アルプス山脈の麓、スキーを愛する人々には重要なところですが、ワイン愛好家の関心を引くことは少ないようです。
しかしもちろん、この地でも素晴らしいワインが造られています!
今回ご紹介するのは、世界屈指の偉大なワイン、とは言えないかもしれませんが、多くの人に愛されるような、やや甘いロゼのスパークリング・ワイン産地セルドンCerdonです。
アペラシオンはビュジェイBugey、地区はセルドンCerdon。ビュジェイは長らくV.D.Q.S.というカテゴリーに属していましたが、2009年に晴れてA.O.C.に昇格しました。
セルドンは、上記のとおりやや甘い、ロゼのスパークリング・ワインです(土地の名前がワインの名前になっています。)。このワインを造るために認められている土地は僅か約130ha。ガメイGamayとプルサールPoulsard、2種類の黒ぶどうから造られます(プルサールは栽培面積が少ないので、中にはプルサールを使わずにガメイ100%のキュヴェもあります。)。
小さな産地なので、ワインの生産量もそれに応じて少ないです。フランスでもあまり見かけることはありませんが、現在日本に複数銘柄が輸入されております。
私は2013年の2月に、アラン・エ・エリー・ルナルダ・ファーシュAlain et Elie Renardat-Fâcheという造り手さんを訪問しました。
ドメーヌが位置するのはメリニャMérinatという小村で、山間にあるので坂道が多いですが、村の端から端まで5分もあれば歩いてしまうことができるほどの、村人全員が顔見知りなのだろうな、というところです。
Mérignat。
雪がちらつく寒い日、ストーブの前で試飲です。この造り手は、以前はシャルドネによる白ワインも造っていましたが、現在はスパークリング・ワインだけを生産しています。
2種類のセルドンを比較しました。ひとつはガメイ70%、プルサール30%のキュヴェ。もうひとつはガメイ100%のキュヴェ。どちらもロゼのやや甘いスパークリング・ワインです。どちらも素直においしいワインでしたが、個人的にはより酸味のしっかりとしたプルサールを用いたほうが好みでした。
セルドン用のプルサールは僅か6haほどしかないようですので、プルサールを用いたセルドンはとても希少と言うことができると思います。
せっかくなので、やや専門的になりますが、醸造のお話を。セルドンは「アンセストラル方式」という方法で造られます。簡単に説明しますと、まずは黒ぶどうをロゼ・ワインを造るようにアルコール発酵させます。アルコール度数が6%になったところでフィルターをかけて一度瓶詰めします。続いて瓶内で、アルコール度数が7%程度になるまで再びアルコール発酵を行います。この時に、二酸化炭素がワインに溶け込んでスパークリング・ワインとなります。瓶内でアルコール度数が7%程度になったら瓶を冷却して酵母の活動を止め、アルコール発酵を止めます。特殊な装置を使ってガスが逃げないように中身を空けてフィルターをかけ、酵母等を取り除いて再び瓶詰めます。こうしてできるセルドンは美しい、やや濃いめのロゼ色、アルコールは低く、その分ぶどう由来の天然の甘味が(残糖約60g/l)残る、やや甘口のスパークリング・ワインになるわけです。
アペリティフに、デザートに。単体でも楽しめる美味しいワインです。セルドン、試してみてはいかがでしょうか?
Clos Yは、5月15日に行うレストラン講座で、プルサールを用いたセルドンが登場します。ご興味のある方はご連絡ください。
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