオルツタイルラーゲは、モーゼル地区のシャルツホーフベルクScharzhofberg (シャルツホーフの山、という意味)です。

 

さて、ハッテンハイムから10km、リューデスハイムRüdesheim村にやってきました。今夜はこの村のホテルに宿泊します。

 

ラインガウには銘醸畑が多くありますが、その極上のぶどうを素晴らしいワインに変える偉大な造り手さんも各村に居を構えています。このリューデスハイム村で、私はゲオルグ・ブロイヤーGeorg Breuerを訪問しました。

Georg Breuer 

評価の高い、素晴らしい造り手さんです。

 

ここでは13種類のワインをテイスティングさせていただきました。特に印象に残ったものを挙げてみると...

 

ジューJeux 2008

シュペートブルグンダーSpätburgunder (Pinot Nor)の白ワイン!酸味がしっかりしていて、ミネラル感が強めに感じられる。品種としての個性があまり感じられず、ピノ・ブランPinot Blancのようにも感じられる。

 

グラウアー・ブルグンダーGrauer Burgunder 2007

ピノ・グリPinot Grisをドイツではこう言います。一部樽熟成を施したこのワインは厚みがあり、果実味がしっかりしている。

 

ベルク・ローゼンエッグ・アウスレーゼ・ゴールドカプセルBerg Roseneck Auslese GoldKapsel 2007

濃密な甘口。凝縮された甘味と同時にやはり凝縮された素晴らしい酸味が感じられる。

 

改めて、ドイツワイン唯一無二の個性に感動しました。地球が温暖化に向かう現在、冷涼な気候のもとで育ったぶどうによる、澄んだきりりとした酸味はかけがえのないものです。

 

テイスティングの後、セラーを見せてもらいました。ゲオルグ・ブロイヤーは一部のワインをフレンチ・オークのバリック(225リットル容量の小樽)で熟成させています。

Georg Breuer2 

丁寧に説明してくださった、ゲオルグ・ブロイヤーに感謝です。

 

暑い夏に良く冷やしたドイツワインは最高ですが、凛としたドイツの辛口白ワインは和食に良く合うと思います。少し甘味のあるタイプのドイツワインは、肉じゃがなど砂糖を使った家庭料理に合うと思います。良かったら試してみてくださいね!

 

 

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ワインコラム 第40回 ボルドー地方の話 ポイヤック編 その1

世界中の有名なワイン産地には、その地を代表する牽引車的な村(もしくは地域)があります。ブルゴーニュでいえばヴォーヌ・ロマネ村Vosne-Romanée、シャンパーニュでいえばコート・デ・ブランのメニル・シュール・オジェ村Le Mesnil sur Oger、カリフォルニアでいえばナパ・ヴァレーNapa Valley...
 
ボルドー地方でそれに当たるのがポイヤックPauillacです。ジロンド河のすぐそばに位置するこの町は、世界中で人気のある黒ぶどう品種カベルネ・ソーヴィニヨンの聖地と言うべきで、上質な赤ワインを産出するシャトーが集中しています。1855年のメドックの格付けで、メドック地区に4つしかない第1級シャトーのうち3つ(うち1つは1973年に1級に昇格)がこの町にあることからも、この町のワイン造りのポテンシャルがうかがえるというものです。
 
さて、まずは町を見てみましょう。ポイヤックは、大きな町がないメドック地区で最も重要な、比較的大きな町です。河沿いにはホテルやレストラン、土産物屋などが立ち並び、街中にはスーパーマーケットや銀行など、日常生活に不可欠な様々な施設があります。ミシュランガイドで2つ星の評価を得ている、ボルドー地方を代表するレストランであるシャトー・コルディアン・バージュChâteau Cordeillan Bagesもこの町にあります。
 
肝心のワインですが、ポイヤックの名で流通させることができるワインは赤ワインのみです。カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カベルネ・フランなどのブレンドですが、メドックの他の村と比べてカベルネ・ソーヴィニヨンの比率が高いのが特徴です。そのためワインはがっしりとした骨格を持ち、重厚で、長期熟成に耐えます。
Lynch Bages 砂利交じりの、水はけの良い土壌。
  
この町の、ワイン以外の特産品に、ポイヤックの仔羊Agneau de Pauillacがあります。ミルクの香りのする、ジューシーで柔らかなこの肉との相性は抜群です!
  
