その名を冠するワインは、世界で最も素晴らしいワインのひとつである可能性が高いであろうと言うことができます。
畑が格付けの対象であるブルゴーニュ地方では、ひとつのグラン・クリュの畑を複数の所有者が分割して所有していることが一般的です。例えば、クロ・ド・ヴージョClos de Vougeotは50ha以上ある大きなグラン・クリュですが、2013年現在約80の所有者が存在しています。
そうなると、同じグラン・クリュのワインでも、生産者により品質のばらつきが生じるのは必至ですし、グラン・クリュの中には本当にグラン・クリュの資質があるのか疑いたくなるような、それほど条件が良くなさそうな畑が含まれてしまっています。
そのため、ブルゴーニュのグラン・クリュのワインの中には、残念ながらがっかりさせられてしまうものが少なからず存在しています。
今回ご紹介するクロ・ド・タールClos de Tartは、特に1996ヴィンテージ以降、特に安心して購入できる安定感のあるグラン・クリュです。
なぜ、安定感があるのか。例えば1996年から醸造責任者を務めるシルヴァン・ピティオ氏Sylvain Pitiotのおかげ、理想的な斜面畑、モメサンMommessinのモノポールMonopole...複数の理由を挙げられますが、そのような周知の事実の紹介は他に任せるとしまして、今回はちょっと内部に踏み込んだお話をしたいと思います。
まずは畑とドメーヌについて。約7.5haの一枚畑は、全てモレイ・サン・ドゥニ村Morey-Saint-Denis村にあります。北隣りはクロ・デ・ランブレイClos des Lambrays、南隣りはボンヌ・マールBonnes Maresと、グラン・クリュに挟まれています。
一般的には収穫されたぶどうはできるだけ早く醸造所に運ばれ、すぐに醸造の工程へと流れて行きます。中には畑から醸造所まで遠く離れているケースがあり、そのような場合にはぶどうが時間と共に傷んでいってしまいます。しかしクロ・ド・タールの場合、醸造所は文字通り畑のすぐ隣にありますので、収穫したてのぶどうをすぐに醸造所に入れることができます。
シルヴァン・ピティオ氏は、クロ・ド・タールの畑を、細かな違いに基づいて6つの区画に細分化して管理しています。収穫もその区画ごとに行われ、それぞれ別々のステンレス・タンクで醸造されます。
畝が斜面に対し垂直になっている。
収穫直前のぶどう。
少し大きめの小石が含まれる土壌。
2005年を例に挙げると、収穫は9月21日開始、3日半かけて、24日に終了しました。6つに分けられた区画ですが、標高が高い区画の方がぶどうが熟するのが遅い、と単純に予想されますが、実際はそう簡単ではないようで、下の区画より先に収穫した上の区画もありました。
さて、ピノ・ノワールが植えられているクロ・ド・タールですが、中にはピノ・ノワール以外のぶどうも存在しているようです。実際ピノ・ノワールは突然変異を起こしやすく、ピノ・グリPinot Grisやピノ・ブランPinot Blancが生まれてきた経緯があります。その手のものか、苗木屋のミスか、わかりませんが、白ぶどうがちらほら見受けられました。しかし、特にこれからワインの資格を取ろうと勉強されている方は、クロ・ド・タールはピノ・ノワール100%と認識してください(笑)
さて、(恐らく)世界中どこでも、ぶどうの収穫が終われば祭りが待っています!クロ・ド・タールの収穫終了祭り(ブルゴーニュ地方ではラ・ポーレLa Pauléeと呼ばれます。)は...
頭にはぶどうの枝の王冠を!
ワインはもちろんクロ・ド・タール!
マリア様が見守る。
祭りは良いものです。
過去10年を見ると、2004は苦労したようですが、それ以外のヴィンテージは軒並み高評価を得ています。グラン・クリュの中でも特に力強い部類に入るクロ・ド・タールは、熟成させると若いうちには表現できない魅力を開かせていきますが、若いうちに飲んでも若いなりの素晴らしさを楽しむことができます。クロ・ド・タールを飲まずして、ブルゴーニュを、ピノ・ノワールを語ることなかれ、とまでは言いませんが、そう言えるほどの価値があるワインだと思います!
Clos Yは、8月4日のレストラン講座のテーマを「半年に一度の豪華版」とし、極上ワインと料理のマリアージュをお楽しみ頂くよう予定しております。10年の熟成を経た、クロ・ド・タール2003も登場します!ご興味のある方はご連絡ください。
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