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ワインコラム 第66回 2010年 感動したワインの話
- 2010-12-26 (日)
- ワインコラム
今年1年、どのような年でしたでしょうか?
ワイン好きな方は、年末になると今年どのようなワインを飲んできたか振り返ることもあるでしょう。
今回のコラムでは、私が今年飲んできたワインの中で、強く印象に残っているワインについて書きたいと思います。
まずは、最近ソムリエの友人に飲ませて頂いた、蒼龍葡萄酒さんの甲斐ブラン2004です。甲斐ブランとはぶどう品種の名前で、甲州Koshuとピノ・ブランPinot Blancの交配種です。ブラインドで飲ませていただいたのですが、印象は樽熟成を施した甲州、もしくはロワールのやや熟成したシュナン・ブランChenin Blanc、といったものでした。非常にミネラル感が強く、熟成から来る複雑味があり、素晴らしいワインでした!
続きまして、未体験の品種に興味を持って購入し試飲した、ドメーヌ・ジャッキー・プレイ・エ・フィスDomaine Jacky Preys et Filsのキュヴェ・ドゥ・フィエ・グリ・ヴィエイユ・ヴィーニュCuvée de Fié Gris Vieille Vigne2006です。アペラシオンはトゥーレーヌTouraineです。フィエ・グリという、栽培面積が非常に少ない、稀なぶどう品種のワインです。熟したあんず、黄桃、マンゴーなどの甘い果実の香りとフレッシュなハーブの香りが同居しています。グラスを回すと石灰のようなミネラル感も出てきます。十分な果実味があり、ややしっかりした酸味、ボリュームがある、個性的なワインでした!
続いて、1月に訪問した、オーストリーのヴィーニンガーWieningerのピノ・ノワール・グランド・セレクトPinot Noir Grand Selectです。ヴィーニンガーはウィーンでワイン造りを行っている造り手さんです。ウィーンは世界的に有名な素敵な町ですから、ワインとは関係なく訪れる価値があると思うのですが、地球上の首都で唯一、商業ベースでワイン造りを行っています。ヴィーニンガーはウィーンでトップの造り手であると断言できると思います。今回はピノ・ノワールを推しますが、白、甘口も世界的に見て非常に上質なものでした。さて、そのピノ・ノワールは、極上のブルゴーニュに勝るとも劣らない出来。ウィーンのワイン産地としての可能性と、ヴィーニンガー氏の人柄、そして努力と才能に大変感銘を受けました。
ヴィーニンガーのオフィスの土壌サンプル。
次に、ポルトガルから、信じがたいコストパフォーマンスを持つワインをご紹介いたします。世界で広く親しまれているマテウスMateusのロゼ。息の長い、良く売れているワインですから、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。ですが、私がご紹介したいのは、マテウスのワインですが、ロゼではなく、白なのです。マテウスのロゼは微かに発泡性があり、甘味もあり、誰にでも好かれるスタイルで、世界中で売れているのがわかるなあ、というスタイルのワインなのですが、白は異なります。やはり僅かに発泡性を帯びていますが、香りは柑橘類のゼスト、ゴム、石油など、リースリングRieslingを連想させます。味わいでは、果実味はそれほど強くないのですがやや甘味が感じられます。酸味はややしっかりしていて、全体的にさっぱりしていて、非常にバランスの良いワインです。万人受けするロゼと違い、白はミネラリーでシリアスなワインだと思いました。この品質のワインが1000円以下という事実が信じがたいです!