この町のワインがこれほど有名な理由として、前述の1855年の格付けが大きな要因として挙げられると思います。この格付けはパリ万博に際して、ナポレオン3世がボルドー商工会議所に命じて作らせたもので、メドック地区の60シャトー(とグラーヴ地区の1シャトー)が1級から5級に格付けされました。今日約10,000あると言われているボルドー地方のシャトーの中で、例え5級でもこの格付けに入るというのは大変栄誉なことです。その60のうち、ポイヤックは1級に3つ、2級に2つ、4級に1つ、5級に12つ、合計18のシャトーを有しています。5級の中には比較的軽いものもありますが、それでも世界水準からすれば重厚で、熟成させる価値のあるものです。
 
近年ではワイン造りの技術が向上し、長期熟成タイプのワインでも若い状態でおいしく飲めるようになっています。私は個人的にはボルドーの赤ワインは比較的若い状態で飲むのが好きなのですが、もちろん熟成によって現れる風味も素晴らしいものがあります。
  
「ワインの飲みごろ」は、造り手やソムリエではなく、消費者が自分の好みを把握したうえで決める時代になったのかもしれませんね。
 
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ワインコラム 第39回 イタリア カンパニア州の話

フランスと並ぶワイン大国イタリア。
バローロBaroloキアンティChiantiに代表されるように、イタリアワインの銘醸地といえばピエモンテ州Piemonteトスカーナ州Toscanaがまず挙げられますね。

ですが、それら2州より古い歴史を持ち、他ではあまり見られない地場品種から個性的なワインを生み出すカンパニア州Campaniaを忘れてはいけません! 

まずはカンパニア州の位置を確認しましょう。イタリアの首都ローマを擁するラツィオ州の南隣りにあり、州都はナポリNapoliです。海からは新鮮な魚介類が、陸からは水牛のモッツァレラチーズMozzarella di Bufala Campaniaがもたらされ、美食の地としても注目を集めています。ピッツァ発祥の地でもありますね。 

そんな美食の地に、美味しいワインが無いわけがありません。そのワイン造りの歴史が紀元前まで遡ることができると言われる、伝統のあるワイン産地です。 

Campania5 ヴェスヴィオ火山

ぶどう畑は主に内陸の山間部に点在しています。イタリアの他州が国際的に人気のあるぶどう品種に夢中になった近年でも伝統的な地場品種を守り続け、そのために今日では個性的なワイン産地として世界の注目を集めています。 

代表的なぶどう品種として、アリアニコAglianicoグレコGrecoフィアーノFianoなどがあります。特に黒ぶどうのアリアニコはイタリア3大品種(残り2つはネッビオーロNebbioloサンジョヴェーゼSangiovese)のひとつとされるほど、優れた赤ワインを生み出す可能性を秘めた偉大なぶどうです。アリアニコによる代表的な銘柄は、南イタリアを代表する名酒タウラジTaurasiです。

Taurasi タウラジのぶどう畑

同名の小村付近に広がるぶどう畑から、果実味、タンニンに富む長期熟成タイプの赤ワインが造られています。ワインによっては若いうちに飲むと口の中がぎすぎすするほど強い酒質を持ちますが、熟成させると偉大なワインにしか表現されない気品、複雑味、長い余韻を見せてくれます。優れたタウラジはまさにイタリアを代表するワインのひとつです。 

グレコとフィアーノは2つとも白ぶどうです。両者とも、若い状態ではフローラルで果実味豊かな白ワインです。グレコのほうが男性的、フィアーノのほうが気品があって女性的と表現されることがあります。 

ひとつ、私が残念に思うのが、グレコもフィアーノもあまりに若い状態で飲まれることが多いことです。どちらも、優れた個性的なワインだと思うのですが、そのほとんどが収穫後2年程度で飲まれているようです。できればさらに数年寝かせて、熟成により出てくるブーケやテロワールの妙味を楽しみたいワインだと思います。 

