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ワインコラム 第16回 イタリア ピエモンテPiemonte編

フランスと並び、世界1位のワイン生産量を誇る(年によりフランスかイタリア、どちらかが首位になります。)ワイン大国イタリア。20ある州全てでワイン造りが行われている、まさに「ワイン王国」です。イタリアワインの面白さは、地方ごとに独特の品種があり、実に多様性に富むワインに満ちていることではないでしょうか。今回はその中でもトスカーナ州と並び2大銘醸地と言われるピエモンテ州をご紹介したいと思います。

 

私は個人的にイタリアが大好きです。初めてのヨーロッパ旅行もイタリアから入ったのですが、自分の車で本格的にワイン産地を巡ったのは2005年のことです。

 

ピエモンテ州はイタリア北部に位置し、フランスと国境を接しています。私はフランスのサヴォワ地方Savoieからアルプス山脈を越えてイタリアに入りました。5月でしたがところどころに雪が残っており、アルプスの険しい岩肌、生命力あふれる木々の緑、青い空のコントラストに感動の、本当に美しいドライヴでした。

 

山を降り、ピエモンテ州の州都であるトリノtrinoに着きました。私はイタリア語がわかりませんし、イタリアでの運転も初めてだったのでこの町からどのように進んだらよいのか迷いましたが、アルバAlbaと言う町を経由して、なんとか目的地であるバルバレスコBarbaresco村にたどり着きました。

 

ピエモンテ州を代表するぶどう品種と言えば、ネッビオーロNebbioloという黒ぶどうで異論ないでしょう。バルバレスコ村から程近くにバローロBaroloというワインの産地がありますが、ネッビオーロからできるバローロは「ワインの王、王のワイン」という誇らしげな呼び名を持っています。

 

バルバレスコはバローロの弟分と表現されることがありますが、同じくネッビオーロ100%で造られる長期熟成に向く重厚なワインです。

 

初めて訪れたバルバレスコ村は、有名なワイン産地らしくぶどう畑に囲まれて...というより本当に田舎で畑以外に何もないような...美しいところでした。

 

夕方に着いたのですが、ホテルが決まっていません。そのような状況下、ありがたいことに観光案内所があり、そこの人がとても親切で、数件の宿泊所に電話をしてくれました。その結果、今日泊まることになったのはバルバレスコ村の民宿です!「アグリツーリズモ」という単語がありますね。農家が宿をやっているところですが、私がお世話になったのもまさにそのようなところでした。ワイン農家さんです。本当に畑ばかりの土地でしたから、私がこのようなところに泊まることになったのも、考えてみれば自然な流れと言えるでしょう。

 

夜はこのような小さな村にある、ミシュラン一つ星のレストランアンティネAntinèに行きました。選んだワインはバルバレスコのみならずイタリアを代表する造り手、ガイヤGaja。凝縮されていると同時に磨き抜かれた洗練を感じさせるワインで、素晴らしかったです!

 

翌日、バルバレスコ・ワインを産する村のひとつネイヴェNeiveにあるブルノ・ジャコーザBruno Giacosaを訪れました。伝統的ワイン産地であるバルバレスコですが、今日のワインのスタイルは大きく3つにわかれています。伝統的にワインを大きな樽でじっくりと熟成させる「伝統派」と、ボルドー地方で使われているバリックBarriqueと呼ばれる225ℓ容量の小さな樽で比較的短期間ワインを熟成させる「モダン派」と、両者折衷型の「中道派」です。高級ワインは嗜好品なのでどれがよいとは言えないのですが、どのスタイルでもトップ生産者のワインは言葉で表現するのが難しいほど素晴らしいものです。ブルノ・ジャコーザは伝統派のトップクラスの造り手で、私はこの訪問を楽しみにしていました。

 

みなさん、イタリア人と聞くと、どのようなイメージがありますか?陽気で、人生を楽しむのが上手で...というような明るいイメージではないですか?実際そのような人が多いように思うのですが、ここで私を案内してくれたイタリア人男性は「シリアス」としか言いようのない人でした。本当に真剣にワイン造りに取り組んでいるのがびしびし伝わってきます。日本の伝統文化を受け継ぐ職人のような雰囲気かもしれません。それは「ここで働けるのは名誉なことだと思っています。」という彼の言葉にも表れている気がします。ワインは偉大な土地の力を表現しきったような偉大なものでした。ゆっくり、時間をかけて飲んでみたいものです。

 

昼食を比較的大きな町アルバで簡単に済ませ、午後はあの「ワインの王、王のワイン」バローロの造り手、チェレットCerettoを訪れました。バローロもバルバレスコ同様3つのスタイルのワインに分けられますが、チェレットはモダン派に属し、様々なワインを造っています。ワイナリーは小高い丘の上にあり、そこから見下ろすすり鉢状の畑の眺望は素晴らしかったです。

ceretto2

ワインも然り、畑名入りのバローロは同じネッビオーロから造られるワインでありながらブルノ・ジャコーザのものとは違った表情で、素晴らしく上質という共通点以外、細部が異なり面白いテイスティングでした。

 

バルバレスコもそうでしたが、バローロの辺りは土地が起伏に富み、畑が細分化されていて日当たりのよい優れた畑のぶどうからできるワインが上質であることが多いです。そういった点がブルゴーニュに似ているな、と思います。ブルゴーニュと似ていると思わせる点はまだあります。生産者の規模が比較的小さいということです。自らが所有する小さな畑で一生懸命働き極上のぶどうを収穫し、それをワインに変える。こうした素晴らしい仕事をしている造り手さんが群雄割拠しているしているような土地です。

 

この訪問では駆け足で伝統派、モダン派の巨匠(バローロのモダン派のトップクラスの造り手として、ロベルト・ヴォエルツィオが挙げられます。Clos Yではこの造り手を取り上げたレストラン講座を企画しています。なかなか入手困難な極上ワインを楽しめるチャンスですよ!)を訪問しただけで終わってしまいましたが、次に訪問する機会があればじっくりと複数の造り手さんを訪問して、話を聞いてみたいものです。情熱と、時間を傾ける価値のあるワイン産地であることは間違いありませんから。

 

 

次回はミシュラン星付きレストランのお話です。

 

 

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