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ワインコラム Archive

ワインコラム 第6回 スペイン ヘレス編

リオハを後にした私は、スペイン北東部に位置するリオハから、スペイン南東部に位置するヘレス(シェリー)へと向かいました。広大なスペインの縦断です!

 

途中、首都のマドリッドへ寄りました。この町には語学学校で一緒だったスペイン人の友達が住んでいます。マドリッドはとても大きな町で、周りを高速道路が複雑に取り巻いています。初めての大都市での運転にとても苦労しました。初めての土地ですし、スペイン語もわかりません。町の中心に行きたいのですが、どのように行けばよいのかわからないまま、完全には理解できない標識に従い、それらしいところで下りて一度停車しました。しかし、自分が今どこにいるのかまったくわからない状況です。このようなとき、ガソリンスタンドは心強い味方です。言葉が通じなくても、地図と身振りで何とかなるものです。苦労しましたが、なんとか街中までたどり着きました。すぐにホテルにチェック・インし、バルでワインとタパスを食べ、友達に電話し、翌日会う約束をしました。

 

翌日、大きなスタジアムで友達と待ち合わせです。マドリッドに住んでいる友達がひとりと、スペイン西部に住んでいる友達二人が合流しました。その日は私の誕生日でした。ちょうど良い機会なのでみんなで集まったわけです。夜、マドリッドに住んでいる友達の友達がさらに集まり、大宴会が始まりました。ボルドーでも何度も飲んだ仲間ですが、20歳ほどのスペイン人の集団の「祭り」は、それはそれはすごいものでした...

 

無事に(?)翌朝を迎えた私は、スペイン西部から来てくれた友達を駅まで見送り、マドリッドを後にしました。観光らしいことは何もしませんでしたが、楽しい思い出のある町になりました。今でも彼らは大切な友達です。

 

さて、また気ままな一人旅の再開です。スペインはとても広い国なので、途中1泊し、いよいよヘレスにつきました。ヘレスは世界を代表する酒精強化(=アルコール添加)ワインであるシェリーの産地で、正式な名をヘレス・デ・ラ・フロンテラといいます。シェリーはこのヘレス・デ・ラ・フロンテラと、近くにあるサンルカール・デ・バラメーダ、エル・プエルト・デ・サンタ・マリアの3つの町を結ぶ三角地帯で主に造られています。アルバリサと呼ばれる、白い土壌が特徴とされていますが、土壌が本当に白っぽく、感動しました!

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世界地図を見ていただければお分かりになると思いますが、この地はアフリカ大陸に程近く、夏はとても暑いところです。8月の午後、日差しが強い時間帯は外を歩く気はとてもしません。太陽は直線的で、その光線を浴びると煙が出そうな勢いです。

 

スペインの習慣に「シエスタ」とうものがあります。日本語に訳すと「午睡」とでもなるのでしょうか。強烈な日差しが照りつけている時間帯は活動せず(=家で寝て過ごす)、その前後の時間帯に働くようです。レストランのディナータイムが始まるのが21時であったり、私のような旅行者からすると困ってしまうのですが、この日差しを体感すると理解できる習慣です。このような暑い中、疲れ切った体に良く冷えた辛口のシェリーはまさにうってつけだと思います。特に、美しい海岸を持つサンルカール・デ・バラメーダには観光客も多く、バカンス中の人々が昼から(朝から?!)バルでシェリーを飲んでいます。私たちの感覚からすると違和感がありますが、やはり土地のお酒にはその土地ならではの飲み方があるのですね。あの暑い地において、良く冷えた辛口のシェリーは必需品のように思えました。元気が出ますし、たこやいわしのマリネのようなタパスにもよく合うのです!

 

しかしシェリーは実に奥が深いワインです。きりっとした辛口タイプの「フィノ」から、紹興酒のような酸化熟成タイプの「オロロソ」、さらに甘口タイプまであるので、一口にシェリーと言っても様々なタイプがあるわけです。実に魅力的なワインだと思います。コース料理を、それぞれのタイプのシェリーに合わせて楽しめるくらいです。奥が深いですね!