さて、この州を語るのに外すことのできない生産者がいます。マストロベラルディーノMastroberardinoです。

Mastroberardino

同社こそ、ともすれば国際品種に飲まれ消えてしまう地場品種を大切に守り、育ててきた尊敬すべき造り手で、カンパニア州の名声をイタリア内外に知らしめた立役者です。 

私は2008年の秋に訪問させていただきましたがイタリアにしては珍しく(?!)夜遅くまで仕事をしている様子がうかがえました。実際、そのワインの品質は高く評価されています。 

カベルネやシャルドネも良いですが、ときには限定された土地でしか栽培されていない優れたぶどう品種に目を向けてみるのもいいですね。 

 

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1月19日のレストラン講座はカンパニア州をテーマに、マストロベラルディーノのワインもお楽しみ頂けます。締切間近ですのでご興味のある方はお早めにご連絡ください。

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ワインコラム 第38回 年末、年始の過ごし方の話

いよいよ2009年も暮れていきますね。
 
日本における年末、年始の過ごし方といえば、大晦日は家でテレビを見て、年始は初詣をして、お節を食べて...といったところでしょうか。

国が異なれば文化、慣習が異なります。フランスでの年末、年始の過ごし方をご紹介しましょう。 

まず、年末ですが、レヴェイヨンRéveillonという深夜の食事をとります。普段カジュアルな街中のカフェ、ビストロ、レストランなどが、ここぞとばかりに高価なメニューを打ち出しますが、ほぼ満席になります。人々は豪華なディナーを取りながら、年越しをする、というのが一つの定番のようです。 

日付が変わり、年が変わるときにはあちらこちらで花火があがります。大きな町だと、少し危険かも、と思うくらいの状況です。 

年始はというと、深夜に遊び疲れたのか、静かな時間が流れます。

初日の出、初詣と年始から忙しい日本人と比べると、力を入れるポイントが逆のようで面白いですね。

さて、私たちが食べるお節料理ですが、みなさまお酒は何を飲みますか?

ビール、日本酒と様々だと思いますが、ワインを合わせる場合にお勧めの銘柄を参考までにご紹介いたします。

まずは、シャンパーニュChampagneです。昇り続ける泡が新年の気分を盛り上げてくれますが、お節とのマリアージュを考えても、絶好のワインです。お節は根菜類を多く用いますが、シャンパーニュの熟成感と根菜類の土っぽさが素敵に寄り添います。また、お節料理の甘い味付けとも素直に楽しむことができます。

もうひとつ、意外かもしれませんが、ソーテルヌSauternesとお節の相性も良いと思います。前述したようにやや甘めの味付けが多いお節料理と甘いソーテルヌは良い相性を見せます。ただ、甘口ならば何でも良いかといえばそうではなく、世界にはたくさんの甘口ワインがありますが、ソーテルヌは甘味だけではなくアルコールのボリューム感とわずかな苦み、味わいの幅がありますので、様々な食材を用いるお節料理と合うのではないかと思っています。ひとつ、魚卵とは厳しいかな、と思いますが...(苦笑)

そのほか、ある程度熟成したブルゴーニュBourgogneシャルドネChardonnay、ある程度の濃縮感のあるボルドーBordeauxの赤ワインとも楽しめると思います。

上記したワインとお節のマリアージュは、あくまでも私個人の意見なので、みなさま思い思いにお節とワインを合わせてみてください。意外な組み合わせが見つかるかもしれませんよ!
 

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ワインコラム 第37回 ワイン産地訪問の話 ポルト編

もうすぐクリスマス。寒い日が続き、飲みたいワインも夏に欲しかったすっきりした白ワインから、重厚な赤ワインへと変わってきているのではないでしょうか?
 
そんな季節にぴったりの、体も心もほっとするワインのお話です。

 

今回ご紹介するのは、ポルトガルが世界に誇るポート・ワイン(英語でPort Wine、ポルトガル語でヴィーニョ・ド・ポルト Vinho do Porto)です。

 

ポート・ワイン。飲まれたことがある方も多いかと思うのですが、実際にポート・ワインとはどのようなワインか正確に説明するのは難しいですね。食前に少しだけ飲むアペリティフ向きの軽めのタイプが多いですが、ヴィンテージ・ポートVintage Portoは世界中のワインの中でもトップクラスの極上ワインです。

 

さて、このポート・ワインですが、いろいろな意味で特殊なワインです。

 

