- 2009-11-14 (土) 15:39
- ワインコラム
毎回気ままにワインのお話を書いておりますが、今回はチーズのお話を書かせていただきます。
もともと私がワインを好きになったのは、チーズとワインを一緒に食べたときのマリアージュによる感動からでした。チーズは子供のころから好きでしたので、フランスに住んでいた時に、いくつかのチーズ村を訪問してきました。
今回ご紹介するのはフランス北部、ノルマンディー地方に位置するカマンベールCamembert村です。白カビチーズの代表格で、世界的に有名なカマンベール・チーズ発祥の地です。
カマンベールは日本でも人気のチーズですね。国内でも「カマンベール・チーズ」が生産されていますが、フランスのカマンベール・チーズは、正式名称をカマンベール・ド・ノルマンディーCamembert de Normandieと言い、原産地呼称法(A.O.P.)で保護されています。このカマンベール・ド・ノルマンディーは製法、産地などが厳しく定められていて、殺菌をしない生乳で造られなければなりません(逆に、日本産のカマンベール・チーズは必ず殺菌された牛乳から造られます。)。
カマンベールに限った話ではありませんが、無殺菌乳から造られたチーズは熟成が進むにつれて複雑な味わいが得られます。同時に、匂いも強くなっていきます。
カマンベールはポピュラーなチーズですが、無殺菌乳を原料とした、熟成の進んだものはかなり個性の強いチーズだと思います。
さて、そんなカマンベール村を訪れることを決めた私は、ちょっとした冒険を強いられることになりました。
訪問したのはフランスに留学していたときで、私は学生で、車を持っていませんでした。まずは、パリから北西方面に、リジウーLisieuxという町まで電車で行きました。電車で行けるのはここまで。次に、リジウーから少し南に位置するヴィムティエVimoutiersまでバスで行けました。
さて、ヴィムティエに着いたものの、ここから先カマンベール村までの交通手段がありません。いろいろ尋ねてみたのですが、どうやらヴィムティエからカマンベールは近いので歩いて行けるとのこと。
道もわからないですし、不安がありましたがとりあえず行こう!と歩き始めました。
しかしこのときは不安でした...自分が今歩いている方向が合っているかわかりませんでしたし、周りになにもない田舎道です。方向が合っているにしてもどれだけ歩けばよいのか...
ふと道の端を見ると、蛇が車に轢かれて死んでいました。
...蛇が出るんだこの道...
不安に緊張が加わりました。
カマンベールへの道がこれほど険しいとは!!
しかしここまで来て引き返すわけにもいきません。とりあえずまだ明るいし、もう少し歩き続けよう、と歩いていると...
ありました!カマンベール村です!!
牛がいます。カマンベールのお母さんたちですね。私が歩いているのを見つけると、よほど人が珍しいのでしょうか、5、6匹の牛たちが柵のほうに寄ってきて、私を追うように歩いてきました。...けっこう怖かったです。
しかし世界的に有名なチーズを産するこの村、実際は村というより、数軒の建物の集まり、といった感じです。
それでも観光客がくるのか、カマンベールの造り方を紹介するメゾン・デュ・カマンベールMaison du Camembertがありました。あとは、大手乳製品会社のプレジデントの工場が目立つほどで、他には何もありません。
しかしこの広い牧場、良質な草、健康な牛たちが、上質なカマンベールの鍵なのかな、と、ここまで来られたことをうれしく思いました。
この日の夜は、農家製の、熟成の進んだ(臭い)カマンベールをおいしく頂きました(笑)。
さて、カマンベール・チーズと一緒に何を飲みましょうか?王道は、ワイン、ではなくて、同じノルマンディー地方で産するりんごのお酒、シードルでしょう。同じ産地の食材とお酒は不思議と良く合うものです。
しかし私はワイン派です!実際にワインを合わせようと考えると、チーズの状態(熟成度合い)が重要になってくると思います。カマンベールが若い状態であれば、まろやかな白ワインや若くてそれほど渋みの強くない赤ワインがいいでしょう。しかし熟成が進んで風味が強くなったカマンベールは、重厚でこくのある赤ワインがいいのかな、と思います。
チーズもワイン同様、特定の風土(テロワール)が生み出す、生きている食品で、奥深いですね!
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