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ワインコラム Archive
ワインコラム 第76回 スパークリング・ワインの話 プロセッコ編
- 2011-05-22 (日)
- ワインコラム
フランスではシャンパーニュ地方で造られるシャンパーニュChampagneが人気で、レストランでのアペリティフや、お祝いの席に欠かすことができない存在として定着しています。
シャンパーニュはフランス以外でも、世界中で人気です。日本にもシャンパーニュ愛好家は多いようですね。
フランスと並ぶワイン大国であるイタリアでもスパークリング・ワインは人気があります。シャンパーニュも飲まれていますが、やはりイタリアではイタリア産のスパークリング・ワインがよく飲まれています。
イタリア産の代表的なスパークリング・ワインを挙げますと、シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵方式で造られるフランチャコルタFranciacorta、マスカットの香りが華やかな、甘口のアスティAstiが重要です。
そして、近年流行っているのが、ヴェネト州で造られるプロセッコProseccoです。プロセッコ(=グレラGlera)という白ぶどうから造られます。フレッシュで華やかな香りを持ち、フルーティな果実味のある軽やかなスパークリング・ワインです。このワインの良さは、もし一言で表現するならば、その「軽やかさ」にあると思います。
現在、世界的に飲食が軽くなる傾向にあると思います。例えばアルコールで言うとスピリッツよりもワイン、ワインよりもビールなど、より軽いアルコール飲料に消費者は移りつつあるようです。料理もバターなど油脂をたっぷり使う料理から、素材を活かしてシンプルに調理する料理が人気を集めつつあるようです。
そうした時代の流れにプロセッコの特徴がちょうど合っているようです。
プロセッコの楽しみ方を考えてみますと、アペリティフはもちろん、ランチにも、夜のくつろぎの時間にも、広い場面に対応できます。ワイン単体でも、食事と合わせても楽しめることは大きな強みですね。また、重要な点として、生産量が多く、かつ品質が安定していて、コストパフォーマンスが高いことも見逃せません。
しかし、ただ安くて軽やかなだけがプロセッコの全てではありません。コネリアーノConeglianoやヴァルドッビアーデネValdobbiadeneなど、特にぶどう栽培に適した丘陵地からは、アロマのしっかりとした、称賛に値するワインが生まれています。コネリアーノ・ヴァルドッビアーデネ・プロセッコConegliano Valdobbiadene-Proseccoとアゾーロ・プロセッコAsolo-Proseccoの2つの銘柄のプロセッコが、2009年にイタリアワイン最高格付けのD.O.C.G.に昇格しました。
今後、ますます注目のワインですね。日常にプロセッコを飲み、少しいいことがあった時にD.O.C.G.銘柄の上級プロセッコを飲み...
これからの季節にぴったりだと思いますので、興味のある方は是非試してみてください!
Clos Yでは、5月28日のワインを楽しむランチ会を、D.O.C.G.のプロセッコで幕開けます。ご興味のある方はご連絡ください。
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ワインコラム 第75回 イタリアの話 マルケ州編
- 2011-05-04 (水)
- ワインコラム
今回は、マルケMarche州について紹介いたします。
マルケ州はフィレンツェFirenzeを擁するトスカーナToscana州の東隣に位置しています。アドリア海に面した美しい海岸線を持ち、州都はアンコーナAnconaです。
あまりワインのイメージが無いかもしれませんが、赤ワインのコーネロConero、また、生産量が少なく希少な赤のスパークリング・ワインであるヴェルナッチャ・ディ・セッラペトローナVernaccia di Serrapetronaの2つのD.O.C.G.があります。
小さなSerrapetrona村
Serrapetronaの畑
しかし、この州で一番知名度が高いワインはヴェルディッキオVerdicchioから造られる白ワインの、ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエージVerdicchio dei Castelli di Jesiでしょう。
Jesiの町
少し変わった形のボトルに入れられることがあり、視覚的なインパクトもあると思いますが、生産量も多く、非常にコストパフォーマンスに優れたワインです。2010年にリゼルヴァRiservaタイプがD.O.C.G.に昇格したことにより、改めて注目を集めています。
マルケ州にはもうひとつ、ヴェルディッキオのD.O.C.G.があります。ヴェルディッキオ・ディ・マテリカ・リゼルヴァVerdicchio di Matelica Riservaです。
Matelicaの町
これも2010年にD.O.C.G.に昇格したばかりです。マルケ州の内陸にあるマテリカの町の周辺で造られるワインで、同じヴェルディッキオながらカステッリ・ディ・イエージとは異なる個性を備えています。
山あり、海ありのマルケ州は、食材にも恵まれ、シンプルながらもおいしい料理が溢れています。大型のグリーン・オリーヴの肉詰め、内臓肉を使いトリュフも入る豪華なヴィンチスグラッシ(ラザーニャの一種)、新鮮な魚介類のパスタ、シンプルなローストなど...どれもこの州のワインと良く合います!