他にもたくさん素晴らしいワインと出会った2010年でしたが、最後にチンクエ・テッレCinque Terreをご紹介させていただきます。チンクエ・テッレはイタリア、リグーリアLiguria州にあり、世界遺産に登録されている土地で造られるワインです。海に面した絶壁に、張り付くようにぶどう畑が拓かれている光景には驚かされます。
Riomaggioreの風景
ボスコBoscoなど複数の地場品種をブレンドして造られます。土地が限られていますので、数えるほどの生産者しかいません。今回ご紹介したいのは、リオマッジョーレRiomaggiore協同組合のワインです。今年飲んだ2007年ものは、熟成したシャンパーニュから感じられるようなロースト香がややしっかりと立ち上ってきます。レモンのゼスト、完熟していない梨、ミネラルの香り。回すとリースリングのような香りが出てきます。十分な果実味、ややしっかりした酸味があります。ボリュームは中程度で、微かにタンニンが感じられます。余韻は、しっかりしたミネラルがロースト香を伴ってやや長く続いていきます。特徴として、樽熟成をしていないにもかかわらず、樽熟成に由来するような最初のロースト香に驚かされます。全体の印象としては樽熟成をした温暖な年のシャブリや、やはり樽熟成をしたロワールのシュナン・ブランという印象です。
今年も素晴らしいワインに出会えることができました。来年も、みなさまが素晴らしいワインに出会えますように。
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ワインコラム 第65回 アペラシオンの話 ブルゴーニュ・グラン・オーディネール
- 2010-12-12 (日)
- ワインコラム
今回ご紹介する、ブルゴーニュ・グラン・オーディネールBourgogne Grand Ordinaireというアペラシオンは、あまりその実態を知られていないもののひとつでしょう。
名前から想像できるように、ブルゴーニュ地方のアペラシオンです。
ブルゴーニュ地方には、ブルゴーニュ地方全体をカバーするブルゴーニュBourgogneというA.O.C.があります。ブルゴーニュ・グラン・オーディネールはブルゴーニュA.O.C.と同じく、ブルゴーニュ地方全体をカバーしています。
では、ブルゴーニュA.O.C.とブルゴーニュ・グラン・オーディネールの違いはどこにあるのでしょうか?
詳細を見てみましょう。
ブルゴーニュA.O.C.については、赤ワインとロゼワインについて、ピノPinot、ガメイGamay、セザールCésar、トレソToressotが使用品種として認められています。白ワインに関してはシャルドネChardonnayが認められています。
ブルゴーニュ・グラン・オーディネールには、それに加えて白ぶどうのアリゴテAligoté、ムロン・ド・ブルゴーニュMelon de Bourgogne、サシイSacyの使用が認められています。これがまず1つ目の違いです。
もうひとつの違いは、アルコール度数の定義です。
ブルゴーニュA.O.C.については、最低アルコール度数が赤とロゼは10度、白は10.5度、最高アルコール度数は赤とロゼは13度、白は13.5度と規定されていますが、ブルゴーニュ・グラン・オーディネールはそれぞれ1度ずつ低く設定されています。
つまり、ブルゴーニュ・グラン・オーディネールは、ブルゴーニュA.O.C.より規定が緩いわけですね。実際、ブルゴーニュA.O.C.を格下げしてブルゴーニュ・グラン・オーディネールを名乗ることができます。
日本で見かけることはあまりないと思いますが、ブルゴーニュ地方ではスーパーマーケットなどでブルゴーニュ地方のワインとしては一番低い値付けがされていることがあります。
このアペラシオンの面白いところとしては、他のアペラシオンで認められていないぶどう品種(ムロン・ド・ブルゴーニュなど)が使用できることがあります。さらに、優れた造り手さんがこのアペラシオンを用いる場合、価格の割に優れた内容のワインであることが多い、ということも特徴として挙げられるでしょう。
ブルゴーニュ・グラン・オーディネール。見かけたら一度試してみる価値はあると思います!