 

ヘレスを出た私は、東周りに北上し、バルセロナを経てフランスに戻りました。途中、私が大好きな芸術家であるダリの美術館に寄りました。ワイン以外での稀な寄り道です。彼の作品は奇抜ですが、美術館の外観もすごいですね!

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初めてのスペインでしたが、かなりの距離を走りました。大変ではありましたが、楽しく、勉強になる旅でした!

 

次回は、昨年再び訪れたスペインのお話です。

 

 

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ワインコラム 第5回 スペイン リオハ編

そそくさとドメーヌ・アレッチャを後にした私は、明るいうちにスペインに向かい車を走らせました。何せ、この辺りには何もないのです!

 

狭い山道をぐるぐると走っていると、まっすぐな道沿いに広がる町に到着しました。すると、ここはもうスペインでした!

 

山道で、いつの間にか国境を超えていたようです。国境らしいものなど何もなかったので、本当にいつスペインに入ったのかわかりませんでした。

 

もう薄暗くなってきているので、今日の宿を探します。予想に反して全くフランス語が通じない(英語も)中、どうやらこの小さな町には空きのあるホテルがないことがわかりました。先へ進み、次の町でもホテルには空きがありません。広場には人が集まっていて、どうやらお祭りをやっているようです。なんとかホテルを見つけようと焦りましたが、最終的に泊る所がみつかりました。しかしそれはホテルではなく、キリスト教の巡礼者専用の宿泊所でした。私のような旅行者は一般的には泊めてもらえないのですが、よほど私が困っているように見えたのでしょうか、泊めていただきました。感謝しています!

 

夜は人生初めてのスペインの夜に期待して、バルに繰り出しました。お祭りと言うこともあって賑わっていましたが、ほとんどが地元の人のようです。生ハムやチーズを食べながら、銘柄のわからない赤ワインを飲みました。私には理解できないスペイン語が飛び交う中でしたが、楽しかったです!

 

翌日、スペインを代表するワイン産地、リオハに向かいました。リオハでは白、ロゼ、赤と3つのタイプのワインが造られていますが、この地を世界的に有名にしているのはテンプラニーリョという黒ぶどうから造られる、果実味豊かな赤ワインです。

 

私が訪問したのは、マルケス・デ・リスカル社です。リオハを代表する老舗のひとつで、スペインを代表する芸術家のひとり、ダリも好んだと言われる造り手です。同社のような大きな造り手さんは、時間を決めてワイナリーツアーを企画しているところが多いです。私はスペイン語が全くできませんので、英語のツアーに参加しました。丁寧に詳細を説明してくれながら、ワイナリーの主要な部分を見学することができました。

 

ここで意外な出会いがありました。10名ほどの私のグループの中に、なんとアンドレ・リュルトン氏がいたのです!氏はボルドーにいくつもの上質シャトーを所有する、ワイン界の重鎮です。別に彼が自己紹介をしたわけではないのですが、あの風貌はまさしくリュルトン氏でした。そっくりさんの可能性もありますが、ワインの試飲の際に案内係の人が「当社のワインの熟成用の樽にはアメリカンオークを使用しています。」と説明した時に、リュルトン氏は「うん、確かにアメリカンオークの風味がある。」と発言されました。一緒にいた周りの人は笑っていました。「このおじいさん、ほんとうにわかっているのかな。」という感じだったのでしょうが、私は「さすがリュルトンさんだ!」と思ったものです。

 

私が訪問した2004年は工事中だったのですが、現在同社はモダンなデザインのホテルも経営しています。とても田舎で、周りに何もないようなところですが、ワイン目当てで来る(私のような?)人を対象にしているのでしょう。興味のある方は泊ってみてはいかがでしょうか?