あまり観光地として知られていないこの州は穏やかで美しく、そこに住む人々も優しく気さくです。お時間があれば、このような土地への旅もお勧めいたします。マルケ州で過ごす癒しの時間は、人生の快い思い出になると思います!
Clos Yでは、5月18日のレストラン講座のテーマを「マルケ州」とし、2010年に現地で出会ったワインを始め、希少なヴェルナッチャ・ディ・セッラペトローナなどおいしいワインをそれに合わせた料理とともにお楽しみいただきます。ご興味のある方はご連絡ください。
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ワインコラム 第74回 ワイナリーの話 ベガ・シシリア編
- 2011-04-24 (日)
- ワインコラム
世界各国から様々な形で支援がありますが、海外のワイナリーの中にも、日本での売り上げを義援金として寄付するなどして支援活動を行うところも出てきました。大変ありがたいことですね。
スペインを代表するワイナリーのひとつ、ベガ・シシリアVega Siciliaも義援金活動を行ってくださっています。日本市場で販売する同社のワインの4月以降の売り上げ全てを、日本赤十字社に寄付することを決めたようです。
ベガ・シシリアと言えば、スペインでトップクラスの赤ワイン、ウニコUnicoで知られています。ウニコとはユニークという意味ですが、その名の通り、他に類を見ない個性的なワインです。
まず、産地ですが、スペインの首都マドリッドの北部、リベラ・デル・ドゥエロRibera del Duero地区に位置しています。ティント・フィノTinto Fino(リベラ・デル・ドゥエロ地区におけるテンプラニーリョTempranilloの別名)を用いた長期熟成型のワイン産地として知られており、ベガ・シシリア社のほかにも上質なワインを造る造り手が集まる注目の土地です。
ウニコの特筆すべき点は、その熟成にあります。アルコール発酵後、ワインは大きな樽に入れられ、1年ほど過ごします。その後小さな新しい樽に移し2年、次は古い樽に移し替えて4年。なんと7年もの年月を樽で過ごすのです!
これはワインとしては考えられない長さです。例えば、長期熟成型のボルドーの格付けシャトーでも平均18ヵ月。熟成を長く取るシャトーでも24ヵ月ほどですから、7年という年月がいかに長いかわかるでしょう。これほど長い間、密閉容器ではない木の樽に入れておくと、普通はワインが酸化してしまうのですが、そうならないのは原料となるぶどうがしっかりしている証拠でしょう。
さらに、ワインは瓶に移されて2年の熟成を経て、初めて出荷準備が整います。まさに驚異的なワインですね!
ウニコのさらに面白い点は、ヴィンテージ入りのキュヴェとヴィンテージ無しのキュヴェがあることです。ヴィンテージ入りのものはそのヴィンテージのぶどうを原料としていますが、ヴィンテージ無しのものは複数年のウニコをブレンドして造られています。ヴィンテージ無しのほうが上級キュヴェとして位置づけられていることがまた面白いですね。
気軽に楽しめるワインではありませんが、ワイン愛好家としては一生に一度は試してみたいワインだと思います。売り上げが義援金として寄付される今、試してみるのも良いのではないでしょうか?
