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ワインコラム 第86回 ブルゴーニュ地方の話 2011年秋訪問 フィリップ・シャルロパン・パリゾ編

しばらく経ってしまいましたが、今年もボージョレ・ヌーヴォーBeaujolais Nouveauが解禁になりましたね。

 

フレッシュでフルーティなこのワインが、私は大好きです。毎年同じ生産者のボージョレ・ヌーヴォーを飲んでいると、ヴィンテージによるワインの違いが浮き彫りになります。2009は凝縮していました。2010は軽いタイプでした。2011は、生産者によりばらつきがありましたが、2010より濃縮感があり、なかなか良い出来だったと思います。

 

さて、そのボージョレを有するブルゴーニュBourgogne地方に、2011年の9月に行ってまいりました。

 

2011年はぶどうの開花が早かったため、収穫も例年より早く行われました(ぶどうの開花から100日後がぶどうの収穫日になると言われています。)。まだ収穫を行っているところもありましたが、大半の畑は収穫が終わった状態でした。

 

この忙しい時期に、複数の造り手さんを訪問させていただきました。ほんとうに、ワイナリーは一年で一番忙しいところ、訪問のお願いを受け入れてくださった方々にはとても感謝しております。

 

今回ご紹介するのは、ジュヴレイ・シャンベルタンGevrey-Chambertin村にドメーヌを構えるフィリップ・シャルロパン・パリゾPhilippe Charlopin-Parizotさんです。

 

伝説のアンリ・ジャイエHenri Jayer氏の愛弟子と呼ばれるこの造り手さんは、もじゃもじゃ頭のいかつそうな風貌(私はなんとなくプロレスラーみたいだなと思ってしまうのですが)で、びしっとミネラルの芯の通った素晴らしい白ワイン濃密で力強いタイプの赤ワインを生みだしています。

 

2006年に完成した、まだ新しい醸造所はブルゴーニュに多い家族単位の造り手さんのものとは異なり、中規模の工場のような外観ですが、効率的にできています。特に、区画ごとにワインを仕込み分けることができる小さなステンレス・タンクが林立しているのはなかなか見られない光景です。

DSC00701 

アポを取っていったものの、当日は忙しさのピークのようでした。アポを取る時点で、「1時間だけ」と多忙なお父さん(フィリップ氏)の代わりに、息子さん(父親そっくり!)が案内してくれました。

 

試飲は全て樽から2010年のワインです。白から始まりました。ブルゴーニュ地方の造り手さんを訪問すると、赤から始まることもあります。造り手さんによって考え方が異なるのですね。

 

まずは、プティ・シャブリPetit Chablisです。このドメーヌは2007年からシャブリのワインの生産を始めました。プティ・シャブリの次は、シャブリ、そして畑違いのプルミエ・クリュを4種、そしてグラン・クリュのコルトン・シャルルマーニュCorton-Charlemagneです。一貫してミネラルが強いスタイル。コルトン・シャルルマーニュの余韻の長さは特筆ものでした。

 

赤も2010を樽からです。ジュヴレイ・シャンベルタンのラ・ジュスティスLa Justiceに始まり、レ・ゼヴォセルLes Evocelles、ヴィエイユ・ヴィーニュVieilles Vignes、シャルム・シャンベルタンCharmes-Chambertin、マジ・シャンベルタンMazis-Chambertinそして偉大なシャンベルタンChambertin!全てジュヴレイ・シャンベルタン村にある、畑違いの興味深い試飲となりました。まだ熟成中の未完成品ですし、若過ぎる状態ですから、還元状態にあるワインもありましたが、共通していたのはしっかりとした果実味、何より驚かされたのは既にタンニンがほぼ溶け込んでいる状態だったことです。2010は簡単なヴィンテージではなかったと思うのですが、タンニンも完熟した状態でぶどうを収穫したのでしょう。高品質なワイン造りのための畑仕事の努力が伺えました。

 

本当に忙しい中、お時間を取ってくださって貴重なワインを試飲させて頂いて感謝しております。また、そっくりな親子が並んでいる姿を見られて嬉しかったです(笑)。

DSC00700 忙しさのピークの醸造所。 

ドメーヌ・フィリップ・シャルロパン・パリゾのワインを試したことが無い方は、是非試してみてください。白も赤も、本当に素晴らしいワインです。

 

Clos Yでは、12月12日のレストラン講座のテーマを「ブルゴーニュ」とし、フィリップ・シャルロパン・パリゾのワインを含む良質ワインを、それに合わせた特別料理と共にお楽しみ頂きます。ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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ワインコラム 第85回 ルシヨン地方の話 マス・ブラン編

南フランスのルシヨン地方Roussillonをご存知でしょうか?