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また、同社は伝統的なスタイルのリオハを造る一方で、研究を重ね、バロン・デ・チレルという銘柄の現代風の偉大なワインも造り出しています。濃縮感があり、力強いワインですが、伝統が培った安定感があり、スペインを代表する赤ワインのひとつだと思います。

 

さて、私はマルケス・デ・リスカル社からすぐの、エルシエゴという小さな村に泊まりました。なんとこの村に、ボルドーの語学学校で友達になったスペイン人が住んでいたのです!翌日、その友達(アナといいます。)と半月ぶり(たいして時間が経っていないですね。)の再会を果たし、彼女にリオハを案内してもらいました。なんとアナの家族もワイン造りをしているとのこと。小規模で、商売というわけではないようですが、この地の伝統など私が知りたかったことをいろいろ教えてもらいました。この地方はやはりスペイン有数のワイン産地だけあって、小さいながらも美しい村々が点在しています。高台にある村からこの地方の遠景を見渡すと、ぶどう畑がひろがり、エブロ川が滔々と流れているのが見えます。心が癒される風景です。

 

アナにいくつかのワイナリーを案内してもらい、レストランで野菜のスープ、兎の煮込みといった食事を取り、短いながらも充実した時間を過ごしました。リオハ地方は、ワイン産地としても、その風景、町並みの美しさからも魅力的なところだと思います。ワイン好きの方には特にお勧めしたいところです。

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アナにお礼を言い、別れを告げて、私はスペイン中央部に進んでいきます。

 

次回はヘレス(シェリー)のお話です。

 

 

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ワインコラム 第4回 フランス 南西部 2 

アラン・ブリュモン氏のワイナリーを後にした私は、フランス南西部では比較的大きな町、ポーを経て、「ジュランソン」というワイン産地に向かいました。

 

この辺りまで来ると、本当に田舎です。ピレネー山脈に近いこともあり、起伏の多い土地には青々と木が茂っています。

 

ジュランソンは村の名前ですが、同時にその周辺で造られているワインの名前でもあります。ジュランソンのワインには大きく2つのタイプがあります。ひとつは香り高い辛口白ワイン。もうひとつは、ぶどうの収穫を遅らせてぶどうの糖度を高めて造る、甘口白ワインです。この甘口タイプは、場合によっては極上のソーテルヌをも凌ぐ、偉大なワインになり得る可能性を秘めています。

 

私はこの地区で2つの造り手を訪問しました。いずれも、フランス国内外で高い評価を得ています。まずは、クロ・ウルラです。

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15haの畑を所有し、家族で運営しているドメーヌ(=ボルドーでのシャトーに相当する単語。)です。村から離れた所にあり、森の中の小道を進んできます。狭い坂道では車がすれ違えないほどで、対向車が来ないことを真剣に祈りながら、ようやくたどり着きました。小ぢんまりとした醸造所で、野性的な風貌のムッシュが案内してくれました。やはりこの辺りまで来ると、フランス語の発音もボルドーとは異なってきます。聞き取りに苦労しながらも、高品質なワイン造りへの取り組みを伺いました。このドメーヌは、甘口タイプが素晴らしいのですが、同時に私がお勧めしたいのが辛口タイプの白ワインです。キュヴェ・マリーという名で、娘さんの名前が付けられています。熟した果実、ミネラルなどの充実した香り、しっかりとした果実味と酸味を併せ持ち、実に高品質で、きらきら輝くような魅力を持ったワインです。このようなワインに、このような山奥?の静かな場所で出会うと、素晴らしい宝物を見つけたような気分になります(笑)。

 

優しいムッシュに別れを告げ、続いてドメーヌ・コアペに向かいました。

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クロ・ウルラからあまり離れていないのですが、例の山道をくねくねと行かなければならず、ここもたどり着くまで苦労しました。こちらは40haの畑を所有し、一見普通の家のようだったクロ・ウルラよりもワイナリー的です。コアペも辛口、甘口両方造っていますが、このドメーヌは甘口を何種類かに造り分けています。遅摘みの場合、単純に言ってしまうと収穫を遅らせれば遅らせるほど甘いぶどうが収穫できます。そこで、「10月のバレエ」、「11月のシンフォニー」などと名をつけた、それぞれ10月収穫のぶどう、11月収穫のぶどうでできるキュヴェを造っているのですが、「10月のバレエ」より「11月のシンフォニー」のほうが全体的に凝縮感があり、濃密です。その中でも、出色のものが「カンテサンス・デュ・プチ・マンサン」というキュヴェで、収穫は何とクリスマスの頃になるそうです。世界的に見ても12月にぶどうを収穫するのは例外的です。

