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ワイン・コラム 第139回 イタリアの話 マストロベラルディーノ編

有形であれ、無形であれ、世界のあらゆる伝統的なもので、失われてしまったもの、失われつつあるもの、しっかりと(もしくは細々と)守り続けられているものがあると思います。

 

ワインの世界では、世界の一部の地域でしか見られない、その地域特有の伝統的なぶどう栽培方法や醸造方法などがありますが、地場品種というものはワイン愛好家から見て、確実に後世に守り伝えてもらいたいもののひとつだと思います。

 

というのもワインの魅力の一つとして、多様性があるからです。世界中のいろいろなワインの中から、その日の気分に合うワインを選ぶ楽しさ、未知のタイプのワインと出会う喜びなどがあります。

 

そして、地場品種など、伝統的なものこそがその土地を表現していると思います。世界中どこに行っても同じものばかりでは、旅をする喜びなど無くなってしまいますよね。

 

世界中の情報が容易に得られるようになった今日では、世界的にワインの質が上がってきています。その反面、栽培に手間がかかって収量(=収益)の少ない伝統的に栽培され続けているある地域特有の地場品種が引き抜かれ、国際的に人気のある(往々にして栽培し易く収量が上げやすい)ぶどう品種に植え替えられるという悲しむべき事態が発生しました。

 

しかしワイン愛好家から見ると、どこででも造られているありふれたぶどう品種のワインよりも、ある地域にしか見られない地場品種のワインにこそ、興味を引かれるのです。

 

イタリア屈指のワイン銘醸地であるカンパニア州Campania。この州は「地場品種の宝庫」と言えますが、一時絶滅しかかった上質な地場品種を救ったのが、今回ご紹介するマストロベラルディーノ社Mastroberardinoなのです。

Mastroberardino 

お陰様で飲んでいて楽しい、興味深い上質なワインを今日でも味わうことができます。個人的にもとても感謝しています。

 

この造り手はその素晴らしい功績もさることながら、この州のワイナリーとしては規模が大きく、世界にカンパニアのワインを発信する、この州を代表する造り手です。

 

代表的なワインとして、アリアニコAglianico種から造られるタウラジTaurasiが挙げられますが、他にはポンペイの遺跡で栽培したぶどうから造るヴィッラ・デイ・ミステリVilla dei Misteriなどがあります。

 

そしてやはり、マストロベラルディーノを語る上で外せないのが、同社が救った地場品種であるフィアーノFianoグレコGrecoでしょう。

 

特に、私が完成度が高いと思うのがフィアーノ・ディ・アヴェッリーノFiano di Avellinoのモレ・マイオルムMore Maiorumというキュヴェです。ボルドー地方で伝統的に使われている(そして今日では世界中で使われている)バリックBarriqueという225l容量の小樽で熟成されたもので、地場品種という伝統とモダンな醸造技術の融合と言えると思います。

Mastro4 樽熟成庫 

カンパニア州はナポリを擁する、美食の土地でもあります。水牛のモッツァレラ・チーズやピッツァと一緒に、マストロベラルディーノのワインを試してみてはいかがでしょうか?

Campania5 

Clos Yは10月20日のレストラン講座のテーマを「イタリア」とし、イタリア全土から選りすぐった極上のワインを食事と共にお楽しみ頂きます。マストロベラルディーノのモレ・マイオルムも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。

 

 

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