 

フランス最南端、スペインとの国境沿いに位置し、東は地中海に面しています。よくラングドック地方Languedocと一緒にされますが、ラングドック地方が177,000haのぶどう畑を持ち、スパークリング、白、赤、甘口など多彩なワインを生みだすのに対し、ルシヨン地方のぶどう畑はその約1/5の34,000haです。

 

ルシヨン地方で造られるワインは、主に濃縮感の強い赤ワインと酒精強化による甘口ワインです。また、標高の高い場所で造られる上質な白ワインも、生産量こそ少ないものの見逃せません。

 

今回は、スペインから北上してフランスに入る場合、最初のワイン産地になるバニュルスBanyulsコリウールCollioureについてご紹介いたします。

 

バニュルスとコリウールは、生産地域が重複しています。バニュルスと名乗るワインは全て酒精強化による甘口タイプのワインであるのに対して、コリウールは赤、白、ロゼのスティル・ワインです。

 

いずれも個性的な上質ワインで、数軒の優れた生産者がおりますが、私が訪問させていただいたのはその中でも最も重要な造り手のひとつ、ドメーヌ・デュ・マス・ブランDomaine du Mas Blancです。

 

マス・ブランはバニュルス・シュール・メールBanyuls-sur-Mer、「海の上のバニュルス」という美しい名を持つ、地中海沿いの美しい小さな町に位置しています。

Banyuls3Banyuls4 

マス・ブランはコリウールもバニュルスも、いろいろなタイプのワインを生産しており、いずれも高い評価を得ています。

 

この地域の畑は、海沿いの急斜面に展開されています。車で走っていると見上げてしまうような斜面もあります。傾斜が急なので機械作業は不可能です。南の暑い太陽が照りつける中、人手による作業が要求されます。

Banyuls 

結果、大切に育てられた上質なぶどうから、素晴らしいワインが生まれます。

 

バニュルスはポートワインのようなタイプもありますが、熟成容器を屋外にさらして造るランシオrancioというマデイラワインのようなタイプや、厳しい基準を満たしたグラン・クリュGrand Cruなど様々なタイプがあります。その個性により、アペリティフからフォワ・グラを使った料理、デザートまで幅広く楽しむことができます。

Banyuls8 屋外に晒されたランシオ用の樽 

コリウールは生産量の半分以上が赤ワインです。グルナッシュやシラーなどが使われますが、ワインにより品種構成が異なります。すると当然ワインの個性も異なりますが、色が濃く、果実味が豊かで、熟成によりその魅力を増していく素晴らしいワインです。私は、生産量は少ないのですが、コリウールのロゼを強くお勧めします。ロゼワインとしては濃い色調を有し、僅かにタンニンも感じられる、赤ワインのような性質を備えたロゼワインです。バニュルス・シュール・メールで、地中海を見ながら地元の魚介類と合わせたら最高でしょう!...なかなかできないことですが...

 

さて、マス・ブランではいろいろなキュヴェを試飲させて頂きました。個性的なバニュルスたち、畑別のキュヴェで仕込んだコリウールたち。それほど知られていないこのアペラシオンに、これほど上質なワインがあると、嬉しくなりました。

 

品質の割に、その知名度ゆえか、価格は控えめに設定されています。見つけたら是非試してみてください。冬は特に濃厚なコリウールの赤、そして甘いバニュルスが素敵な時間をくれるはずです。

 

Clos Yでは、11月16日のレストラン講座のテーマを「ルシヨン地方」とし、この地方のワインをそれに合わせた料理と共にお楽しみ頂きます。マス・ブランの2000年の赤ワインが2種類出ます!ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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ワインコラム 第84回 美食の話 2011年秋 フランス編

今回は、2011年の9月に出会ったフランスの料理のお話です。

 

まずは、パリのプティ・ヴェルドPetit Verdotで食べた前菜、鯖のマリネです。

 

鯖はフランスでは頻繁に見かける食材ではありませんが、手に入れにくいかと言うとそうでもなく、スーパーなどでも普通に売られています。私がフランスに住んでいた頃は真空パックに入った鯖の燻製を買っていました。なかなかワインとも楽しめるものでした。