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ワインコラム 第73回 日本のワインの話 山形編
- 2011-04-06 (水)
- ワインコラム
フランスやイタリアのワインに比べて品質がいまひとつで、値段も高い、と思われている方が多いかもしれません。
現在、南は九州から、北は北海道まで、ワイナリーが存在し、高品質なワインが造られています。価格は、1万円を超えるものもありますし、「この品質でこの価格でいいの!?」と思ってしまうようなリーズナブルなものもあります。
そう、優良な生産者が手掛ける良質な日本のワインは、世界水準にあるのです!
2010年10月、私は山形県に行き、数軒のワイナリーを訪問して参りました。
山形県にも素晴らしいワイナリーがあります。今回は、タケダワイナリーについてご紹介したいと思います。
タケダワイナリーは、東北地方を代表する高品質ワインの造り手のひとつです。スパークリング・ワインのCuvée Yoshikoキュヴェ・ヨシコは国内最高のスパークリング・ワインのひとつと言えるでしょう。
ワイナリーは、新幹線も止まるかみのやま温泉駅から車で10分ほどのところにあります。醸造所の周りには自社畑が広がっていますが、農家さんから購入したぶどうも使ってワイン造りを行っています。
私は自社畑と熟成庫を見せて頂きました。低農薬で、化学肥料を使用しない自然農法で管理されている自社畑は既に収穫が終わっておりましたが、畝間には草が生えていました。
醸造所周辺の畑は比較的平坦な土地ですが、その先に斜面の畑があります。斜面の畑では全て手作業で仕事をしなくてはいけないそうです。
ワインの熟成庫は地下にあり、気温、湿度共に安定しているようです。理想的な熟成条件ですね。
醸造設備は見せていただけませんでした。海外ではワイナリーを訪問するとほぼ必ず醸造設備など見せていただけるのですが、日本のワイナリーの場合は醸造所まで見学者を案内しないことは珍しくないようです。
ワインは4種類試飲させていただきました。特に印象に残っているのがドメーヌ・タケダ アッサンブラージュ・スペシャルです。これは白ワインですが、白ぶどうのシャルドネと黒ぶどうのマスカット・ベリーAという2つのぶどう品種のブレンドでできています。非常に珍しいブレンドだと思います。そして、とても上質なワインでした!
この素晴らしいワイナリーが、実は今、存続の危機に直面しています。ワイナリーのすぐ近くに清掃工場の建設予定があるためです。有志の方々による署名運動が行われておりますので、ご興味のある方は是非ご覧になってください。
http://www.hat.hi-ho.ne.jp/haut-pont/t/takedawinery_03.pdf
Clos Yでは、4月20日のレストラン講座のテーマを「アジア」とし、アジアの素晴らしいワインを食事とともにお楽しみいただきます。タケダワイナリーのアッサンブラージュ・スペシャルも含まれております!ご興味のある方はご連絡ください。
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ワインコラム 第72回 ロゼワインの話 ウイユ・ド・ペルドリ編
- 2011-03-27 (日)
- ワインコラム
スイス西部に位置するヌーシャテルNeuchâtel特産の、ピノ・ノワールによるロゼ・ワインです。ウイユとはフランス語で「目」、同じくペルドリは「ヤマウズラ」のことです。直訳するとヤマウズラの目、という意味になります。
ヤマウズラは、全長30cm弱の鳥類の1種です。ワインになぜこのような名前がついたかというと、理由はその色にあります。ヤマウズラの目は、オレンジ色がかったピンクのような色調をしています。このヌーシャテル特産のロゼワインの色がヤマウズラの目の色に似ていたため、その名が付けられたようです。
実際、「ロゼワイン」というカテゴリーの中に、様々な色のワインがありますね。無色透明にほんのりベージュのような色調の入った淡いものから、薄めの赤ワインより濃いような鮮やかな色調のものまで。ロゼワインの魅力の一つは、その美しい色合いにあると言えるでしょう。