まずはその製法からお話しましょう。収穫されたぶどうは直ちに発酵されるのですが、通常のワインと異なり、ポート・ワインの場合はアルコール発酵中のぶどう果汁にアルコール度数77度のブランデーを添加し、アルコール発酵を止めてしまいます。すると、ぶどう果汁に含まれる糖分がアルコール発酵の作用によって失われることなくワインの中に残り、甘口ワインとなります。

 

ポート・ワインは甘いものが多いですが、あの甘味はぶどう果汁由来の天然の甘味ということですね。

 

アルコール発酵に関して、もうひとつお話があります。収穫されたぶどうから果汁を取り出すために、世界規模で一般的には機械を使って処理をします。昔ながらに人間が足でぶどうをつぶす、なんてことはとうに昔話になってしまっているのですが、ポート・ワイン、それも極上のものに限り、今日でも人間が足でぶどうを踏むということがあります。大変な重労働で、人件費もかかるのですが、優しくぶどうをつぶすことによって質の良い果汁が得られるようです。ポート・ワインの中でも、ほんとうに、ごくごく一部の例外的なお話ですけれども。

 

さて、もうひとつのポート・ワインの特徴は、ぶどう栽培地域とワインを熟成させる土地が異なることです。一般的にはぶどうが栽培されている場所に醸造所があり、そこで醸造されたワインをその場で熟成させていきます。ところが、ポート・ワインの場合、ぶどう畑が広がるのはドウロ(Douro)川周辺の険しい土地です。この土地の風景は圧巻で、殺伐とした乾いた風景の中、急斜面に開かれたテラス状のぶどう畑が広がっています。何でも、硬い岩盤はダイナマイトで爆発させて開墾していくようです...!

Douro Douro畑2 

しかし、ワインの熟成は海沿いの大きな町、ポルトPorto市対岸のガイア地区(Vila Nova de Gaia)で行われなければなりません。このようなことが定められているのは世界的にも珍しいことです。

Porto遠景2 ポルトの街並み。

さて、肝心のポート・ワインですが、さまざまなタイプがあります。生産量の多いルビーRuby、熟成期間の長いトウニーTawny、白いホワイト・ポートWhite Port、そしてなんといってもヴィンテージ・ポートVintage Portです。

 

ルビー・ポートはその名の通り鮮やかなルビー色で、熟成期間が短く、フルーティな甘味を気軽に楽しめるポートです。恐らくポート・ワインを口にされたことがある方の、大部分がこのルビー・ポートを召し上がられたのではないでしょうか。

 

しかし、ポート・ワインの神髄はこの先にあります。まずはトウニー。良質なぶどうを原料としたポートを、10年、20年、ときにはそれ以上の歳月を樽で熟成させたものです。結果ワインは褐色を帯び、キャラメルやシガー、ヴァニラやスパイスなどの複雑な香りを帯び、余韻の長いワインになります。

Porto大樽 熟成用の、使い込まれた大樽。

そして、ポートの王様はヴィンテージ・ポートです。優れた年にのみ造られる、その名の通りヴィンテージの入ったポート・ワイン(逆に、ルビーやトウニーはヴィンテージが入っていません。)で、樽熟成はあまり長い時間取られずに瓶詰めされます。若い状態で飲むと黒いような濃厚な色調で、香りも濃厚、凝縮された甘味があり、同時にしっかりとしたタンニンが感じられるスーパー甘口赤ワインです。最低10年、できれば20年は寝かせてから飲みたいワインです。すると、瓶熟成により風味がまろやかかつ複雑になり、世界で最も偉大なワインのひとつの座を占めてきます。

 

ひとつ気をつけたいのは、ヴィンテージ・ポートは熟成とともに大量の澱を生じることです。この澱が瓶内に舞い、グラスに入ってしまうとせっかくの高貴なワインが台無しになってしまいます。このようなワインこそ、ソムリエが必要かもしれませんね。

 

疲れた時、いいことがあった時、記念日、いつ飲んでも素敵なポート・ワインですが、やはり冬が一番楽しめるのではないでしょうか。クリスマスに、フォワ・グラのポワレと合わせるもよし、ガトー・ショコラとの相性も抜群です!