 

さて、プティ・ヴェルドの鯖は、半身をマリネにして、表面を炙り香ばしく仕上げたものでした。中身は半生の状態ですが全く臭みはなく、洗練された非常においしい料理でした。

 

次はランスReimsのカフェで食べた、タルタルステーキSteak Tartareです。タルタルステーキ自体はフランスのどこにでもある、特にこの場でご紹介するような料理ではないのですが、驚いたことに、このお店は焼きタルタルステーキを出していました。

 

もともとタルタルステーキは、ひき肉状にした生の牛肉に玉ねぎ、ピクルス、ケッパーなどを入れ、塩、胡椒、マスタード、辛い調味料、卵黄などを入れて良く混ぜたものです。ユッケのようなもの、と言えるでしょうか。最近日本では生の肉を食べるのが難しくなっていますので、今回の旅ではタルタルステーキをたくさん食べてきました。もう、1年分食べました。

 

その焼きタルタルですが...

 

タルタルステーキを想像してください。おいしそうですね。これを、フライパンで両面をさっと焼いたものを想像してください。

 

...そのままです!

DSC00661 - コピー 

焼いたので、見た目はハンバーグのようになっていますが、中は生、いわゆるタルタルステーキのままです。焼いた部分も、特に香ばしくておいしいというわけでもなく...まあ、経験できて良かったです(笑)。

 

続いて、デザートをひとつご紹介します。

 

クランブル・オ・ポムCrumble aux pommesです。フランスでは良く出会う、温かいデザートなのですが、日本のフランス料理屋さんでなかなかお目にかかれないですね。器にりんごを入れて、その上に小麦粉、バター、砂糖で作ったもろもろとした生地を載せてオーヴンで焼いたデザートです。フランスではちょっと甘すぎることがありますが、甘さを控えれば日本人受けすると思います。

DSC00706タルト仕立て 

 

さて、秋です。おいしい料理とワインを楽しみましょう!

 

 

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ワインコラム 第83回 2011年秋 フランスで出会った素晴らしいワインの話

2011年9月にフランス、スイス、イタリアのワイン産地を回ってまいりました。
 

今回は、パリで出会った素晴らしいワインについてご紹介させて頂きたいと思います。

 

日ごろ私は、日本には世界中のワインが集まっており、世界的に見てもかなり広いワインの選択肢が与えられていると思っております。実際、フランスでも入手困難なフランスワインが比較的容易に入手できることがありますし、その点で恵まれていると思います。

 

しかし世界にはそれこそ数えきれないほどのワインがあります。地元で消費されてしまい、他に出回らないワインも少なくありません。

 

さて、フランスの首都、パリ。パリは「ワイン産地」と言える場所ではないと思うのですが、世界中の素晴らしいワインが集まる場所と言えるでしょう。

 

まずはパリのレストラン、プティ・ヴェルドPetit Verdotでのお話です。このお店のオーナーは、ボルドー地方を代表するレストラン、コルディアン・バージュCordeillan-Bagesで日本人ながらシェフ・ソムリエを務めていらした石塚氏です。レストランというより気軽なビストロ風のお店ですが、流石に素晴らしいワインが揃っています!

 

食事と合わせて、グラスで10種類(!)ほど飲ませて頂いたのですが、特に印象的だったのは、

 

Mâcon-Villages Terroir de Clessé 2006 Domaine Michel

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Vouvray Clos du Bourg Moelleux 1959 Huet

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前者はブルゴーニュ地方南部、マコネ地区のシャルドネによる甘口白ワインです。この地区ではプイィ・フュイッセPouilly-Fuisséなど素晴らしい白ワインが産出されていますが、通常は辛口です。例外的に甘口を造る生産者がいますが、片手で数えられるほどでしょう。この造り手さんのワインは初めてだったのですが、やはり、世界にはいろいろなワインがあるものですね。

 

後者はロワールを代表する生産者の熟成甘口ワインです。1959はロワールでは伝説的な超優良年です。その味わいは...ブショネ(主にコルク中に発生してしまったT.C.A.という物質が原因で起こる、ワインの劣化の1種。ワインが濡れた段ボールのようなひどい香りを放つようになってしまいます。)でした!出していただく前から、「ブショネだけど試してみる?」と聞かれて試したのですが、なかなか派手なブショネでした。半世紀以上経った極上ワインを開けて、ブショネって辛いですよね...

