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ワインコラム 第37回 ワイン産地訪問の話 ポルト編

もうすぐクリスマス。寒い日が続き、飲みたいワインも夏に欲しかったすっきりした白ワインから、重厚な赤ワインへと変わってきているのではないでしょうか?
 
そんな季節にぴったりの、体も心もほっとするワインのお話です。

 

今回ご紹介するのは、ポルトガルが世界に誇るポート・ワイン(英語でPort Wine、ポルトガル語でヴィーニョ・ド・ポルト Vinho do Porto)です。

 

ポート・ワイン。飲まれたことがある方も多いかと思うのですが、実際にポート・ワインとはどのようなワインか正確に説明するのは難しいですね。食前に少しだけ飲むアペリティフ向きの軽めのタイプが多いですが、ヴィンテージ・ポートVintage Portoは世界中のワインの中でもトップクラスの極上ワインです。

 

さて、このポート・ワインですが、いろいろな意味で特殊なワインです。

 

まずはその製法からお話しましょう。収穫されたぶどうは直ちに発酵されるのですが、通常のワインと異なり、ポート・ワインの場合はアルコール発酵中のぶどう果汁にアルコール度数77度のブランデーを添加し、アルコール発酵を止めてしまいます。すると、ぶどう果汁に含まれる糖分がアルコール発酵の作用によって失われることなくワインの中に残り、甘口ワインとなります。

 

ポート・ワインは甘いものが多いですが、あの甘味はぶどう果汁由来の天然の甘味ということですね。

 

アルコール発酵に関して、もうひとつお話があります。収穫されたぶどうから果汁を取り出すために、世界規模で一般的には機械を使って処理をします。昔ながらに人間が足でぶどうをつぶす、なんてことはとうに昔話になってしまっているのですが、ポート・ワイン、それも極上のものに限り、今日でも人間が足でぶどうを踏むということがあります。大変な重労働で、人件費もかかるのですが、優しくぶどうをつぶすことによって質の良い果汁が得られるようです。ポート・ワインの中でも、ほんとうに、ごくごく一部の例外的なお話ですけれども。

 

さて、もうひとつのポート・ワインの特徴は、ぶどう栽培地域とワインを熟成させる土地が異なることです。一般的にはぶどうが栽培されている場所に醸造所があり、そこで醸造されたワインをその場で熟成させていきます。ところが、ポート・ワインの場合、ぶどう畑が広がるのはドウロ(Douro)川周辺の険しい土地です。この土地の風景は圧巻で、殺伐とした乾いた風景の中、急斜面に開かれたテラス状のぶどう畑が広がっています。何でも、硬い岩盤はダイナマイトで爆発させて開墾していくようです...!

Douro Douro畑2 

しかし、ワインの熟成は海沿いの大きな町、ポルトPorto市対岸のガイア地区(Vila Nova de Gaia)で行われなければなりません。このようなことが定められているのは世界的にも珍しいことです。

Porto遠景2 ポルトの街並み。

さて、肝心のポート・ワインですが、さまざまなタイプがあります。生産量の多いルビーRuby、熟成期間の長いトウニーTawny、白いホワイト・ポートWhite Port、そしてなんといってもヴィンテージ・ポートVintage Portです。

 

ルビー・ポートはその名の通り鮮やかなルビー色で、熟成期間が短く、フルーティな甘味を気軽に楽しめるポートです。恐らくポート・ワインを口にされたことがある方の、大部分がこのルビー・ポートを召し上がられたのではないでしょうか。

 

しかし、ポート・ワインの神髄はこの先にあります。まずはトウニー。良質なぶどうを原料としたポートを、10年、20年、ときにはそれ以上の歳月を樽で熟成させたものです。結果ワインは褐色を帯び、キャラメルやシガー、ヴァニラやスパイスなどの複雑な香りを帯び、余韻の長いワインになります。

Porto大樽 熟成用の、使い込まれた大樽。

そして、ポートの王様はヴィンテージ・ポートです。優れた年にのみ造られる、その名の通りヴィンテージの入ったポート・ワイン(逆に、ルビーやトウニーはヴィンテージが入っていません。)で、樽熟成はあまり長い時間取られずに瓶詰めされます。若い状態で飲むと黒いような濃厚な色調で、香りも濃厚、凝縮された甘味があり、同時にしっかりとしたタンニンが感じられるスーパー甘口赤ワインです。最低10年、できれば20年は寝かせてから飲みたいワインです。すると、瓶熟成により風味がまろやかかつ複雑になり、世界で最も偉大なワインのひとつの座を占めてきます。

 

ひとつ気をつけたいのは、ヴィンテージ・ポートは熟成とともに大量の澱を生じることです。この澱が瓶内に舞い、グラスに入ってしまうとせっかくの高貴なワインが台無しになってしまいます。このようなワインこそ、ソムリエが必要かもしれませんね。

 

疲れた時、いいことがあった時、記念日、いつ飲んでも素敵なポート・ワインですが、やはり冬が一番楽しめるのではないでしょうか。クリスマスに、フォワ・グラのポワレと合わせるもよし、ガトー・ショコラとの相性も抜群です!

 

もちろん、優れたヴィンテージ・ポートは単体でじっくり向き合うのも素敵ですね。

 

年末・年始をポートとともにじっくり過ごしてみてはいかがでしょうか?

 

Clos Yでは、2010年1月3日のレストラン講座極上ワインと料理のマリアージュでヴィンテージ・ポートをご用意しております。まだお席に空きがございますので、ご興味のある方は是非いらしてください。

 

 

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vinclosy@aol.com

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