 

単純に収穫を遅らせると書きましたが、実はこの行為は大変なリスクを伴っています。自然の中に、甘くておいしいぶどうを放置するわけです。鳥獣には常に狙われ続けますし、雹など自然の気まぐれが一度でもおこれば一瞬で収穫が無くなってしまいます。ぶどう栽培者にとってぶどうは本当に財産ですから、リスクを背負いながら財産を放置しておくのは尋常な作業ではないと思います。

 

さて、このワインは、すごいです!!香り、味わいともに濃密で、力強いのですが同時に何とも表現し難いエレガンスが表現されていて、造ろうと思ってもなかなか到達できない領域に入っています。まさに、自然と人が生んだ芸術ですね。思い出すだけでため息が出るような、偉大なワインです!

 

余韻に浸りながら、ドメーヌ・コアペを後にした私は、フランス最南西の産地、イレルギーを目指しました。途中、バスク地方の美しい町、サン・ジャン・ピエ・ド・ポーを通ったのですが、このあたりで突然霧に包まれて、どきどきしたのを覚えています。ピレネー山脈のふもとの、山地ですので、起伏が多く走っても走ってもなかなか距離が縮まりません。ようやくイレルギーにたどり着いたときには、すでに1730分になっていました。まだ明るいのですが、ワイナリーは閉まってしまう時間です。

 

ぎりぎり滑り込んだのは、ドメーヌ・アレッチャです。ゆっくりお話を伺うことができなかったのですが、テイスティングをし、畑を見られたことは大きな収穫でした。やはりここにも独自のテロワールがあります。起伏の多い土地に、やや高く仕立てられたぶどうがワイヤーで固定され、きれいに並んでいます。この時期はまだぶどうは緑色で小さく硬かったのですが、南の太陽をたっぷりと受けて、甘いぶどうが収穫されるでしょう。

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ここまで来ると、スペインはもう目と鼻の先です。次回はいよいよスペインのお話です。

 

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ワインコラム 第3回 フランス南西部

手に入れたばかりの車でソーテルヌを訪れた翌日、旅支度を整え、私はスペインに向かい出発しました。

 

89日。6時過ぎに出発したのですが、まだ日が昇らず、暗い状態です。フランスの夏の太陽は、朝は遅いですが、日中はさんさんと地表を照らし、夜22時くらいでもまだ明るさが残っているほど、光を与えてくれます。日本のように19時ころ夕食を取ると、明るい中で食事を始め、食後も明るいまま、なんてことになります。

 

さて、ボルドーからスペインを目指す場合、大西洋の海沿いに、海を見ながら国境を超えるのが一般的だと思いますが、私は途中フランス南西地方のワイン産地に寄り道しました。

 

フランス南西部は、知名度こそないものの素晴らしく上質なワインが「隠れて」いる、非常に面白い産地です。私はこの土地のワインが大好きです。

 

まず最初に向かったのは、マディランという産地です。

 

しかし、ここに着くまで大変でした...なにせフランスでの運転経験が乏しい上に、未知の道を行くわけです。車にも慣れていません。ウインカーをだそうとしてワイパーを動かしたことが何度あったことか(笑)!その程度なら良いのですが、一度死にそうな思いをしたことがあります。

 

フランスの国道は、思いもよらぬものが走っています。

 

ボートを積んだ車や、動物(馬など)を積んだトラックのほか、何に使うのか巨大な石柱や、場合によっては家(!)を載せた大型トラックなどが見られます。これらのトラックはしばしば小さな先導車とペアになっているのですが、かなりスピードを抑えて走行しています。追い越し車線が無い時にこのような車に出会ってしまうと大変です。対向車線からこのような巨大トラックがくると、端によけないとぶつかりそうです。同じ車線にこのようなトラックがいると、遅々として進みません。ブロックされた気の短いフランス人ドライバーは追い越そう、追い越そうといらいらしているのが後ろから見ていてよくわかります。私はまだ買ったばかりの車にも、フランスでの運転にも慣れていなかったのでゆっくり運転していたのですが、このような状況が2度、3度と続くと、さすがに追い越したくなりました。