 

さて、気を取り直して、ワインショップで発見した珍品をご紹介いたします。

 

Vin de Table de France Le Vin des Amis 2009 August Clape

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ワインの格でいうと、何ということはないテーブル・ワインなのですが、これがとんでもないワインでした。造り手のオーギュスト・クラープはローヌ北部、コルナスCornasを代表する生産者です。ローヌ北部にはコート・ローティCôte-Rîtie、エルミタージュHermitageなど錚々たるクリュがひしめいており、中でも高級ワインはバリック(225ℓ容量の樽)で長期間熟成させることがあります。そんな中、オーギュスト・クラープは昔ながらの大樽熟成で、しかも新樽は一切使いません。原料となるぶどうが生まれ育った環境をそのままワインとして表現しています。誰もが、ひと口目から「素晴らしい!」と言ってしまうようなワインではないのですが、特にある程度の熟成を経ると他のワインでは得難い感動を与えてくれる極上ワインとなります。

 

そう、オーギュスト・クラープのワインは素晴らしいのですが、真価を発揮するまで時間がかかるな、というのが私の個人的な正直な感想です。恐らく、その点は造り手さんも自覚しているのでしょう。そのため今回このコラムでご紹介するワインを造ったのかな、と思いました。このワインが...素晴らしかったです!2009年、まだまだ若いですが、素晴らしくおいしかった!いかにも北ローヌのシラーという感じで、極上のシラー飲みが持ち得る芯の通ったスパイスのアロマを持ち、果実味、酸味ともに豊かで、何より明らかにオーギュスト・クラープのワイン、コルナスを思わせるニュアンスに富んでいるのです。このワインの名前を訳すと「友人たちのワイン」。クラープの偉大なワインを、若いうちから、手ごろな価格で飲んでもらいたいと、正に友達用に少量生産したのでしょう。私はこの造り手さんを2004年に訪問しましたが、このようなワインがあるとは知りませんでした...この品質で12ユーロほどでしたので、毎日でも飲みたいほどです!

 

改めて、世界は素晴らしいワインで溢れています。

 

あなたは今晩、何のワインを飲みますか?

 

 

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ワインコラム 第82回 ぶどう品種の話 プルサール編

今回は、珍しいぶどう品種をご紹介いたします。

 

フランス東部、ジュラJura地方のプルサールPoulsard(Ploussardとも書かれます。)です。

 

ジュラ地方はワインの生産量が少ないうえに、地元で消費されてされてしまうので、そのワインが市場に出回る量は極僅かで、あまりお目にかかれることがありません。

 

しかし、ワインはとても個性的で面白いものです。有名なものは、サヴァニャンSavagninから造られるヴァン・ジョーヌVin Jauneや、陰干ししたぶどうから造られる甘口ワインであるヴァン・ド・パイユVin de Pailleが挙げられます。

 

今回ご紹介するプルサールは、ジュラ地方のワイン文化の中心となる町、アルボワArboisを起源とする黒ぶどうです。

Poulsard 

ワイン用のぶどうは、実に数えきれないほど無数に存在しています。濃い、しっかりしたタイプの赤ワインを生む品種として有名なものは、カベルネ・ソーヴィニヨンCabernet SauvignonやメルロMerlot、サンジョヴェーゼSangiovese等があります。

 

逆に、比較的明るい色調で、エレガントな赤ワインを生みだす品種として有名なものは、ピノ・ノワールPinot NoirやガメイGamay等があります。

 

プルサールは、後者に入ります。ぶどうの粒が大きく、果皮が薄く、色素が淡いので、赤ワインとして造ってもとても淡い色調のワインになります。その性質から、ロゼワインに仕立てられる場合も多いようです。

 

上記のようにアルボワが起源のようですが、アルボワ周辺の地域で細々と栽培されているのみです。他の地方では、ジュラ地方の南、サヴォワSavoie地方でビュジェイBugeyのワインにブレンドされることがある程度です。

 

このように希少な品種から造られるワインは、力強さとは無縁、優しく、土っぽく、独特の個性に溢れています。実際、黒ぶどうとしてこれほどの色素の淡さは世界トップクラスではないでしょうか。時には白ワインに仕立てられるほどですから。

 