 

もちろん、優れたヴィンテージ・ポートは単体でじっくり向き合うのも素敵ですね。

 

年末・年始をポートとともにじっくり過ごしてみてはいかがでしょうか?

 

Clos Yでは、2010年1月3日のレストラン講座極上ワインと料理のマリアージュでヴィンテージ・ポートをご用意しております。まだお席に空きがございますので、ご興味のある方は是非いらしてください。

 

 

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ワインコラム 第36回 美食の話 ジビエ編

もうすぐクリスマス。本格的な冬の季節ですね。 

ガストロノミーの世界では、この季節、ジビエGibierから目が離せません。

ジビエとは、鹿、猪、鴨など、野生動物のお肉のことを指します。 

野生の動物を狩るわけですが、狩猟の時期は限定されています。その時期が、ちょうど秋から冬に当たるわけですね。なのでこの季節にレストランに行くと、選べるお肉の種類が多くなります。 

それは、日本でも、フランスでも同じです。 

今回は、フランス東部、ジュラJura地方、アルボワArboisの町のレストランをご紹介いたします。 

アルボワは、小さいながらもワイン産地ジュラ地方の中心となる町で、ミシュラン2つ星のジャン・ポール・ジュネJean-Paul Jeunetなどの優れたレストランがあります。おいしいワインと良質な郷土料理を味わえる町です。 

Arbois2008 アルボワの教会

今回ご紹介するのは、ガイドに載っていないものの、地元の人たちで賑わうカフェ・レストラン ラ・キュイザンスLa Cuisanceです。普段から、この地方特産のヴァン・ジョーヌ(黄ワイン)を使った鶏のクリーム・ソースなどのおいしい料理を提供していますが、ジビエの季節になるとその名も猟師のメニューMenu Chasseurが出てきます。 

このコースは5皿で構成されていました。 

まずは前菜。鹿のテリーヌTerrine de Chevreuilです。フランスの一般的なテリーヌは主に豚肉で作られますが、それに比べやはり野性味が感じられます。前菜からテンションが上がります! 

続いて、Croût Folestière。ガーリック・トーストに、クリームを使ったきのこのソースをかけた温かい一皿です。地元で採れた新鮮なきのこは香りも歯触りも良く、ジュラ地方の森の豊かさを感じさせてくれます。 

メインは、猪のシヴェCivet de Sanglier。シヴェとは、食材の血も使った煮込み料理で、猪や野兎などに用いられる調理法です。食材を最大限に生かしたこの料理は、濃厚な風味を満喫できますが、場合によっては風味が強すぎてしまうことがあります。それを緩和するためにも、赤い果実をソースに使うことが多いですが、この料理もグロゼイユ(赤スグリ。酸味の強い小さな赤い果実。)が入っていました。臭みなど全くなく、限られたこの冬の味覚を満喫させていただきました。 

コースはこの後、地元のチーズ(コンテComtéモルビエMorbierなど好きな種類を、好きなだけ!)とデザート、コーヒーで締めくくられます。 

合わせたワインは、もちろん地元のワインです。アルボワ・トルソーArbois Trousseau 2002でした。やや熟成感のあるこの赤ワインは、強いジビエの風味に負けることなく、お互いを引き立て合う絶妙なマリアージュを見せてくれました。 

いやあ、ジビエって、本当にいいものですね! 

ジビエは今、日本でもいろいろな種類を楽しむことができます。だいたい2月くらいまでありますので、興味のある方は是非試してみてください。合わせるワインはお好みですが、しっかりしたタイプの赤ワイン(ローヌ、ボルドー、ブルゴーニュのグラン・クリュなど)、それも若いものより熟成感のあるもののほうが良いでしょう。 

それと、ジビエは野生動物を狩ってきたものなので、場合によっては散弾(散弾銃に使われる鉛玉。米粒より小さい。)が残っている場合があります。仕込みの時点で料理人ができる限り取り除くのですが、小さい玉が肉の中に入ってしまっているとどうしても取り除ききれないことがあります。それを承知の上、注意してお召し上がりくださいね。 

私も過去に、口にしたジビエの肉から散弾が出てきたことがあります。これは「当たり」とされ、その弾を財布に入れておくとお金が貯まると言われていますが...私はまだその効果が出ていません。来年に期待しています(笑)。 

 

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