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ワイン・コラム 第144回 ボルドー地方の話 シャトー・シュドュイロー編

甘口ワイン

赤、白、スパークリングなど複数あるワインのカテゴリーのひとつですが、最も注目されていない分野と言えるでしょう。

ワインは食事と合わせて楽しむもの、と考える場合、甘いワインを飲みながら食事をするのは、相性の良い料理があることは確かですが、一般的には難しいように思われます。

そうなると、甘口ワインの出番は、食前酒として、もしくはチーズやデザートと合わせて食事の後半に、もしくはそれ自体を単体で楽しむ、と比較的限られてしまいます。「食」が軽い傾向になり、忙しい現代では、フランス料理でもコースの後半にチーズを食べること自体少なくなっていますし、じっくり上質な甘口ワインと向き合う時間も無くなっているのではないでしょうか。

こうした状況や、身近にある甘口ワインが大量生産の安価なものが多いという現実から、ワイン愛好家の間でも甘口ワインが注目されていないと思われます。

しかし、ワインの品質に対して情熱を持つ生産者が、自然と向き合い生み出す上質な甘口ワインは、まさに自然の賜物で、ある程度の生産量がある高価な赤ワインなどの何倍もの価値があるように思えてなりません。

今回は、もっともっと注目すべき世界の極上甘口ワインの中から、フランス、ボルドー地方のソーテルヌSauternesシャトー・シュデュイローChâteau Suduirautをご紹介いたします。

甘口ワインには遅摘みで自然に糖度が上がったぶどうから造られるものやぶどうを陰干しして少し干しぶどう状態になったぶどうから造られるものなど複数の造り方がありますが、ソーテルヌは世界屈指の貴腐ワインの産地です。

貴腐ワインは、ボトリティス・シネレアという特殊な菌がこれまた特殊な環境の下発達し、かびに覆われて一見腐ったような状態の、水分が飛んで凝縮されたぶどうから造られる甘口ワインです。

様々な条件を満たさないと生まれない、自然の産物なので、貴腐ワインの産地は世界的に見ても非常に限られています。

ソーテルヌに話を戻しますと、ここはかつてより知られた貴腐ワインの名産地で、1855年にはナポレオン3世の命により特に優れたシャトーが「グラン・クリュ」に格付けされました。

シャトー・シュデュイローはグラン・クリュの中でも栄えある1級に格付けされ、格付け制定から1世紀半以上経った現在でもその格付けに恥じない素晴らしいワインを造り続けています。

プレイニャックPreignac村に位置するこのシャトーを私が訪問したのは2004年のことになります。この辺りは一面ぶどう畑が広がる静かなところですが、シュデュイローには実際に立派な「」があります。

Suduiraut1

美しく手入れがされている畑の土壌は小石や砂が多く、白っぽい色をしています。

Suduiraut2

高品質な貴腐ワインを造るためには凝縮した貴腐状態の果実が必要不可欠ですので、収穫は人の手によって粒単位で行われるとのことです。ぶどうを粒単位で収穫する...気が遠くなりそうで、この時点で通常の高級ワインの何倍もの値がついてもおかしくないように思われます。

実際のところ、貴腐菌が付いたぶどうは凝縮し、収穫量が通常のワインの1/4程度になってしまうので、単純に考えると普通のワインの4倍の値が付くはずですが、ソーテルヌの高級ワインが例えばボルドーの高級赤ワインの4倍の値が付いているかというとそんなことはありません。生産者が不憫なようにさえ思われます。品質を考えるととてもお買い得なワインであると断言できます。

糖度が高い貴腐ワインのアルコール発酵はゆっくりと進みますが、シャトー・シュデュイローでは酵母は天然のものを使用します。熟成はバリック(ボルドー地方で伝統的に使われる225l容量の樽)で18~20ヵ月行われます。

肝心のワインは、流石、極上の甘口ワインに求められる要素を満たしています。黄金の美しい色調、ただ甘いだけでない複雑な香り、凝縮された甘味とそれを支える酸味。そして偉大なワインに欠かせない長い余韻も備えています。まさに世界屈指のワインのひとつと言えます。

このような美しいワインは単体でじっくり楽しめますが、料理と王道で合わせるならフォワ・グラ(冷製のテリーヌ、もしくは香ばしく焼き上げたポワレ)、塩味のしっかりとしたブルー・チーズ(特にロックフォール!)。私はソーテルヌは鶏の脂と相性が良いと思いますので鶉やシャポンなどのロースト(ファルシ)にやや塩を効かせた香ばしいソースを添えたものも楽しめると思います。

地元の美食レストランでは、贅沢に洋梨をソーテルヌで煮たデザートなども供されます!

12月は普段に増して忙しいと思いますが、甘美なソーテルでひと時の安らぎを得てみてはいかがでしょうか?心が満たされ、リラックスすることにより疲れも取れることと思います。

Clos Yは2014年第1回目のワイン講座である1月5日の「名店を巡る!極上ワインと料理のマリアージュ2014」のテーマを半年に一度の豪華版とし、世界各国から選りすぐったワインをそれに合わせた特別料理と共にお楽しみ頂きます。デザートにはシャトー・シュデュイロー1975を合わせます!ご興味がございましたらご連絡ください。

講座へのお申し込み、ご質問等はこちらのアドレスにご連絡ください。
vinclosy@aol.com

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