では、アルボワの造り手さんを一軒ご紹介しましょう。ドメーヌ・ドゥ・ラ・トゥルネルDomaine de la Tournelleです。小さく美しいアルボワの町のほぼ中心地にひっそりと佇むこの造り手は、1991年創業の、まだ新しい造り手です。ぶどう栽培にはビオディナミを取り入れ、良いワイン造りに積極的に活動しています。実際、はっとさせられるような品質のワインを生みだしています。要注目の造り手さんです。

D. de la Tournelle ドメーヌ・ドゥ・ラ・トゥルネルのカーヴ 

世界中で栽培されている有名ぶどう品種も良いですが、このような地場品種から造られるワインは飲んでみて実に楽しいものです。もし見かけたら、是非試して頂きたいワインです。

 

Clos Yでは、9月12日のレストラン講座のテーマをジュラ地方とサヴォワ地方とし、地場品種を用いた上質なワインをご紹介いたします。ワインに合わせた特別料理も毎回ご好評を頂いております。ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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ワインコラム 第81回 ぶどうと害虫の話 フィロキセラ編

素晴らしいワイン造りには、醸造設備や醸造技術も必要ですが、一番重要なものは素晴らしいぶどうです。

 

素晴らしいワイン造りとは、素晴らしいぶどう作りであるとも言えるでしょう。上質なワイン造りを目指す人たちは、いかに素晴らしいぶどうを収穫するかに心血を注いでいます。

 

農業であるぶどう栽培には、多くの困難が伴います。大雨や雹などの天候的要因もあれば、害虫も襲ってきます。今回は、害虫たちの中から、フィロキセラPhylloxeraについてご紹介いたします。

 

フィロキセラは「ブドウネアブラムシ」とも呼ばれる、体長1mmほどの小さな虫です。ぶどうの根に寄生し、樹液を吸い、ぶどう樹を死に至らしめる恐ろしい害虫です。

 

根に寄生するという特性上、この虫を直接攻撃することは難しく、19世紀の後半にはヨーロッパに蔓延し、多くのぶどう畑を死に至らしめました。21世紀になった今日でも、この虫を撃退する方法は見つかっておりません。

 

そう、今日でも、ぶどう栽培の専門家たちはこの虫と共存せざるを得ない状況なのです。

 

人はこの虫を攻撃できませんが、防御する術を身につけました。おかげで、フィロキセラが存在するぶどう畑でもぶどう栽培家はフィロキセラにやられることなくぶどう栽培を続けています。

 

その方法とは、「接ぎ木」です。

 

もともとフィロキセラはアメリカ大陸にいたようです。アメリカ大陸にもぶどうの樹はありましたが、フィロキセラにやられている様子がありません。そこで、アメリカ系ぶどうの台木(根の部分)にヨーロッパ系ぶどうを接ぎ木してみると、フィロキセラにやられることなく、ヨーロッパ系ぶどうの果実を得ることができたのです。

 

今日では、一部地域を除いて、ほぼ世界中全てのぶどう畑においてこの措置が取られています。

 

接ぎ木をしていないぶどう樹のことを「自根」の樹と言いますが、自根でぶどうを栽培できるのは砂の土壌の畑です。フィロキセラは砂地には生息できないためです。アメリカのワシントン州などがこれに該当するワイン産地です。

 

他に自根でぶどうを栽培できるのは、チリ、一部オーストラリアなどです。このような土地ではフィロキセラを外部から持ち込まれないよう、厳重に警戒していますが、徐々にフィロキセラが広がってきているようです。

Heathcote3 オーストラリアのフィロキセラ・フリー・ゾーン

しかし世の中にはリスクを覚悟して、普通にフィロキセラがいる土地で自根でぶどうを栽培する強者がいます。

 

フランス、ロワール地方のアンリ・マリオネ氏や、ブルゴーニュ地方のフィリップ・シャルロパン・パリゾ氏など。正直、大切なぶどうの樹がいつフィロキセラにやられてもおかしくない状況で、愛情を込めてぶどうを育てています。やはり自根のぶどうには、ロマンがありますよね...