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ワインコラム 第64回 知られざる名産地の話 ソーシニャック編
- 2010-11-24 (水)
- ワインコラム
今回ご紹介するのは、フランス南西部に位置するソーシニャックSaussignacというワイン産地です。
ソーシニャックはフランス南西部のベルジュラックBergerac地区にあります。ベルジュラック地区は、ベルジュラックの町の周辺を指しますが、ボルドーBordeauxの東に位置し、栽培されているぶどう品種やワインのスタイルなど、ボルドーの延長と言うことができます。
ソーシニャックは甘口ワイン専門のアペラシオンです。セミヨンSémillonを主体にソーヴィニヨン・ブランSauvignon Blancなどをブレンドして造られます。熟したぶどうを樹についたまま干しぶどう状にした遅摘みで造られるタイプと、貴腐ぶどうによる、有名なソーテルヌSauternesのようなタイプがあります。
ソーシニャックの近くにはモンバジヤックMonbazillacなど、同様のワインを産する産地がありますので、この辺りは甘口ワイン造りに適した環境があるのでしょう。
私は2004年9月にラザック・ドゥ・ソーシニャックRazac de Saussignac村にあるシャトー・ラ・モーリーニュChâteau La Maurigneを訪問しました。緩やかに起伏する丘が連なる牧歌的な土地で、車を走らせていると心が穏やかになります。
このシャトーでは、ソーシニャックのほかにコート・ド・ベルジュラックCôtes de Bergeracの赤ワインなども造っています。
ソーシニャックに関しては、3つのキュヴェを造っています。まずはシャトーChâteauというキュヴェ、次にキュヴェCuvéeというキュヴェ、そして最上品としてフロリレージュFlorilègeというキュヴェです。ぶどうの状態により造り分けるのですが、上級キュヴェに向かうほど濃縮されたぶどうを用い、熟成期間を長く取ります。フロリレージュに関しては3年から4年という長い樽熟成期間を取っています。
シャトーというキュヴェはそれほど強い濃縮感はなく、フルーティーさが際立つ心地よい甘口のワインです。キュヴェというキュヴェはシャトーに比べ濃縮感があり、樽熟成のニュアンスも強くなります。最上級のフロリジェーヌは上質なソーテルヌに匹敵する濃縮感、凝縮された甘味、複雑なアロマを持つまさにグラン・ヴァンです!それでも知名度の低さゆえか、価格は低めに設定されています。このような、尊敬すべき生産者の上質なワインがもっと広く知られ、入手し易くなればワイン・ライフがより豊かになることでしょう。
Clos Yでは近いうちにソーシニャックを含めたレストラン講座を企画いたしますので、ご興味のある方は楽しみにしていてください!
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ワインコラム 第63回 珍しいワインの話
- 2010-11-14 (日)
- ワインコラム
フランスのボルドーを例に見ても、たくさんのシャトーがあり、過去何十年ものヴィンテージがあります。さらに、毎年新しいヴィンテージのワインが生まれていきます。
人ひとりが、一生をかけても世界中のすべてのワインを飲むことは不可能だと私は思います。
それほどたくさんのワインがあるわけですから、中には「こんなのあり?!」というようなワインも存在するわけです。
今回は、そのような面白い、不思議なワインをご紹介いたします。
まずは、そろそろ新酒が出る頃ですから、地元でしか飲めないボルドーの新酒、ブーリュBourruです。
発酵中の状態で、甘さと炭酸ガスがある、一年でもほんのわずかな時期にしか手に入らない珍しいものです。
続いて、ボルドー、グラーヴGraves地区のワインです。グラーヴというアペラシオンでは、赤ワイン、白ワインの生産が認められていますが、甘口のワインは認められていません。ところが、甘口のグラーヴを見つけてしまいました!
Gravesという表記の下に、赤字でMoilleuxと記されておりますが、フランス語で「柔らかい」という意味です。ワイン用語としては、甘口を意味します。甘口が認められていないのになぜ甘口があるのか...謎です。
さらにボルドーから、シャトーで直接買う以外に入手できないワインをご紹介いたします。シャトー・コス・デストゥルネルChâteau Cos d’EstournelのVin de Réserveです。
偉大なヴィンテージ、1995年のワインの澱の部分を瓶詰めしたものです。ろ過をしたのか、澱は見られませんでした。
続いて南フランスから、ぶどう品種名をラベルに表記したワインです。
Viognierとはぶどう品種の名前ですが、何故かその文字がAppellation Contrôléeの文字で挟まれています。つまり、A.O.C. Viognierとなってしまっているわけですが、そのようなアペラシオンは存在しません。実際ラベル上部にはヴァン・ド・ペイ・ドックVin de Pays d’Ocと明記されています。...不思議です。
最後に、今月の第3木曜日に解禁されるボージョレ・ヌーヴォーBeaujolais Nouveauにちなんで、原料であるガメイGamayの珍しいものをご紹介いたします。
これはオーストラリアのソーレンベルグSorrenbergという造り手さんが手掛けるガメイです。フランス以外でガメイを手掛ける造り手さんはほとんどいないので、珍しいと言えると思います。上質なワインでした!