ウイユ・ド・ペルドリは、どちらかというと淡い色調ですが、原料となるピノ・ノワールに由来するエレガントさがあり、個性的な、奥ゆかしいワインです。フランスのブルゴーニュ地方やシャンパーニュ地方を始め、アメリカなどの新世界でも、ピノ・ノワールのロゼが造られ、人気を集めています。ですが、ウイユ・ド・ペルドリは、スイスのヌーシャテルのテロワールを反映し、特有の特徴を備えています。ロゼ・ワインが好きな方、ピノ・ノワールが好きな方には一度試していただきたいワインのひとつです。
そもそも、「スイスのワイン」自体珍しいですよね。標高が高く、ぶどう栽培が可能な土地が限られており、もともと生産量が少ないです。その少量のワインは、主に生産地で地元の人や観光客などによって消費されてしまいますので、輸出に割り当てられるのは極僅かです。そのため、スイスのワインを口にする機会に恵まれることは日本では稀でしょう。スイスワインに関する情報もあまり入ってきません。ですが、高品質なワインが密かに造られていることは知っておくとよいかもしれません。
スイスのワイン、ウイユ・ド・ペルドリに限らず、見つけましたら是非試してみてください。軽やかで、エレガントで、これからの季節を華やかに彩ってくれるはずです!
Clos Yでは、4月3日のレストラン講座のテーマを「ピノ・ノワール」とし、世界の様々なピノ・ノワールを料理とともにお楽しみいただきます。ウイユ・ド・ペルドリも登場いたします!ご興味のある方はご連絡ください。
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ワインコラム 第71回 ローヌ地方の話 シャトー・グリエ編
- 2011-03-18 (金)
- ワインコラム
このように、ある生産者がある畑を単独所有している状態をモノポールと呼びます。モノポールの畑は少なからずあるのですが、ロマネ・コンティのように畑の名前と生産者の名前が同じ例は極僅かです。
今回ご紹介するシャトー・グリエChâteau Grilletは、その数少ない例のひとつです。
まず、場所を確認しましょう。フランス南東部、ローヌRhône川沿いに広がるワイン産地であるローヌ地方北部にシャトー・グリエは位置しています。大きな都市で言いますと、リヨンLyonがシャトー・グリエの北にあります。
シャトー・グリエというワインは、シャトー・グリエという生産者がシャトー・グリエA.O.C.範囲内の畑で栽培しているヴィオニエViognierという白ぶどうから造る白ワインです。
ローヌ地方でヴィオニエと言えばコンドリウCondrieuが有名ですが、シャトー・グリエは回りをコンドリウA.O.C.で囲まれています。コンドリウの中の一区画がシャトー・グリエとして独立しているような形です。
最近人気の出てきたぶどう品種、ヴィオニエは、今日では南フランスやアメリカ、オーストラリアなどでも栽培されています。それらのワインの中には比較的安価なものもありますが、以前はヴィオニエといえばコンドリウであり、コンドリウは今も昔も高値で取引される高級ワインです。
シャトー・グリエはそのコンドリウの別格もの、と言うことができるでしょうか。フランス4大白ワインのひとつ(あと3つはモンラシェMontrachet、シャトー・シャロンChâteau Chalon、クロ・ド・ラ・クーレ・ド・セランClos de la Coulée de Serrant)に数えられ、僅か3.2haの畑から、年間12,000本ほどのワインを生みだしています。
生産量が少ないので見かけることすら少なく、例えあったとしても高価なのでソムリエでも口にしたことがある人は少ないかもしれません。
以前のオーナー(ネイレ・ガシェ)があまり情報を提供していなかったので、謎に包まれた部分がある、ミステリアスなワイン、というイメージを私は持っています。つい最近、ボルドーのシャトー・ラトゥールのオーナーであるフランソワ・ピノー氏がシャトー・グリエを買収したと聞きました。今後、シャトー・グリエは変わっていく可能性があります。
畑は北ローヌの他の畑同様、急斜面にテラス状に拓かれています。
シャトーに行く場合、丘の斜面の細い道を登って行くのですが、その細さは車同士がすれ違うことができないほどです。私が車で登っていると、ちょうど上のほうから車が降りてくるところでした。苦労しながら斜面をバックで下って行った記憶があります...