 

見つけるのは難しいと思いますが、自根のぶどうからできたワインを飲む機会がありましたら、ぶどう栽培者の想い、苦労をかみしめながら飲んでみてください。またひとつ、奥深いワインの魅力に惹き寄せられることでしょう。

 

Clos Yでは、9月4日のレストラン講座のテーマを「自根のワイン」とし、自根で栽培されたぶどうからできたワインを料理と共にお楽しみ頂きます。ご興味がございましたらご連絡ください。

 

 

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ワインコラム 第80回 ロワール地方の話 ミュスカデとグロ・プラン、そして石の話

暑い季節に飲みたくなるワインがあると思います。私の場合、ボルドー地方のアントル・ドゥー・メールEntre Deux Mersと、ロワール地方のミュスカデMuscadetがそれにあたります。この2つの銘柄は、爽やかで、良く冷やすとおいしく、生産者による品質のばらつきが少なく、抜群のコストパフォーマンスの良さがあります。

 

ミュスカデはフランスで一番長い川であるロワール川の河口に近い(海に近い)場所で栽培される、ミュスカデ(=Melon de Bourgogne)という白ぶどうから造られます。海に近いところで造られているためか、潮っぽい香りがして、海産物と良い相性を示してくれます。

 

私は、ミュスカデと、もう一つのあるワインをセットのように感じています。そのワインは、グロ・プラン・デュ・ペイ・ナンテGros Plant du Pays Nantais(以下グロ・プランと表記させて頂きます。)です。

 

グロ・プランという白ワインは、ミュスカデとは違いフォル・ブランシュFolle Blancheという白ぶどうから造られるのですが、産地はミュスカデに隣接しており、軽快な味わいから、詰められるボトルの形まで似ております。価格はミュスカデより安いくらいで、ミュスカデの弟分と表現しても良いのではないかと思います。

 

このグロ・プラン、フランスのワイン法としては、ミュスカデが属する最上のA.O.C.ではなく、その一つ下のカテゴリーに属しておりました。しかし、2011年にA.O.C.に昇格したのです!このことにより、今後さらに品質が向上していくかもしれません。

 

さて、ミュスカデもグロ・プランも、ナントNanteという大きな町の近くにあるワイン産地ですが、そのナントの町の北西120kmほどのところ、地方はブルターニュBretagneになりますが、カルナックCarnacという小さな町があります。フランスのどこにでもありそうなこの小さな町を有名にしているものがあります。それは、謎の巨石群です。

 

世界には、どうしてこのようなものがこんなところにあるのだろう?と首をひねってしまうものがありますね。石としては、イースター島のモアイやイギリスのストーン・ヘンジなどが有名ですね。カルナックの巨石群は、ストーン・ヘンジのように特別な形に組まれているわけではなく、モアイのように造形が施されているわけでもないのですが、普通に人々が暮らす田舎の小さな町の原っぱに謎の巨石が点在している様は不思議な感動をもたらしてくれます。

 

今年の夏の自由研究は、ワインを飲みながら石について調べることで決まりですね!

 

 

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ワインコラム 第79回 アルザス地方の話 ルネ・ミュレ編

今年も暑い夏がやってまいりました。

 

暑い時期には、冷涼地で造られた酸味の際立った爽やかな白ワインを良く冷やして楽しみたいですね。

 

今回は香り高い上質なワインを産する、フランス、アルザスAlsace地方のお話です。

 

アルザス地方は、フランス北東部に位置しています。主要都市はストラスブールStrasbourg。また、コルマールColmarは小さいながらも人気の観光地として知られています。

 

この地に行かれたことのある方は、この地方特有の風景に魅せられ、土地の人々の温かさに感激されたことでしょう。

 

ワイン産地としてみると、フランスでシャンパーニュChampagne地方に次いで北に位置する冷涼な産地です。西側にヴォージュVosge山脈があり、西から来る湿った空気を遮ってくれるため、フランスで最も降水量の少ないワイン産地になっています。

 

栽培されているぶどう品種は、唯一の黒ぶどうであるピノ・ノワールPinot Noirが9.6%で、残りは白ぶどうです。そう、ここは白ワイン王国なのです。

 

エレガントなリースリングRiesling、バラやライチの香りが華やかなゲヴュルツトラミネールGewurztraminerなどが有名ですね。

 

今回ご紹介する造り手さんは、アルザスのワイン産地でも南部のルーファックRouffachに居を構えるルネ・ミュレRené Muréです。

 

私がこの造り手さんを訪問したのは2008年の9月のことでした。

Rene Mure 

収穫時期にもかかわらず訪問を受け付けてくれました。収穫時期はワイナリーにとって一年で一番忙しい時期です。朝から晩まで、優れた造り手さんは妥協することなく働き続けます。

 

作業が立て込んでいるため、醸造所内の見学はできませんでしたが、テイスティング・ルームで各種ワインを試飲させていただきました。

 Rene Mure2 土壌のサンプル。

優れたクレマンCrémant(スパークリング・ワイン)、土地の力を感じる、上質な辛口白ワイン、遅摘みによる甘口白ワイン...