世の中にはさらに珍しい、面白いワインがたくさん隠れていると思います。そのようなワインを探してみるのもワインの楽しみのひとつかもしれませんね。
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ワインコラム 第62回 ぶどう品種の話 サンジョヴェーゼ編
- 2010-10-24 (日)
- ワインコラム
フランスと並ぶワイン大国であるイタリア。同国で最大の生産量を誇るのがサンジョヴェーゼSangioveseです。
イタリアワインの代表的な銘柄であるキアンティChiantiの主な原料であり、キアンティを産するトスカーナ州やその周辺の州で広く栽培されています。
サンジョヴェーゼ。
でも、大切なのは量ではなく質にあります。優れた生産者による上質なサンジョヴェーゼは感動に値し、イタリアだけでなく世界的に見ても最高のワインのひとつとなります。
原産はトスカーナ州とされており、非常に古い歴史を持っているようです。
ワインとしての特徴は、濃い色調、しっかりした酸味と、ときには果実味を上回るほどの酸味、そして豊富なタンニンにあります。特に、「酸味」と「タンニン」が特徴的だと思います。色が濃く、果実味が豊かなワインはたくさんありますが、同時にしっかりした酸味と豊富なタンニンを備えるワインはそう多くありません。
ワインの銘柄としては前述したキアンティが何と言っても有名ですが、品質ではブルネッロ・ディ・モンタルチーノBrunello di Montalcinoに触れないわけにはいかないでしょう。このワインはモンタルチーノの町の周辺の限定された地区のサンジョヴェーゼ100%で造られることが義務付けられています。
サンジョヴェーゼは突然変異を起こしやすく、プルニョーロ・ジェンティーレPrugnolo GentileやモレッリーノMorellinoなど複数の亜種があるのですが、ブルネッロもサンジョヴェーゼの亜種のひとつです。
ブルネッロ・ディ・モンタルチーノは重厚で複雑な風味に溢れ、まさに偉大なワインです。北イタリア、ピエモンテ州のバローロBarolo(ぶどう品種はネッビオーロNebbiolo)と並び、イタリアワインの双璧と言えるでしょう。
他にサンジョヴェーゼの優れたワインとして、キアンティ・クラッシコChianti Classico(一般的なキアンティより限定された地区で栽培されたぶどうから造られる)、ヴィノ・ノビレ・ディ・モンテプルチアーノVino Nobile di Montepulciano(前述したプルニョーロ・ジェンティーレから主に造られる)などが挙げられます。
私は、良質なサンジョヴェーゼを口にすると、肉料理が欲しくなってしまいます(笑)。重厚なサンジョヴェーゼは赤身の肉を使った料理などを引き立ててくれますので、是非合わせてみてください!
