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ワイン・コラム 第129回 ロワール地方の話 ディディエ・ダギュノー編

ワインの品質と価格のバランスは、必ずしも釣り合っているものではありませんが、ワインの価格はワインを選ぶうえでひとつの参考になるのは間違いないでしょう。

 

今回ご紹介するディディエ・ダギュノーDidier Dagueneauは、世界で最も高価なソーヴィニヨン・ブランSauvignon Blancの白ワインを造る造り手です。

 

「ロワールの野生児」

「Enfants terribes恐ろしき子供たち」

 

など、畏敬を込められた数々の呼び名を持つディディエ・ダギュノー氏。

 

素晴らしく品質の高いワインは、造り手の風貌も相まって、カリスマ的な人気を博しています。

Didier Dagueneau ご夫婦で(2005年) 

ドメーヌは、ロワール川上流域、プイィ・フュメPouilly-Fuméのアペラシオン内にあります。このアペラシオンでは、ソーヴィニヨン・ブランによる白ワインのみが生産されています(ディディエ・ダギュノーは、ブラン・フュメ・ド・プイィBlanc Fumé de Pouillyという表記を用いています。)。

 

一般的なプイィ・フュメは、冷涼な気候を反映した、柑橘類やフレッシュ・ハーブの香りを持爽やかな白ワインですが、ディディエ・ダギュノーのワインは別格です。

 

やはり冷涼な気候を感じさせる豊かな酸味を備えていますが、上級キュヴェからはトロピカル・フルーツ系の香りも感じられ、樽から来るロースト香もあります。そして味わいには塩気も感じられ、強いミネラルの芯が通っています。ワインが若いうちは飲むのをじっとこらえて、熟成させてから飲むべき数少ないプイィ・フュメです。

 

この造り手のトップ・キュヴェ的なワインは、石の写真のラベルが印象的なシレックスSilexです。初めてこのワインを飲んだ時のことは今でもよく覚えています。芸術の域。大地からぶどうの樹が吸い上げたエッセンスを口に含んでいるような、スケールの大きさを感じさせてくれるワインでした。

 

その他のキュヴェとして、

 

ブラン・フュメ・ド・プイィ Blanc Fumé de Pouilly

 

ビュイッソン・ルナール Buisson Renard

 

ピュール・サン Pur Sang

 

サンセール ル・モン・ダネ シャヴィニョール Sancerre Le Mont Damné Chavignol

 

ジュランソン レ・ジャルダン・ド・バビロン Jurançon Les Jardins de Babylon

 

などがあります。いずれも素晴らしいワインです。

 

そして、自根(フィロキセラというぶどうの根に寄生する害虫対策として、アメリカ系のぶどうの台木に接ぎ木されていない)のソーヴィニヨンから造られるアステロイドAstéroïdeがあります。

 

私はこのドメーヌを、2005年に訪問させて頂きました。現在では世界中で360以上の造り手を訪問させて頂いておりますが、約束の時間に遅れることはまずなく、大体早く着くのですが、この造り手に限り、道に迷い約束の時間に遅れてしまいました。しかし笑顔で、ワインを試飲させて頂いたのを覚えております。

 

残念ながらディディエ・ダギュノー氏は2008年に飛行機事故で亡くなってしまいましたが、彼が造ったワインはこれから先、何年、何十年と優美に熟成を続けて行くことでしょう。そしてドメーヌは、現在は息子さんたちが引き継ぎ、運営されています。

 

ソーヴィニヨン・ブランというぶどう品種のひとつの頂点を経験したい方、強いミネラル感を持つワインを経験したい方、純粋においしいワインを飲みたい方...是非、ある程度の熟成を経た(できれば8年以上)ディディエ・ダギュノーのワインを飲んでみてください。ワインに対する新たな視点ができるかもしれません。

 

Clos Yは、7月14日のワイン祭りのラインナップに、ディディエ・ダギュノーのブラン・フュメ・ド・プイィ2004も含めております。ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

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