ブルゴーニュ地方、コート・ド・ボーヌ地区唯一の赤ワインのグラン・クリュです。
ラドワ・セリニーLadoix-Serrigny村、アロース・コルトンAloxe-Corton村、そしてペルナン・ヴェルジュレスPernand-Vergelesses村、これら3ヵ村にまたがり、コルトンの丘があります。
遠くからでも目立つ、ぽこっとした丸いこの丘の日当たりの良い部分にはぶどうが植えられていて、特に上質なぶどうが収穫できる畑はコルトンやコルトン・シャルルマーニュCorton-Charlemagneといったグラン・クリュに格付けされています。
コート・ド・ニュイのグラン・クリュ、例えばマジ・シャンベルタンMazis-Chambertinやボンヌ・マールBonnes-Maresなどに比べると、コルトンの赤はやや地味な感じがあります。一般的なコルトンの価格がグラン・クリュとしては控えめで、それより高価なプルミエ・クリュもたくさんあることを考えると当然なのかもしれませんが、このアペラシオンを引っ張っていくような傑出した生産者が多く無いこともその理由の一つと言えるでしょう。
コルトンの優れた生産者としては、ボノー・デュ・マルトレイBonneau du Maltray、トロ・ボーTollot-Beaut、ブシャール・ペール・エ・フィスBouchard Père et Fils、ドメーヌ・ド・ラ・ヴージュレDomaine de la Vougeraie(近年ではD.R.C.)などが挙げられますが、今回はコルトン最大の所有者でるルイ・ラトゥールLouis Latourをご紹介いたします。
1731年からの歴史を持つこの生産者は、今日ではブルゴーニュだけでなく南仏でもワイン造りを行っていて、多くのアペラシオンを手掛けています。一般的には「ネゴシアン」としての認識が強いことと思われますが、自社畑を所有するドメーヌとしての顔も持ち合わせています。
極上のロマネ・サン・ヴィヴァンRomanée-Saint-Vivantなども造っていますが、この生産者のハートはコルトンにあるようです。
私がこのメゾンを訪問した時、まずはボーヌの街中にあるオフィスを訪ねました。するとすぐに車でコルトンの丘まで移動して、そこにある醸造所を案内してくださいました。
こだわりのある醸造設備や醸造方法など面白い点がありますが、私が興味深いと思う部分は、この生産者は複数のコルトンを造り分けているところです。
まずは、一般的な「コルトンCorton」。コルトンというグラン・クリュは複数の畑の集合体ですが、あるひとつの畑のぶどうのみからコルトンを造る場合、その畑の名を表記することができます。例えば、コルトン・ブレッサンドCorton Bressandesなど。ルイ・ラトゥールのコルトンの一番下に位置するこのキュヴェは、コルトンの複数の畑のぶどうをブレンドしたもので、畑名を名乗ることはできません。
それから、畑名入りのコルトン。コルトン・クロ・ド・ラ・ヴィーニュ・オ・サンCorton Clos de la Vigne Au Saintなど。普通に考えると、畑まで絞り込んだ、コルトンの中でも一番上に来るものです。しかし、ルイ・ラトゥールにはこの上があります。
それが、同社の看板ワインであるシャトー・コルトン・グランセイChâteau Corton Granceyです。ルイ・ラトゥールの自社畑のコルトン4つの畑の高樹齢のぶどうをブレンドして造ります。同社のコルトンの最上品、であるのかもしれませんが、ブルゴーニュの真の愛好家は畑の表現を確かめたいもので、複数畑のブレンドものには興味が無い、という方もいらっしゃるかもしれません。
今回はコルトンの話が中心になりましたが、同社のグラン・クリュの白、コルトン・シャルルマーニュはコルトンの赤以上の高い評価を得ています。ひとまずコルトンがどのようなワインか確かめたい場合には、この造り手のコルトンはひとつの基準になることでしょう。
コルトン上部から
Clos Yは、9月から始まるブルゴーニュ ステップ・アップ講座 続編の第1回の内容をコルトンとその周辺とし、ルイ・ラトゥールの畑名入りのコルトンも試飲に登場してもらいます。ご興味がございましたらご連絡ください。
講座へのお申し込み、ご質問等はこちらのアドレスにご連絡ください。
vinclosy@aol.com
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