Clos Yでは、11月のレストラン講座のテーマを「イタリア」とし、上質なワインをそれに合わせた料理とともにお楽しみ頂きます。7日(日曜日)の講座ではとびきりのブルネッロ・ディ・モンタルチーノも登場します!18日(木曜日)の講座ではバローロや1990年のネッビオーロも登場いたします。ご興味のある方はご連絡ください。
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ワインコラム 第61回 美食の話 フランス&イタリア編
- 2010-10-15 (金)
- ワインコラム
秋真っただ中、秋と言えば食欲の秋ですから(笑)、今回は、旅先で出会ったおいしいものについてご紹介したいと思います。
まずはサンテミリオンSaint-Emilionのレストランで食べた、トゥールーズのソーセージSaucisse de Toulouseです。
フランスでは豚肉加工品が多く消費されています。生ハムやパテ、ソーセージなどいろいろありますが、それら豚肉加工品も有名な産地があります。例えば、バイヨンヌBayonne(フランス南西部、スペインとの国境近くに位置する町)の生ハムや、モルトーMorteau(フランス北東部、フランシュ・コンテ地方の町)のソーセージなどです。
トゥールーズのソーセージはフランス南西部の町、トゥールーズで発達したもので、やや粗引きの豚肉のソーセージです。シンプルですが、ジューシー(ナイフで切ると肉汁が飛び出すほど!)で素材由来の甘味があり、ワインと良く合います。
続いて、今度はフランス北東部のアルザス地方Alsaceから、チーズのパイ包み焼きStrudelです。
フランスではチーズの生産も盛んですね。各地に個性的なチーズがありますが、アルザス地方ではウォッシュタイプのチーズ、マンステールMunsterが有名です。今回出会った料理は、マンステールをたっぷりと使い、ソーセージも入れてパイ生地で包み、オーヴンで焼いたものです。ボリュームのあるこの料理には、赤ワインを合わせたいものですね。となると、アルザス唯一の赤ワイン、ピノ・ノワールPinot Noirの出番ですが、比較的軽いタイプのものが多いので、できればある程度濃縮感のあるものを選びたいものです。
次はイタリアに参ります。イタリアもおいしいものの宝庫ですね!
フランス料理とイタリア料理、全く違うもののように考えられていますが、私はそれほど大きな違いは無いのではないかと思っております。
一言で「フランス料理」といっても、地方ごとに郷土料理は大きく異なりますし、同じことがイタリア料理にも言えると思います。なので、フランス、イタリアと国で分けることにあまり意味はなく、地方ごとに分けて考えるほうがわかりやすいでしょう。
ひとつ、フランス料理とイタリア料理の大きな違いがあると思います。「パスタ」です。フランスでもパスタ類は食べますが、パスタが主役、という料理はほとんど見られないですね。大抵は肉であれ魚であれ、何かの料理の付け合わせとして使われています。
イタリアでは、コースの場合は前菜の後に登場します。コースの場合は一皿あたりの量は少なめです。コースではない場合は、たっぷりとした量で出てきますね。
今回ご紹介するのは、カンパニア州Campaniaで出会ったポルチーニと黒トリュフのフェットチーネです。
イタリアの真ん中を南北に走るアペニン山脈を移動中に、近くに大きな町が無く、でもそろそろ食事をしたい、というタイミングで出会ったレストランの料理です。
イタリア語しか通じない小さなレストランで、正直料理に対して期待せずに入ったのですが...
このパスタにはやられました!(笑)
出された瞬間に、トリュフの香りに包まれます。ポルチーニはとろりとした状態にまで火を通され、太めのパスタであるフェットチーネに絡み、食べているこちらがとろけそうになります。ワインは地元の赤ワインを合わせて、良く合ったのですが、もっと熟成した状態のものがあれば尚良かったと思います。
日本も、おいしいものが溢れる秋。この週末にでも、秋の味覚とワインのマリアージュを楽しんでみてはいかがでしょうか?
