- 2009-07-26 (日) 19:06
- ワインコラム
偉大なるワイン生産地ブルゴーニュの中でも、ひときわ精彩を放つ村がいくつかあります。世界一高価な赤ワインであるロマネ・コンティRomanée-Contiを産するヴォーヌ・ロマネVosne-Romanée村、世界一高価な白ワインであるモンラシェMontrachetを産するピュリニー・モンラシェPuligny-Montrachet村とシャサーニュ・モンラシェChassagne-Montrachet村。この村々に並び称されるのが、ブルゴーニュ一勇壮な赤ワインとされるシャンベルタンChambertinを産するジュヴレイ・シャンベルタンGevrey-Chambertin村です。
今回は、そのジュヴレイ・シャンベルタン村を訪問した時のお話です。
この村はブルゴーニュの中でも偉大なワイン生産地区であるコート・ドールCôte d’Or北部に位置しています。村自体はとても小さく、住民全員が顔見知りであるようなところです。数件のレストランとワインショップ、小さなたばこ屋さんなどがありますが、スーパーマーケットなどはありません。本当に静かで小さな村です。
ワイン産地として有名ですので、村は畑に囲まれています。今回は歩いて見て回った畑の様子をご紹介しようと思います。マニアックになりますので、ご注意ください。
まずは北から順に見ていきましょう。正確に言うと、ジュヴレイ・シャンベルタンというワインは、北隣りのブロション村の畑で取れたぶどうからでも造ることができます。今回は1級畑=プルミエ・クリュPremier Cruと特級畑=グラン・クリュGrand Cruのご紹介に限らせていただきますので、純粋にジュヴレイ・シャンベルタン村のみをご案内いたします。
最北に位置する格付け畑はシャンポーChampeauxという名の畑です。ブロション村との境目にあります。標高約350m、丘の斜面やや上部に位置しています。白っぽい茶色の痩せた土壌には小石が多く含まれています。さすがプルミエ・クリュ、いいぶどうが取れそうです!
シャンポーの上部には、グーロGoulotという畑があります。隣ですのでお互い似た感じです。
グーロの南隣には、コンブ・オ・モワヌCombe au Moineという畑があります。
この畑も一部がシャンポーと接しているのですが、この畑は見るからに急斜面の、偉大な畑です。丘の上部にある畑で、森と接しています。畑の表面は石ころだらけで、いかにも水はけがよさそうです。水はけが良いと粒の小さな凝縮されたぶどうが収穫できます。
コンブ・オ・モワヌの東隣にはプティ・カズティエPetits Cazetiers、その南隣にはカズティエCazetiersという、これも評価の高い畑があります。
そしてその南隣りがクロ・サン・ジャックClos Saint-Jacquesです。
この畑はジュヴレイ・シャンベルタンのプルミエ・クリュの中でも最高評価を受けています。南東向きの斜面畑で、良いテロワールであることが一目瞭然です。その斜面下部にはクロ・デュ・シャピトルClos du Chapitreがあります。この丘にはその西側にラヴォー・サン・ジャックLavaut Saint-Jacques、エストゥルネル・サン・ジャック、Estournelles Saint-Jacques、ポワスノPoissenot、レ・ヴァロワーユLes Varroilles、ラ・ロマネLa Romanée、ラ・ボッシエールLa Bossièreのプルミエ・クリュがあります。
ジュヴレイ・シャンベルタン村にはこの丘の向かいにもう一つ別の丘があります。その斜面に、この村を代表するグラン・クリュがあり、その周辺にさらにプルミエ・クリュがあります。
クロ・サン・ジャックから斜面を下ってくると、反対の丘の麓にクレピヨCraipillot、シャンポネChamponnet、フォントニーFonteny、コルボーCorbeaux、イザールIssartなどのプルミエ・クリュがあります。イザールの南隣りから、いよいよグラン・クリュ畑の登場です。
斜面上部、標高300mほどのところにリュショット・シャンベルタンRuchottes-Chambertinがあります。この村のグラン・クリュの中で最も標高が高い所にあり、比較的エレガントなワインができます。その斜面下部にあるのがマジ・シャンベルタンMazis-Chambertinです。色が濃く、タンニン豊富な凝縮されたワインができます。
さて、マジ・シャンベルタンの南隣りが、この村で一番長い歴史を誇るシャンベルタン・クロ・ド・ベーズChambertin-Clos de Bèzeです。