機械による作業は不可能です。ひとつひとつの畑仕事を人の手で行わなくてはなりません。規模も小さいので、まさに手作りのワインと言えるでしょう。
ヴィオニエによるワインは、コンドリウひとつ取っても生産者により様々なスタイルがあります。共通して言えるのは、しっかりした果実味があること、アルコール度が高く、ボリューム感があること、でしょう。魚や甲殻類はもちろん、肉料理と合わせるのも良いと思います。
シャトー・グリエは、樽熟成を経ておりますのでより複雑みのあるワインに仕上がっています。希少性だけでなく、充実したワインの内容により今後ますます名声を高めていくことが予想されます。
ピノー氏がシャトー・グリエの価格をこれ以上上げないことを願っています...
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ワインコラム 第70回 ブルゴーニュ地方 畑の話 ロマネ・コンティ編
- 2011-03-13 (日)
- ワインコラム
隣り合った畑でも、格付けが異なるなどの理由で、ワインの値段が数倍違ってしまうというのも良く知られたお話ですね。
そんなブルゴーニュの畑についてご紹介いたします。
今回は、恐らく世界一高価な赤ワインが生まれるロマネ・コンティRomanée-Contiのお話です。
まずは場所を確認しましょう。ブルゴーニュ地方の中心都市、ディジョンDijonから車で南下していくと、市街地を抜け、ぶどう畑の中を走るような格好になります。ジュヴレイ・シャンベルタンGevrey-Chambertin村を超えて、ヴージョVougeot村を超えるとヴォーヌ・ロマネVosne-Romanée村に至ります。ロマネ・コンティは、この村にあります。
ロマネ・コンティとは畑の名前であり、その畑のぶどうから造られたワインの名前でもありますが、もうひとつ、ロマネ・コンティという名のつくものがあります。それは、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティDomaine de la Romanée-Conti (以下D.R.C.)というワインの造り手の名前です。ロマネ・コンティという畑はD.R.C.が単独所有しております。そのために、D.R.C.という造り手は、「ロマネ・コンティのドメーヌ」という名前を名乗っているわけです。
さて、そのロマネ・コンティですが、その歴史をローマ時代にまで遡ることができます。「ローマ」にちなんで「ロマネ」という名が付けられたようです。
ブルゴーニュの銘醸畑は、修道院と密接な関係にありますが、ロマネ・コンティも然り。10世紀の初頭から、サン・ヴィヴィアン修道院の管理が続きました。その後、ルイ15世の統治時代、名声あるロマネ・コンティの所有をめぐってポンパドール夫人とコンティ公爵の間で争奪戦が起こりました。最終的に1760年代にコンティ公爵が勝利し、以降、「ロマネ」と呼ばれていた畑は「ロマネ・コンティ」と呼ばれるようになります。コンティ公爵はその後もワインの評判を落とさず、むしろ、収穫量を減らし、品質を高めることによってますますロマネ・コンティの価値を高めていきました。その意志は今日でもD.R.C.に引き継がれています。
「飲み物であるワイン」としては、ロマネ・コンティには非現実的な価格がつけられています。それを巡り、ワインのプロフェッショナルの間でもその価格と質のバランスに関して論議されることがあります。
ここから先は私の私論ですが、ロマネ・コンティの価格は、純粋にワインの品質を表した価格ではないと思います。ロマネ・コンティは確かに素晴らしいワインです。それは間違いありません。しかし、3万円のワインに比べてその20倍も優れた味わいかと言うと、そんなことは無いと思います。
あの価格は、需要と供給のバランスから来ているものです。平均年産量が6,000本と少ないにもかかわらず、世界中から需要があります。そのためにあの価格が付けられているのです。実際、あの価格で売れてしまうのです。歴史のある、上質なロマネ・コンティを口にするための代価として。もしくは、勢力の誇示として...