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ワインコラム 第60回 ボルドーの話 サンテミリオン編
- 2010-10-07 (木)
- ワインコラム
そのまだ新鮮な情報をお伝えしようと思います。今回はボルドーBordeauxの町とサンテミリオンSaint-Emilionがテーマです。
ボルドーに限った事ではありませんが、この時期のフランスは朝、晩は冷え込みますが、日中は照りつける太陽の日差しが強烈で、暑く感じます。しかし空気は乾燥しており、日陰は涼しく、快適です。
そんな爽やかな空気の中、サンテミリオンへと向かいました。
ボルドーの町。
ちょうどこの日はイベントがあり、小さな町が大変混雑していました。
サンテミリオンの教会前で。
訪問したのはシャトー・ロル・ヴァランタンChâteau Rol Valentinです。
ボルドーではひとつのシャトーが100ha以上の畑を所有していることも珍しくないのですが、シャトー・ロル・ヴァランタンはわずか7.5haの畑を所有するのみの小さな生産者です。
ロル・ヴァランタンの畑。
そのためでしょうか、ワイン造りの方法も一般的なボルドーのシャトーと異なっています。畑を小さな区画ごとに分け、区画ごとに小さな容量の発酵槽で発酵させます。このことについては、大規模なシャトーでも高品質なワインを目指すところでは実施しています。
特徴的なのは、アルコール発酵中にピジャージュpigeageをするということです。少し専門的な話になりますが、赤ワインを造るために必要不可欠な色素、渋みはぶどうの皮や種からもたらされます。そのため、アルコール発酵中は果汁と果皮、種を接触させておくことが必要になるのですが、アルコール発酵中に生じる炭酸ガスのために果皮や種などの固形物は発酵槽の上部に浮かんで行ってしまいます。すると色素などの抽出ができなくなってしまいますので、何か手を打たなくてはなりません。
ボルドーで一般的なのは、ルモンタージュremontageという方法です。発酵槽の下部から果汁を引き抜いてポンプで上部に送り、浮かんでいる固形物に振りかける作業を指します。ロル・ヴァランタンが実施しているピジャージュとは、発酵槽の上部に浮かんでしまった固形物を木の棒で上から下へ(発酵槽の内部へ)押し下げる作業です。
ルモンタージュもピジャージュも固形物と液体を接触させる、という点では一緒ですが、ピジャージュのほうが抽出が強くなります。そのため、この方法はぶどうの果皮の色素が薄い、もしくはタンニンがそれほど強くないピノ・ノワールPinot Noirなどのぶどう品種に適応されることが一般的です。ロル・ヴァランタンの主要品種はメルロMerlotで、色素もタンニンもしっかりしているぶどう品種です。
では、ロル・ヴァランタンのワインが過度に凝縮して、渋みの塊のようかというと、そうでもないのです。渋みは確かにしっかりしているのですが、ぎすぎすしないまろやかな口当たりです。これは、いろいろな意味で本当に良く熟したぶどうによるものでしょう。ワインの質の大部分はぶどうの質によるものですからね。
面白いものを見せてもらった充実した訪問の後、ボルドー市内に戻り、夜はラ・チュピナLa Tupinaで食事をしました。ボルドーを代表する素晴らしいレストランのひとつで、フランス南西部の料理を得意としています。珍しい、アキテーヌ地方Aquitaine(フランス南西部、ボルドーを含む。)のキャビアなど、地元の上質な食材を使ったおいしい料理を楽しみました。
キャビアを乗せた帆立のタルタル。
最後に、まだ確定的なことは言えないのですが、「この調子でいけば、今年(2010年)は偉大な2009年を凌ぐほどのヴィンテージになるだろう」と、ロル・ヴァランタンのオーナーが言っていました。2010年も良い年になるといいですね!価格さえ控えめであるならば...
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ワインコラム 第59回 カリフォルニアの話 メンドシーノ編
- 2010-09-12 (日)
- ワインコラム
生産量が多いということは、いろいろな種類のワインが造られていることが考えられます。実際、カリフォルニアではパワフルな赤ワイン、ボリュームのある白ワイン、酸味のしっかりしたスパークリング・ワインなど様々なワインが造られています。
カリフォルニアのワインが好きな方も多いと思うのですが、ナパNapaに代表されるようなボリュームのあるワインを造る産地以外のワイン産地の名前を挙げられる方はあまり多くないでしょう。
今回は、カリフォルニア州の中でも特に注目する価値のある、エレガントなワインを産するメンドシーノMendocinoをご紹介いたします。
メンドシーノはナパ、ソノマsonomaと一緒に、カリフォルニア北西部のノース・コーストNorth Coastという地域に分類されています。そして、メンドシーノはカリフォルニア州のワイン産地の中でも最も北に位置しています。
メンドシーノ地区で最も有名なワイン産地は、アンダーソン・ヴァレーAnderson Valleyでしょう。太平洋の冷たい空気が流れ込む場所で、今日ではフランスのシャンパーニュ・メゾン、ルイ・ロデレールが進出し、素晴らしいスパークリング・ワインを造るなど、成功を収めておりますが、以前ではこのような冷涼な土地でぶどう栽培など考えられずにいました。
朝霧に包まれたロデレール・エステイト
私が訪問したのは、この地のワイン造りのパイオニア、ナヴァッロ・ヴィンヤーズNavarro Vineyardsです。
最新鋭の設備が並んで...という大規模な造り手さんではなく、フランスの田舎にもありそうな、使いこまれた樽が並ぶ、温かみのあるワイナリーです。
仔ヤギなど動物もいました。
ワインは上質で、冷涼な気候を反映させたエレガントなシャルドネChardonnayやピノ・ノワールPinot Noir、さらにリースリングRieslingやゲヴュルツトラミネールGewurztraminerなどヨーロッパ北部で栽培されるぶどう品種にも取り組み、それらのワインは高く評価されています。
良い意味でカリフォルニアらしくない、エレガントさが光るワインは是非試して頂きたいものです。こんなカリフォルニアワインもあったのかと、嬉しい驚きが待っていると思います!