 

目の前にトラックがいます。対向車線を確認すると、長い一本道に対向車は見られません。緊張しつつ、いくぞ!と対向車線に入りスピードを上げます。中古のフィアットは徐々にスピードを上げていきます。

 

...追い越せません。

 

トラックが長いんです!!本当に、日本の常識が通用しない長さです!

 

ようやく追い越せそうになったとき、さらに同じ型のトラックが続いているではありませんか!スピードも乗ってきているし、一気に長いトラックを2台追い越すことにしました。

 

...追い越せません。

 

どれだけの距離を走ったのでしょうか?500m800mかもしれません。もっとでしょうか。すると、対向車が現れました!アクセルを踏めども踏めどもトラックをなかなか抜くことができません。対向車との距離は縮まるばかり。頭の中に、ブレーキを踏んで、またもとのトラックの後ろに戻ろうか、という選択肢も浮かんだのですが、やはりトラックを追い抜くことにしました。結果、対向車とぶつかる寸前?!でクラクションの中、トラックの追い抜きをすることができました。5年前の話ですが、今こうして書いていても手に汗握る経験でした。

 

それ以来、安全運転を心がけています!

 

さて、脱線話が長くなってしまいました。無事に生きて(笑)たどり着いたマディランは、地元のtannat (タナ)という黒ぶどう品種から力強い赤ワインを造っている産地です。ワインのほかに、世界3大珍味の一つ、フォワ・グラの産地でもあり、地元のレストランではフォワ・グラを摘出した鴨の肉が供され、マディランと素晴らしい相性を見せています。

 

私が訪問したのは、かのトム・クルーズ氏が自家用ジェットでワインを買いに来ると言われる(本当かどうかわかりませんが)アラン・ブリュモン氏のドメーヌです。ここのワインは渋みの元となるタンニンがたっぷりとあり、若いうちはやや粗い印象を受けるほどなのですが、熟成するに従い洗練さを増していきます。飲みごろになると、他のどんな高級ワインにも見つけることができない独特の高貴さを備えてきます。

 

実際に畑を案内していただき、ぶどうの樹を観察しました。ボルドーから少し南に来ただけなのに、ぶどうの樹の仕立て方が違います。

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ぶどう品種が違うということももちろんあるのでしょうが、やはりテロワール(=ぶどう畑と、それを取り巻く環境)が違うのでしょうね。その土地、気候に合ったぶどう品種を植え、最適な栽培をする。シンプルですが、これが物事の本質ですね。

 

続いて醸造所を見せていただき、テイスティングもさせていただきました。畑も、醸造設備もシンプルながら、一つ一つの作業を丁寧に行うことが偉大なワインへとつながるのだと実感しました。

 

いろいろ貴重な経験をさせていただいた一日でした(笑)!

 

次回は、南西地方第2話です。

 

 

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ワインコラム 第2回 ボルドー ソーテルヌ編

前回のコラムでは、私がワインを勉強するために会社を辞め、ボルドーへ飛び込んだところまで書きました。

 

7月いっぱいで、語学学校の寮を出てボルドー市内中心部の住まいに移りました。この時期はとても暑かったことを覚えています。昼間、家の近くの道を歩いていると太陽につぶされそうな感じがしました。

 

シャトーでの仕事が始まるのは9月から。私が8月をどのように過ごしたかというと、とにかく車に乗って、シャトーを訪問しました。

 

中古で手に入れた車はイタリアのフィアット社のやや大型のものでした。幸い?私は日本での運転の経験があまりありませんでしたので、フランスの交通ルールで車を運転することにそれほど戸惑いはありませんでしたが、教習所以来のマニュアル車の運転には最初苦労しました...