その歴史と名声は、今後も続いていくことでしょう。
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ワインコラム 第69回 南西地方の話 ガイヤック編
- 2011-02-20 (日)
- ワインコラム
フランス南西地方、トゥールーズToulouseの北東に位置しています。産するワインは白、ロゼ、赤、スパークリングと多様で、さらに白ワインは辛口も甘口も認められています。これほど多くのタイプのワインが認められているアペラシオンは、ワイン王国フランスの中でも珍しいものです。
土地は、緩やかな丘が続いており、2005年に訪問した時は、自然が残る「何もない田舎」という印象でした。
しかし、この土地でも偉大なワインが生まれています!
訪問させていただいたのは、ドメーヌ・ラ・クロワ・デ・マルシャンDomaine La Croix des Marchands。
発酵温度を管理できる現代的なステンレス・タンクを導入し、果実味のある上質なワインを造っています。
ガイヤックの畑。
特筆すべきなのは、オーナーが共同で所有するシャトー・パルヴィエChâteau Palviéの、レ・スクレ・デュ・シャトー・パルヴィエLes Secrets du Château Palviéです。ガイヤックでは、黒ぶどうのデュラDuras、白ぶどうのモーザックMauzacなど地場品種が活躍しておりますが、この赤ワインはシラーSyrah100%で造られています。ブラック・ベリーなど黒系果実、カンゾウ、丁子、シガー、スー・ボワなど複雑な香りがあり、果実味、酸味ともにしっかりしていてボリュームがあります。私はローヌ地方北部の上質ワインであるコルナスCornasを連想させられました。
また、同じレ・スクレ・デュ・シャトー・パルヴィエの甘口白ワインも素晴らしかったです。非常に滑らかな口当たりで、濃縮感があり、世界的に見ても高い水準にある甘口ワインでした。
シャトー・パルヴィエのレ・スクレ・デュ・シャトー・パルヴィエは同シャトーのトップ・キュヴェで、濃縮感があり、素晴らしく上質で価格も一番高いのですが、その品質を考えると非常にコスト・パフォーマンスが高いと言えます。これも知名度がそれほど高くない産地のワインだからなのでしょう。
一般的なガイヤックは、赤も白も早飲み用のものが多く、シンプルな構成をしています。しかし、近年パルヴィエのような高品質ワインを目指す造り手が増えてきており、注目に値する産地になりつつあります。
ガイヤックの上質なワインの造り手は小規模のため生産量が多くなく、日本に入ってくる量はごくわずかなのですが、見つけられたら是非試してみてください。ちょっと冒険をする価値はあると思います!