Clos Yでは、10月11日のレストラン講座のテーマを「カリフォルニア」とし、オーパス・ワンOpus OneのオーヴァーチュアOvertureやメンドシーノのリースリング、ナヴァッロ・ヴィンヤーズの甘口のゲヴュルツトラミネールなどをお料理と合わせてお楽しみいただきます。ご興味のある方はご連絡ください。
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ワインコラム 第58回 日本ワインの現状
- 2010-09-05 (日)
- ワインコラム
この言葉を聞いて、どのように思われるでしょうか。
ワイン歴が長い方ほど、湿度の高い日本でワイン用の上質なぶどうを育てることは難しく、良いワインを造ることは難しいのではないかと考えることが多いように感じています。
実際、高い湿度や、ぶどうの収穫時期に台風が来たりと、ハンデを負っている部分はあると思います。そして、外国から輸入した原料を用いて、一般消費者が誤解してしまうような「国産ワイン」を造るメーカーが存在していることも事実です。
しかし、ここ数年、日本のワイン造りの現場はダイナミックに動いています。以前から一部の日本のワインは国際的に評価されていましたが、それらのワインは世界の高級ワインに劣らない高値が付けられていました。
近年では、世界に通用するレベルのおいしいワインが、「こんな値段でいいの?!」と思ってしまうほどお手頃な価格で販売されるようになってきました。これは、大きな進歩だと思います。
そして、このような上質ワインが日本中で生まれていることも重要です。
有名なワイン産地として、真っ先に挙がるのは山梨県でしょうか。東京から近いので、ワイナリーを訪問された方も少なくないでしょう。
確かに山梨県には、日本を代表するような上質ワインを造る造り手さんが集中しているように思います。しかし、他に目を向けてみると、南は九州から、北は北海道まで、全国に素晴らしいワインが点在しています。
ごく一部をご紹介すると、宮崎県の都農ワイナリー、こちらのシャルドネChardonnayやキャンベル・アーリーCampbell Early。大分県の安心院葡萄酒工房のイモリ谷シャルドネ。鳥取県の奥出雲葡萄園のシャルドネ。栃木県のココ・ファーム&ワイナリーの各種ワイン。山形県のタケダワイナリーのスパークリング・ワイン。
挙げればきりがないのですが、他にも長野県には上質ワインが多く、日本トップクラスのワインもあります。北海道は近年高品質ワインへの期待が高まっています。
ぶどうに目を向けてみると、日本と言えば甲州Koshuですね。日本固有の、ヨーロッパ系ぶどう品種ということでこのぶどうを大切に考える造り手さんは少なくありません。白ワインにされることが多いぶどうですが、赤紫色の色素をもっていて、淡いロゼに仕立てられることもあります。
甲州ぶどう。
この品種は独特の渋みを持っていて、その渋みをワインに出さないように醸造されることが多いのですが、私は個人的にこのぶどうの全てを抽出した、渋みがあり色の濃いタイプが好きです。山梨県のダイヤモンド酒造さんが造っていた、「黄金の甲州」というワインがあるのですが、初めてこのワインを飲んだ時には驚かされました。強い個性のあるワインで、ダイヤモンド酒造さんを訪問するたびに購入していたのですが、残念ながらもうこのワインは造っていないとのこと。復活を期待しております...
