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ワインコラム 第9回 ボルドー研修編 その1

2004年の96日から約2ヵ月間、私はボルドー、グラーヴ地区のマルティヤックという村にある、シャトー・ラトゥール・マルティヤック (Château Latour-Martillac) で働く機会を得ました。マルティヤックは大きな都市であるボルドーから南へ10kmほどの、小さな静かな村です。ボルドーといえばワインのイメージが強いと思いますが、実際のところボルドー市内にはぶどう畑はほとんど無く、郊外に広がっています。畑の広がる風景は全くの田舎で、時間がゆっくり流れているような、穏やかな気持ちにさせてくれます。

 

シャトー・ラトゥール・マルティヤックは敷地内に古い塔(tourは塔の意)があり、グラーヴ地区のシャトー格付けで、赤ワイン、白ワインともに特級に列せられています。エキゾチックな香りが特徴の白ワインの評価が以前から高いのですが、世界的ワインコンサルタントであるミシェル・ロラン氏のアドヴァイスを受け、近年では赤ワインの評価も上がってきています。

 

そんな歴史のあるシャトーで、フランス人の中で働くことにどきどきしながら門をくぐりました。働かせていただけることは決まっていたものの、どのような作業をさせてもらえるのか全く聞いていませんでした。まずはオーナーであるクレッスマン氏に挨拶をしました。気さくでいながら、貴族の雰囲気を感じさせる「紳士」な方です。クレッスマン氏に、醸造長、栽培責任者を紹介していただきました。広い畑をもつシャトーが多いボルドーでは、家族経営が多いブルゴーニュなどと異なり、畑部門と醸造部門が分かれていることが一般的です。醸造長はヴァレリーさん、女性です。近年増えているものの、醸造関係の仕事をしている女性は多くありません。実際、醸造は力仕事が多いですから。

 

この日はなんと収穫の初日でした。栽培責任者のドゥニさんを中心とした「収穫チーム」に混じり、畑に向かいます。収穫するのはソーヴィニヨン・ブランという白ぶどう品種です。

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はさみとカジェットと呼ばれる小さなかご(このかごに収穫したぶどうを入れます。いっぱいになると「ポーター」と呼ばれるぶどう回収係が空のかごを持ってきて、いっぱいになったかごを車に持って行き、積み重ねます。こうすることによってぶどうがつぶれないようにしています。)を手に、きれいに列になったぶどう畑を進んでいきますが、その大変なことといったら!ぶどうの房がある位置は、地面に近いところなのでどうしてもしゃがまなければなりません。腰が痛くなります。ぶどうを切り取るのもそれほど簡単ではありません。切るべき梗(軸の部分)を見つけないといけないのですが葉やぶどうの房に隠れているものもあり、手探りでやっていて指を切ってしまうこともあります。切り取ったぶどうの房は完璧に健全ではなく、一部にかびが生えているものもあります。そのような部分は切り取って捨てなければなりません。しばらく作業をしていると手はべとべとになり、蜂が寄ってくるし、日差しは暑いし、腰は痛いし...話には聞いていましたが、やっぱり大変でした!

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お昼休憩に、一度シャトーに戻りました。収穫人の昼食はワイナリーが提供してくれることが多いようですが、ここでは自由に使えるキッチンがあり、各自用意します。私はこの日何も持ってきていなかったのですが、何とオーナーの娘さんが特別にお昼を用意してくれました。ステカシェ (steak haché) 、ひき肉のステーキ、おいしかったです!

 

午後は黒ぶどうの畑で「緑の収穫」ということをしました。一見健全そうに見えるものの、一部に緑色の粒が混じっているような成熟の遅い房を切り捨てる作業です。こうすることによって、残された房に養分が集中して濃いぶどうが収穫できます(ボルドーでは黒ぶどうの収穫は10月前後になるのが一般的です。)。切り捨てたぶどうは、文字通り畑に捨てていきます。一見健全で、実際に食べてみてもなかなか甘くておいしいのでもったいない気がしますが、高品質ワインのために必要なことなのですね。最初のうちはどの房を切り捨てればよいか迷いながらやっていましたが、周りの慣れた人たちの仕事は早く、私もどんどん切り進んでいきました。この作業も通常の収穫とやっていることはほぼ同じなので疲れました...1630分ころ雨が降り出し、今日はここまで。

 

9月前半はこのような調子で進んでいきます。黒ぶどうの収穫は10月前後になりますが、黒ぶどうの収穫の頃は既に収穫済みの白ぶどうがアルコール発酵を始めています。一年で一番忙しい時期です。

 

次回は、醸造所にて、白ワインの醸造のお話です。

 

 

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