Clos Yでは、3月6日のレストラン講座で、ガイヤックの素晴らしい甘口ワインをご紹介いたします。ご興味のある方はご連絡ください。
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ワインコラム 第68回 極上甘口ワインの話 アヴィニョネージ編
- 2011-01-31 (月)
- ワインコラム
きっかけとして、甘口ワインからワインを好きになったからもいらっしゃると思います。しかし、甘口ワインと言っても、世界には様々な甘口ワインがありますね。
今回は、イタリア、トスカーナToscana地方の甘口ワインをご紹介いたします。
フィレンツェを擁する美しいトスカーナ地方は、世界的に見ても重要なワイン産地です。
主にサンジョヴェーゼSangioveseから造られる赤ワイン(キアンティChiantiが有名ですね。)で知られていますが、白ワイン、甘口ワインも生産されています。
その甘口ワインですが、ヴィン・サントVin Santoというワインです。これが、実にユニークなワインなのです。
まず、原料となるぶどうですが、白ぶどうもしくは黒ぶどうが用いられます。収穫されたぶどうは、数ヵ月の間通気性の良い特別な部屋でじっくりと陰干しされます。
この間に水分が飛んで、干しぶどう状態になっていきます。そうして凝縮されたぶどうを絞り、濃厚な果汁を得ます。
伝統的な造り方としては、得られた果汁はマードレMadreと一緒に50リットルの小さな樽でじっくり発酵、そして熟成されます。マードレというのは、ヴィン・サントが完成した時に樽の底に残った澱のことです。これを加えてあげることにより、澱に含まれる酵母が働き、より安定してヴィン・サントを造ることができるようです。
2008年に私が訪問したアヴィニョネージAvignonesi社は最も高く評価されるヴィン・サントの造り手です。同社は10年もの間ヴィン・サントを樽で熟成させるのですが、なんと一度樽に詰めてからは瓶詰めの時まで一度も樽を開けない、つまり自然に任せるのみとのことでした。樽に入れて10年後、そこに極上のヴィン・サントがあるのか、うまくいかず酢のようになってしまった液体があるのか...開けるまでわからないというのです。
恐らく長い歴史の中で、失敗してしまった樽もあったことでしょう。しかしアヴィニョネージのヴィン・サントは極上です。2種類のヴィン・サントを同社は造っていますが、黒ぶどうのサンジョヴェーゼで造られるオッキオ・ディ・ペルニーチェOcchio di Perniceというキュヴェは世界中の甘口ワインのひとつの頂点に立つワインでしょう。私は1995ヴィンテージを飲みましたが、ハーフボトルで1,447本しか造られなかった希少品です。
ドライフルーツやスパイス、穏やかな酸化熟成から来る複雑な香りがあります。味わいも複雑で、しっかりした甘味があり、それを支える酸味とのバランスが良く、尋常でない長い余韻を楽しむことができます。
料理と合わせず、単体でじっくり向き合いたいようなワインです。
このようなワインを造り出すアヴィニョネージ社はすごいですし、陰干しによりぶどうを凝縮させる方法もすごいと思います...!
Clos Yでは、素晴らしい陰干しワインの魅力をたっぷり楽しんでいただくレストラン講座(3月6日)を企画しております。ぶどうの力、そのぶどうが生まれ育った土地の風味がぎゅっと濃縮されたワインとそれに合う料理をお楽しみいただきます。ご興味のある方はご連絡ください。
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ワインコラム 第67回 ローヌ地方の話 ドメーヌ・デュ・ペゴー編
- 2011-01-14 (金)
- ワインコラム
2011年、第1回目のワインコラムでございます。
ワイン愛好家の方は、お気に入りのワインがあると思います。例えばある造り手さんが好き、ですとか、ある産地のワインが好き、など。
私の場合、世界中のワインに興味があり、造り手さんも多く訪れているので、お気に入りのワインを挙げるのは大変難しいのですが、どうしても1つ挙げるとするならば、フランス、ローヌRhône地方のシャトーヌフ・デュ・パプChâteauneuf-du-Papeでしょうか。
このワインは、シャトーヌフ・デュ・パプ村の周辺に位置するぶどう畑から収穫されたぶどうを原料に造られる赤ワイン、もしくは白ワインです。
