- 2009-09-28 (月) 11:21
- ワインコラム
「テロワール」
ワインを語る上で、よく耳にする言葉ですね。
テロワールとは、フランス語の単語terroirです。実際にフランス語の辞書を引いてみると、「地方」、「領土」などの意味があります。
ところが、ワイン用語としてこの単語が使われる場合は意味合いが異なってきます。実はこの単語は曖昧な部分がありまして、使われる文脈により多少意味が変わるのですが、「ぶどう畑とそれを取り巻く環境」と定義できると思います。
このテロワールという単語が多く使われるのは、フランスのブルゴーニュBourgogne地方です。なにしろこの土地では畑がとても細かく分かれていて、ひとつひとつの畑に名前がついてあり、さらに格付けまで存在するのですから!
もしかすると、そのブルゴーニュの対極にあるのがシャンパーニュChampagneかもしれません。大手メゾンがブランド戦略でマーケティングを展開し、消費者は「ラグジュアリーな泡の出るお酒」としてシャンパーニュを受け入れます。
それが悪いことだとは言いません。しかし、ここで私がはっきりと申し上げたいのは、シャンパーニュも他のワイン同様、ぶどうが生まれ育ったテロワールをしっかりと反映した上質ワインである、ということです。
シャンパーニュ地方のぶどう畑
シャンパーニュ地方にもグラン・クリュGrand Cruがあります。このことすらあまり知られていないのは、いかにシャンパーニュ地方が「テロワールのワイン産地」として見られていないかを表しているように思えます。
実際、ワインの品質の約8割は原料となるぶどうで決まりますので、シャンパーニュもいかによいぶどうを確保するかが品質の鍵になります。
そこで重要になってくるのがグラン・クリュです。シャンパーニュ地方では17の村がグラン・クリュに指定されています。豊潤で完璧なバランスを持つヴェルズネイVerzenay、緻密で雄大なアイAÿ、鋼のように堅固な構成のメニル・シュール・オジェMesnil sur Ogerなど、グラン・クリュのシャンパーニュは明らかに他と一線を画しています。
ヴェルズネイの畑
アイの畑
メニル・シュール・オジェの畑
前回のコラムでご紹介したエグリ・ウーリエEgly Ouriet、サロンSalonなども、グラン・クリュのシャンパーニュです。
今回はアイAÿ村をご紹介いたします。中世よりシャンパーニュ地方最上のテロワールとされ、今日でもそのピノ・ノワールの品質は群を抜いています。
村自体は、小さくて静かな、フランスの田舎のどこにでもありそうな(失礼!)佇まいですが、村の北側にある南向きの斜面畑は見るからに別格の様相です。この村にはボランジェBollinger、ゴッセGossetなどの高品質メゾンが軒を連ねています。
その中で、2008年に私が訪問した造り手はガティノワGatinoisです。ガティノワのシャンパーニュは2007年のシャンパーニュ騎士団叙任式で公式に使われました。私はソムリエとしてサービスに携わったのですが、入手困難な綺羅星のような錚々たるシャンパーニュが並ぶ中で、ひときわ輝きを放っていたのがガティノワでした。
このメゾンのシャンパーニュの特徴は、何と言ってもアイのピノ・ノワールによる芳醇さでしょう。シャンパーニュというより、まるでピノ・ノワールの赤ワインを飲んでいるようなエレガントで緻密な香り、細やかな味わいは、かつて王侯貴族に愛されたアイのテロワールの偉大さを余すところなく表現しています。
訪問したメゾンはしかしながらこぢんまりとしており、家族単位で仕事をしている様はまさに職人だと思いました。
エグリ・ウーリエ、サロン、ガティノワ...
偉大なシャンパーニュは、やはり偉大なテロワールから生まれるようですね。グラン・クリュがグラン・クリュとされている理由は、やはりそのシャンパーニュを飲めばわかるわけです。
これからは、いつもの有名メゾンのシャンパーニュもいいですが、「テロワール」を感じる村単位のシャンパーニュにも注目してみてください!
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