 

中でも面白かったのは、ヴァン・ド・ターブルVin de Table格付けのシャルドネです。アルザスでA.O.C.を名乗るためには、許可されたぶどう品種を用いなければなりませんが、シャルドネは許可品種に含まれていないため、ヴァン・ド・ターブル規格になってしまったワインです。向上心のある造り手さんは、いろいろ新しいことに挑戦したくなるのでしょう。

 

印象的だったのは、一連のピノ・ノワールです。アルザス地方のA.O.C.で唯一許可されている黒ぶどうであるピノ・ノワールを用いて、ルネ・ミュレでは数種類の赤ワインを造っています。その違いはぶどうの出所、つまり畑です。

 

カジュアルラインの出来にも感心させられましたが、何といっても圧巻はルネ・ミュレご自慢のモノポール畑、クロ・サン・ランドランClos Saint Landelinのピノ・ノワールです。

 

アルザス地方のように北部の冷涼な土地で育つ黒ぶどうはどうしても完熟が難しく、ワインにしても色素が薄く、軽いものになります。ところが、南向き斜面の畑で収量を抑えて栽培されたルネ・ミュレのピノ・ノワールのワインは、色も濃く、香り豊かで全体的に密度が高く、凝縮されています。とても北部のワインとは思えません。ブラインドで出されたなら、疑うことなくブルゴーニュを考えるでしょう。...しかもグラン・クリュを!

 

近年は温暖化の影響もあるのでしょうか、アルザス産の素晴らしいピノ・ノワールが増えてきている気がします。中でも、このクロ・サン・ランドランのピノ・ノワールは、ヴィンテージによるぶれも少なく、極上のピノ・ノワールだと断言できます。

 

この週末にでもアルザス・ワインを楽しんでみてはいかがでしょうか?暑さを忘れさせて、爽やかな気分になると思いますよ!

 

Clos Yでは、8月7日のレストラン講座を「半年に一度の豪華版」とし、ルネ・ミュレのクロ・サン・ランドラン・ピノ・ノワールを含む豪華なコースを予定しております。ゴッセ・ブラバンのキュヴェ・プレスティージュに始まり、ベルナール・デュガ・ピィのムルソー、シャトー・フィジャック1960など、一期一会の会になると思います。ご興味がありましたらご連絡ください。

 

 

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ワインコラム 第78回 ボルドー地方の話 シャトー・パルメ編

「ワインの女王」と例えられる、フランス、ボルドーBordeaux地方の赤ワイン。中でも、最も洗練されてエレガントな印象を与えてくれるのはマルゴーMargauxのワインでしょう。

 

ワインを「マルゴー」の名で流通させることができる村は、シャトー・マルゴーを擁するマルゴー村の他に4つあります。カントナックCantenac村、アルザックArsac村、スーサンSoussans村、ラバルドLabarde村です。マルゴー村に次いで有名かつ重要なのが、カントナック村でしょう。今回は、この村を代表するシャトーのひとつ、シャトー・パルメChâteau Palmerをご紹介いたします。

 

シャトー・パルメは1855年のメドック地区の格付けにおいて第3級に選ばれました。当時の評価は3級でも、今日では1級に匹敵する評価を得ており、評価に応じた価格が付けられています。

 

私がこのシャトーを訪問させていただいたのは2004年の秋のことです。

 

有名シャトーが次々現れる、メドック地区の県道D2を走ると思わず美しいシャトーに見とれてしまいますが、シャトー・パルメのシャトーはまさに「城」と呼ぶのに相応しい美しさを備えています。美しいと言えば、このシャトーのワインのラベルも非常に美しいと思います。

 

さて、醸造所、熟成セラーなど見させて頂きました。熟成セラーの窓からは、お隣のシャトー・マルゴーが見えます。評価の高いシャトーが隣接しているのは、造り手の努力はもちろん、土地の力もあるのでしょう。

 