 

しかしすぐに慣れ、いよいよシャトー巡り開始です。

 

まず最初に訪れたのは、ボルドーが世界に誇る「貴腐ワイン」の産地、ソーテルヌ地区です。

 

貴腐ワインとは、ボトリティス・シネレアという菌(かび)が付いた、一見腐ったように見えるぶどうから造られる甘口ワインです。実際はボトリティス菌はぶどうを腐らせておらず、ぶどうから水分を奪います。そのようなぶどうを搾ると凝縮された甘い甘い果汁が得られ、それを発酵させると得も言われぬ味わいを持つ甘口ワインができます。こうしてできる、自然の奇跡による極上の甘口ワインを、人は畏敬の念を込めて貴腐ワインと呼ぶわけです。

 

現代ではごく普通のぶどう果汁を原料に、人工的にたやすく甘口ワインを造ることができますが、貴腐ワインのように自然の恵みによる甘口ワインを造るのは非常に手間暇がかかります。自然と真摯な生産者により生まれたこの「黄金の飲む宝石」ですが、生産者は販売に苦労しているようです。

 

砂糖が普及する以前、甘口ワインは王侯貴族だけが楽しめる正真正銘の高級ワインでしたが、砂糖の普及、料理のヘルシー志向により、甘口ワインの人気が無くなってきています。みなさまは、甘口ワインを積極的に日常に取り入れていますか?確かに、現代の私たちに、ゆっくりと時間をかけて甘口ワインを楽しむ時間は取れないかもしれません。しかし、忙しい現代にこそ甘口ワインを楽しむような時間を取ってみてはいかがでしょうか?甘口ワインは通常の赤ワインなどに比べ保存性が高いですから、抜栓後冷蔵庫に入れておけば1週間くらいは平気でもちます。この1杯は、きっと心に効きますよ!

 

少し脱線してしまいました。ソーテルヌ地区についてですが、ソーテルヌという名の小さな村を中心に、バルサック、プレニャック、ボムなどのいくつかの村がソーテルヌという名の貴腐ワインを生産しています。ボルドー市から来ると、まずバルサック村に着くのですが、ここは比較的なだらかな土地です。そこから数km離れたソーテルヌ村近くになると、起伏に富んだ地形になります。土壌も、目に見える表土は前者は砂・粘土質で濡れるとべたっと重そうであるのに対し、後者は小石が混じり、比較的水はけがよさそうでした。このような違いが、ワインの味わいにも影響するのでしょうね。

 

貴腐ワインですが、世界中どこでも造ることができるわけではありません。特殊な環境が必要です。その環境を作るのに一役買っているのが、この土地の場合「シロン川」という小さな川です。収穫期が近づいてくると、この川から発生する朝の霧がぶどう畑を包みます。その湿気によりぶどうにボトリティス菌が繁殖しますが、午後になると霧は消え失せ、太陽がさんさんと照り付けます。こうすることにより、ぶどうは腐りきらず、健全な「貴腐」状態になるわけです。

 

今回私が訪問したのは、「シャトー・ダルシュ」です。ソーテルヌ村のすぐ近くにあり、1855年、ナポレオン3世が作成させた優良シャトーの格付けで、見事第2級に列せられた由緒あるシャトーです。「シャトー・ダルシュ」という名の貴腐ワインのほか、特別に優れたぶどうから造られる「シャトー・ダルシュ・ラフォリー」という特別キュヴェも造っています。生産者と直接話すことができ、いかに貴腐ワイン造りが難しいか、困難かを教えていただきました。貴腐ワインの出来は、まさに自然にかかっています。うまく貴腐が発達すればよいものの、世界的に名の知られたソーテルヌでさえ、理想的に貴腐が着くのは稀なことです。あまり貴腐が発達しない年は、生産者は貴腐状態のぶどうのみ、まさに一粒ずつ収穫しなければなりません!あの広い畑で、ぶどうを調べながら一粒ずつの収穫...考えるだけで、その困難さにぞっとします。ただでさえ収穫は重労働なのに!

