- 2009-05-13 (水) 9:29
- ワインコラム
そそくさとドメーヌ・アレッチャを後にした私は、明るいうちにスペインに向かい車を走らせました。何せ、この辺りには何もないのです!
狭い山道をぐるぐると走っていると、まっすぐな道沿いに広がる町に到着しました。すると、ここはもうスペインでした!
山道で、いつの間にか国境を超えていたようです。国境らしいものなど何もなかったので、本当にいつスペインに入ったのかわかりませんでした。
もう薄暗くなってきているので、今日の宿を探します。予想に反して全くフランス語が通じない(英語も)中、どうやらこの小さな町には空きのあるホテルがないことがわかりました。先へ進み、次の町でもホテルには空きがありません。広場には人が集まっていて、どうやらお祭りをやっているようです。なんとかホテルを見つけようと焦りましたが、最終的に泊る所がみつかりました。しかしそれはホテルではなく、キリスト教の巡礼者専用の宿泊所でした。私のような旅行者は一般的には泊めてもらえないのですが、よほど私が困っているように見えたのでしょうか、泊めていただきました。感謝しています!
夜は人生初めてのスペインの夜に期待して、バルに繰り出しました。お祭りと言うこともあって賑わっていましたが、ほとんどが地元の人のようです。生ハムやチーズを食べながら、銘柄のわからない赤ワインを飲みました。私には理解できないスペイン語が飛び交う中でしたが、楽しかったです!
翌日、スペインを代表するワイン産地、リオハに向かいました。リオハでは白、ロゼ、赤と3つのタイプのワインが造られていますが、この地を世界的に有名にしているのはテンプラニーリョという黒ぶどうから造られる、果実味豊かな赤ワインです。
私が訪問したのは、マルケス・デ・リスカル社です。リオハを代表する老舗のひとつで、スペインを代表する芸術家のひとり、ダリも好んだと言われる造り手です。同社のような大きな造り手さんは、時間を決めてワイナリーツアーを企画しているところが多いです。私はスペイン語が全くできませんので、英語のツアーに参加しました。丁寧に詳細を説明してくれながら、ワイナリーの主要な部分を見学することができました。
ここで意外な出会いがありました。10名ほどの私のグループの中に、なんとアンドレ・リュルトン氏がいたのです!氏はボルドーにいくつもの上質シャトーを所有する、ワイン界の重鎮です。別に彼が自己紹介をしたわけではないのですが、あの風貌はまさしくリュルトン氏でした。そっくりさんの可能性もありますが、ワインの試飲の際に案内係の人が「当社のワインの熟成用の樽にはアメリカンオークを使用しています。」と説明した時に、リュルトン氏は「うん、確かにアメリカンオークの風味がある。」と発言されました。一緒にいた周りの人は笑っていました。「このおじいさん、ほんとうにわかっているのかな。」という感じだったのでしょうが、私は「さすがリュルトンさんだ!」と思ったものです。
私が訪問した2004年は工事中だったのですが、現在同社はモダンなデザインのホテルも経営しています。とても田舎で、周りに何もないようなところですが、ワイン目当てで来る(私のような?)人を対象にしているのでしょう。興味のある方は泊ってみてはいかがでしょうか?
また、同社は伝統的なスタイルのリオハを造る一方で、研究を重ね、バロン・デ・チレルという銘柄の現代風の偉大なワインも造り出しています。濃縮感があり、力強いワインですが、伝統が培った安定感があり、スペインを代表する赤ワインのひとつだと思います。
さて、私はマルケス・デ・リスカル社からすぐの、エルシエゴという小さな村に泊まりました。なんとこの村に、ボルドーの語学学校で友達になったスペイン人が住んでいたのです!翌日、その友達(アナといいます。)と半月ぶり(たいして時間が経っていないですね。)の再会を果たし、彼女にリオハを案内してもらいました。なんとアナの家族もワイン造りをしているとのこと。小規模で、商売というわけではないようですが、この地の伝統など私が知りたかったことをいろいろ教えてもらいました。この地方はやはりスペイン有数のワイン産地だけあって、小さいながらも美しい村々が点在しています。高台にある村からこの地方の遠景を見渡すと、ぶどう畑がひろがり、エブロ川が滔々と流れているのが見えます。心が癒される風景です。
アナにいくつかのワイナリーを案内してもらい、レストランで野菜のスープ、兎の煮込みといった食事を取り、短いながらも充実した時間を過ごしました。リオハ地方は、ワイン産地としても、その風景、町並みの美しさからも魅力的なところだと思います。ワイン好きの方には特にお勧めしたいところです。
アナにお礼を言い、別れを告げて、私はスペイン中央部に進んでいきます。
次回はヘレス(シェリー)のお話です。
このコラムを読まれて、何かご意見、ご感想がございましたらご連絡ください。
- Newer: ワインコラム 第6回 スペイン ヘレス編
- Older: ワインコラム 第4回 フランス 南西部 2