黄金の甲州は例外として(笑)、日本には実に様々なタイプのワインがあり、品質が上がってきております。日本ワインで感動したことがない方は是非、改めて試してみてください!きっと良い驚きが待っているはずです。
Clos Yでは9月14日のレストラン講座のテーマを「日本のワイン」とし、優れた日本のワインをそれに合わせた料理をお楽しみいただきます。文中でご紹介したイモリ谷シャルドネや、ダイヤモンド酒造さんの赤ワイン、タケダワイナリーさんのスパークリング・ワインや日本を代表する造り手のひとり中央葡萄酒さんの甲州などをお出しする予定です。ご興味のある方はご連絡ください。
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ワインコラム 第57回 オーストリアの話 ヴァッハウ編
- 2010-08-24 (火)
- ワインコラム
このように暑いときには、冷涼産地の、酸味がしっかりしたワインが欲しくなるものです。フランス北部のロワールLoire地方やシャンパーニュChampagne地方、アルザスAlsace地方、ドイツなど...
今回ご紹介するオーストリアも、そんな冷涼ワイン産地の括りに入るでしょう。しかし、近年では良質な赤ワインやボリュームのある辛口白ワインなど、多様性に富む高品質ワインが生産されています。
そんなオーストリアの中で、一番の銘醸地として扱われることが多いのがヴァッハウWachauです。
位置を確認しますと、オーストリア自体はスイス、ドイツ、イタリアなどと国境を接する、横に長い形をしています。ワイン産地は国の東部に集中していて、チェコ、スロバキア、ハンガリーなどと接しています。
そのワイン産地の中でも、ヴァッハウは一番北西にある小さな産地です。ドナウ川Donau沿いに、急な斜面畑が展開されている風景は、ドイツの高名な畑やローヌ北部などを思い起こさせます。
私は2010年の1月に、この地を代表する生産者のひとりであるニコライホーフNikolaihofを訪問してきました。
看板越しに畑が見えます。
今日オーストリアでは有機栽培を実践するワインの造り手が増えてきておりますが、ニコライホーフは1970年代前半という早い時期にビオディナミBiodynamie(有機農法の一種で、天体の影響までも取り入れた哲学を伴う農法)を取り入れた、同国のこの分野でのパイオニアです。
歴史のある地下カーヴを案内していただいた時、薄暗い中ふいに現れた黒猫、そして蝙蝠に驚かされました。これらも含めてビオディナミ、とは言っておりませんでしたが(笑)、歴史あるビオディナミの造り手らしい雰囲気でした。
主なワインをテイスティングさせていただきましたが、ミネラル感に富んだピュアな味わいはまさにぶどうが生まれ育った土地を表現しているのだなと思わせる、美しいものでした。
ニコライホーフが造るワインは白のみなのですが、中でも特筆すべきはリースリング・シュタイナー・フントRiesling Steiner Hundです。ドイツが原産のリースリングですが、このワインは世界最高のリースリングのひとつと言えるのではないでしょうか(この畑はヴァッハウ地区のお隣の、クレムスタールKremstal地区に位置しています。)。
もちろん、ヴァッハウのワインも素晴らしいです。同国を代表するぶどう品種のひとつグリューナー・ヴェルトリナーGrüner Veltlinerは是非お試しいただきたいワインです。
まだ暑い日が続きますが、ぶどうが生まれ育った土地をそのまま表現した、美しく、かつ力のあるこのようなワインも時にはいかがでしょうか?地球から、少しエネルギーをもらえるかもしれません!
Clos Yでは、9月5日に「オーストリアのワイン」をテーマにレストラン講座を行います。今回ご紹介したニコライホーフのグリューナー・フェルトリナー2002もお楽しみいただけます。また、現地で入手してきた同国における伝説の赤ワイン、エルンスト・トリーバウマーErnst TriebaumerのマリーエンタールMariental 2007もご用意しております。参加ご希望の方はご連絡ください。
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