ベーズ修道院が所有していた畑で、その歴史を630年まで遡ることができます。球体のように調和のとれたワインができると言われています。
そしてその南隣りが、この村(ジュヴレイ・シャンベルタン)の名にもある、シャンベルタンChambertinです。
この畑があまりに有名になったため、ジュヴレイ村の人たちはこの畑の名前を村の名前にくっつけたわけですね。シャンベルタン・クロ・ド・ベーズに次ぐ歴史を誇る、銘醸畑です。かつてベルタンという農民がその畑(畑はフランス語でシャンchampsといいます。)を所有していたためその名がついたようです。力強い、長期熟成に耐え得るワインを生み出します。現在この村には9つのグラン・クリュがありますが、シャンベルタン・クロ・ド・ベーズとシャンベルタンがトップ中のトップとして評価されています(シャンベルタン・クロ・ド・ベーズのぶどうから造られたワインは、シャンベルタンとして販売することができます。その逆は不可)。
さて、続いて南隣りには、ラトリシエール・シャンベルタンLatricières-Chambertinがあります。「野性的」とか「軽い」とか評論家により意見が分かれていますが、私はどちらかというと軽めのワインを産する畑かな、と思っています。とはいえ、グラン・クリュの中での比較なので、一般的な水準からみれば上質なワインを産する畑です。
さて、このグラン・クリュが並ぶ地区には、グラン・クリュ街道と呼ばれる小道が通っています。車がやっとすれ違うことができるくらいの道です。シャンベルタン・クロ・ド・ベーズからこのグラン・クリュ街道を挟んだところ(斜面下部、一段低くなっている)にシャペル・シャンベルタンChapelle-Chambertinがあります。この村のグラン・クリュの中で最も繊細で優雅なワインを生むと言われています。その南隣りがグリオット・シャンベルタンGriotte-Chambertinです。わずか2.7haほどの小さな畑で、そのためワインの生産量も少ないのですが、ワインはその名の通りグリオット(さくらんぼ)の香りがすると言われています。正直、グリオット・シャンベルタンでなくてもグリオットの香りがするワインはたくさんあるのですが、この畑のワインは特にグリオットの香りが際立っている、とか...
その南隣りにシャルム・シャンベルタンCharmes-Chambertinがあり、さらにその南隣りにはマゾワイエール・シャンベルタンMazoyères-Chambertinがあります。シャルム・シャンベルタンは西側に、グラン・クリュ街道を挟んでシャンベルタンと接しています。マゾワイエール・シャンベルタンでとれたぶどうからできたワインはシャルム・シャンベルタンとして販売できます(マゾワイエールの名で売られるのはごくわずか)。シャンベルタンとは正反対のような、しなやかで優美なワインが生まれますが、両者合わせて30ha以上もの広さがあり、造られるワインも様々です。中にはがっかりさせられるものもあります。
以上、リュショットからマゾワイエールまで、9つのグラン・クリュをご紹介いたしました。
これらのグラン・クリュの周りにもプルミエ・クリュ畑があります。リュショットの南隣りかつクロ・ド・ベーズの西隣りにベレールBel-Airがあります。斜面上部で傾斜がきつく、日当たり、水はけともに良さそうな、見るからにいい畑です。マジ・シャンベルタンの東隣には、オ・クロゾーAu Closeau、ラ・ペリエールLa Perrière、クロ・プリウール・オーClos Prieur-Haut、シェルボードCherbaudes、プティット・シャペルPetite Chapelle、アン・エルゴEn Ergotとプルミエ・クリュが続きます。そしてラトリシエール・シャンベルタンの南隣りにはオ・コンボットAux Combottesというプルミエ・クリュがあります。
以上、ジュヴレイ・シャンベルタン村の全てのグラン・クリュとプルミエ・クリュ畑をご紹介いたしました。
この村最南端のオ・コンボットから南は隣村のモレ・サン・ドゥニの領域になり、クロ・ド・ラ・ロシュClos de la Roche、クロ・サン・ドゥニClos Saint-Denisなどのグラン・クリュが続いていきます(8月2日のレストラン講座で、極上の造り手によるクロ・サン・ドゥニをご紹介いたします。詳しくはこちらをご覧ください。)。
長々と畑をご紹介いたしました。興味のない方には、長いしつまらないし最悪でしたね。
訪問したドメーヌの話も書きたかったのですが、また別の機会にさせていただきます。
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