 

...貴腐ワインは、ありがたく、感謝の気持ちをもっていただきましょう(笑)

 

貴重な勉強をさせていただいた一日でした。

 

さて、シャトー・ダルシュは優れたワインの造り手ですが、同時にホテルも運営しています。こぢんまりとしていますが、白を基調にした美しい、高級感のある佇まいです。甘口ワイン好きのかたは、この甘口ワインのメッカで美しい、甘い夜を過ごしてみてはいかがでしょうか?

 

帰りは運転を始めて、初めて高速道路に乗りました(私はワインの造り手を訪問するとき、ワインのテイスティングをしますがワインを飲みこまず、吐き出しています。プロの方は皆そうだと思いますが...。飲酒運転は絶対にしません!)。

 

翌日から、語学学校で友達になったスペイン人たちとの友情が熱いまま、スペインを目指します。もちろん、ワイン産地にも行きました。

 

次回は南西フランスのお話です。

 

 

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ワインコラム 第1回 ボルドー 到着編

こんにちは。Clos Yの中西です。

 

コラムとして、私が今まで訪問してきたワイン産地の話を書いていこうと思います。

 

まずは、実際にワイン造りを経験することができたフランスのボルドー地方のお話です。

 

私はボルドー市内のほぼ中心部で、2004年の7月から2005年の6月まで、丸一年暮らしていました。目的はただ一つ、「ワインを勉強すること」でした。

 

まず、私がボルドーに住むに至るまでの経緯を説明させてください。

 

大学を卒業し、入社した会社で私はワインの輸入に関する仕事をしておりました。輸入したワインは当然売るわけで、ワインを売るための手助けになる販売促進物を作ったり、試飲会でワインをサービスしたりしていました。

 

しかしある日、ふと重要なことに気づいたのです。

 

それは、「私はワインを説明して売る立場にありながら、世界的に有名なぶどう品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンすら見たことがない!」という事実でした。そうなると、いてもたってもいられません。幸い、取引先のボルドーのワイン会社に相談したところ、研修生として働かせてもらえるシャトー(=ワインの生産者)を紹介してもらえました。その生産者と個人的に連絡を取るのと並行してビザを申請し(ビザでは苦労しました...!)、勤めていた会社を辞め(お世話になった先輩方には今でも感謝しています!)、ボルドーへ飛び込んだわけです。

 

不安はありました。大学でフランス語を勉強し、フランスに1年間留学しており、ボルドーにも1ヵ月間住んでいた経験があったのですが、フランス人とともに働くのは初めてでしたし、ワイン造りの仕事は具体的にどのようなことをするのかわかりませんでした。住むところも決まっていませんでした。

 

しかし、気持ちとしては希望が大きな割合を占めていたと思います。これから始まる新しい生活への期待。そして、何よりワイン造りの現場で働けるのです...!!

 

出国前は忙しかったと思うのですが、気がつくとボルドーにいたように思います。

 

ボルドーはフランスでも上位5位に入る大きな町です。世界的に有名なワイン産地なので、さぞワイン、ワインした町かと思うでしょうが、実際のボルドーの町はそれほどワインを思わせるものがありません。ぶどう畑はボルドー市内には無く、数kmから数10km離れた所にあります。

 

7月初旬にボルドーに着いた私は、まず予め申し込んでおいた語学学校に行きました。1ヵ月の短期集中コースです。目的は語学の勉強ではなく、付属の寮があったのでそこに住みながら、今後暮らす部屋と車を探すことでした。

 

それなりに苦労しましたが、首尾よく住まいと車を手に入れました。授業もそれなりに?!出席して、とても大切なもの、友達を得ました。クラスメイトにはスペイン人が多かったのですが、彼らはかなりのりがよく、夜な夜な飲み明かしたものです。飲んだなあ... 後日、彼らを訪ねにスペインに行くことになります。そのお話もいずれご紹介する予定でいます。

 

さて、この時点で8月。契約したシャトーで働く9月まで、あと少しです...

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次回に続く。

 

 

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