シャトー・パルメの特徴として、植えられているぶどう品種の割合に注目したいと思います。メドックやグラーヴがあるボルドー地方左岸では、赤ワインはカベルネが主体というのが一般的ですが、このシャトーではカベルネ・ソーヴィニヨンとメルロが同等の割合で植えられており、残りをプティ・ヴェルドが占めています。つまり、シャトー・パルメはカベルネ主体とは言えないということです。ヴィンテージによってワインに用いられるぶどう品種の割合は異なりますが、2007、2008、2009と、近年ではメルロが主体のヴィンテージが続いています。

 

もうひとつ、シャトー・パルメでご紹介したいのが、アルテ・エゴ・ド・パルメAlter Ego de Palmerです。1998年に登場したこのキュヴェは、一般的にはシャトー・パルメのセカンド・ワインと言われていますが、実際にはそうではなく、シャトー・パルメの土地のもう一つの表現、という位置づけのようです(アルテ・エゴとは「もうひとつの自分、分身」などの意味があります。)。セカンド・ワインと言って差し支えないのでしょうが、私の解釈では、グラン・ヴァンであるシャトー・パルメが長期熟成を前提に造られているのに対して、アルテ・エゴは若いうちから楽しめるように造られたワインと言えると思います。

 

試飲させていただいたのは、当時まだ樽熟成中だった2003と、やや熟成の進んだ1997でした。猛暑の2003も、難しい年だった1997も、上質なワインに仕上げてくるのはさすがパルメ!といった感じでした。

 

同じヴィンテージのシャトー・パルメとアルテ・エゴ・ド・パルメの飲み比べは面白いと思います。2つを飲み比べながら、「もうひとりの自分」について考えてみるのも面白いのではないでしょうか?

 

 

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ワインコラム 第77回 ブルゴーニュ地方の話 モンタニー編

世界屈指の銘醸ワイン産地である、フランス、ブルゴーニュ地方。

 

ピノ・ノワールから造られる赤ワインも、シャルドネから造られる白ワインも大変な人気ですね。

 

今回は、ブルゴーニュにありながらあまり知名度の高くない、白ワインに特化したモンタニーMontagnyをご紹介いたします。

 

モンタニーというワインは、ブルゴーニュ地方のワイン産地のちょうど真ん中あたり、コート・シャロネーズCôte Chalonnaise地区に位置するモンタニー・レ・ビュクシーMontagny-Lès-Buxy村の周辺に広がるぶどう畑のシャルドネから造られる白ワインです。

 

アペラシオンとしては2つあります。ひとつは、単にモンタニー。もうひとつは、1級に格付けされた優れた畑のぶどうから造られるモンタニー・プルミエ・クリュMontagny Premier Cruです。

 

ブルゴーニュワイン専門の本にもなかなか詳細な地図が載っていないモンタニーですが、実際に行ってみますと、村の人が住んでいるあたりが谷になっていて、ぶどう畑は斜面に展開されています。

Montagny 1ers 斜面に広がるプルミエ・クリュの畑

Montagny 1er Les Coeres プルミエ・クリュの畑

モンタニー合計440haのうち255haはプルミエ・クリュという数字からも想像できる通り、優れたテロワールに恵まれている産地と言えます。

 

実際、モンタニーのワインは、とても有名なブルゴーニュの他の村の白ワインのような壮大なスケール感はないものの、ミネラルを備えた骨格を持ち、熟成によって品質の向上する力を備えた、紛れもないブルゴーニュの上質なシャルドネの個性を備えています。

 

それにもかかわらずモンタニーの知名度が低いのは、この地を牽引する有名な造り手に欠けていることが原因かと思われます。

 

もちろん、モンタニーには優れた造り手さんがいます。日本ではまだあまり知られていないかもしれませんが、フランスで注目されているのはステファン・アラダムStéphan Aladameさんです。

 

若いワインを複数テイスティングさせていただきましたが、エントリークラスのワインにも共通して心地よい果実味とミネラルを感じ取ることができました。上級キュヴェになるとワインの密度が高くなり、硬く、シリアスな面も持つ、偉大なワインの可能性を感じさせてくれます。是非、熟成したものを飲んでみたい!と思わせてくれるワインでした。

 

モンタニーの魅力は、その値付けにもあります。知名度が高くないためでしょう、私など、「この値段でいいの?!」と思ってしまうほど、コストパフォーマンスの高いワインがあります。

 

ブルゴーニュの白ワインが好きな方、モンタニーの善良な生産者を応援する気持ちも込めて、一度試してみてください。きっと後悔はしないはずです!

 

 

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