「シャトー」は「城」、「ヌフ」は「新しい」、「パプ」は「法王」という意味ですので、直訳すると「法王の新しい城」という意味になります。アヴィニヨンAvignonに法王庁があった時代、当時の法王がアヴィニヨンから10kmほど離れた場所に新しい城を建てました。その場所こそ、このシャトーヌフ・デュ・パプだったわけです。
今日、城は廃墟と化してしまっていますが、立ち続ける壁は往時を偲ばせてくれます。
さて、このワインは南フランスを代表する銘柄として有名ですが、実は私が初めて飲んだフランスの赤ワインです。力強い赤ワインはしっかりとした肉料理と良く合います。個人的にはブルー・チーズと合わせるのも好きです。
この有名なワイン産地には、優れた造り手も多く、さらにその知名度を高めています。私は数軒の造り手さんを訪問し、それぞれ面白かったのですが、深く印象に残っている訪問はドメーヌ・デュ・ペゴーDomaine du Pégauです。家族経営の小さな造り手さんですが、ワインは高い評価を得ています。
訪問した際、醸造を担当しているローランスさんに案内して頂きました。このアペラシオンでは13ものぶどう品種が使用を認められていますが、ペゴーでは13種全てを使用しています。
品種などどのようにブレンドするのか尋ねたところ、「ワイン造りに決まりはありません。毎年毎年、ぶどうの状態を観察して決めます。」と答えて頂いたのが印象に残っています。
さて、訪問を終え帰ろうとしたところ、車のエンジンがかかりません。困っているとおじさんが現れて、車を見てくれました。いろいろやっていただいたのですがそれでもエンジンはかかりません。おじさんは、ほんとうに、手を真っ黒にしてしばらくの間奮闘してくださったのですが、やはりエンジンはかかりません。おじさんに感謝しつつ、車が壊れたことに動揺していた私におじさんは「この先に修理をしてくれるところがあるから、いってみなさい」と教えてくれました。
幸いドメーヌは坂の上のほうにありましたので、エンジンをかけずに修理場まで行くことができました。手をべとべとにして、初対面の私のためにがんばってくださったことは、今思い出しても感動します。今でも感謝しています。そのおじさんこそ、当主のポール氏でした。
さて、修理場に着いたはいいものの、営業時間が終わる寸前で、「修理は明日ね。」と断言されました。そこはフランスですから、すぐに直してほしいと思いつつ、車を置いて町へホテルを探しに出かけました。
シャトーヌフ・デュ・パプ村は、小さな村です。夏には観光客も来るようですが、このときは12月で、数軒あるホテルは営業していなかったり、営業していても既に満室となっていました。修理場にもどり、泊まる場所がないことを告げると、「そうか。では車で寝れば?」とのこと。考えましたが、それ以外に選択肢もありませんし、そうすることに...
夜は城跡近くにあるレストランで食事をしたのですが、戻ると既に修理場は閉まっています。入口の門も閉まっています。
...
仕方ないので、3メートルくらいの鉄の柵を登り、超えて、自分の車にたどり着きました。なんだかとても悪いことをしているような気分でした...
その夜、良く眠れませんでした。長い夜でした。いろいろ考えました。
そのときにふと思ったのが、「世の中にはペゴーさんのような素晴らしい造り手さんがいて、人を感動させるワインがたくさんある。私は、このような素晴らしいワインをひとりでも多くの人に伝えていきたいな。」というものでした。
今、Clos Yクロ・イグレックを立ち上げて、実際にワインの魅力を広める仕事をしていますが、まだまだ活動範囲が狭い状態です。なんとか、より多くの人々にワインの魅力を伝えていきたいです。こうすることで、ペゴーの方々を始め、素晴らしい造り手さんたちへの恩返しになるかもしれません。何より、素晴らしいワインは人に感動を与えますから...
ドメーヌ・デュ・ペゴーに関しては、私などがどうこうしなくても、既に世界的に有名ですね。良い年にしか造らない、キュヴェ・ダ・カーポCuvée Da Capoは、ワイン評論家から満点の評価を得ていますし、日本のあるワイン漫画でも取り上げられ、偉大なワインとして紹介されています。
最近、キュヴェ・ダ・カーポの最新ヴィンテージ、2007年を取り寄せました。
いつか、このワインを含めたワイン講座を企画しようと思っております。...熱が入りそうです...
では今年も素晴らしいワインとともに、素晴らしい年にしましょう!
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