一般的には9月から10月が収穫のピークですが、近年では地球温暖化の影響で収穫時期が少し早まっています。
米や麦など、穀物を原料とするお酒と違って、漿果であるぶどうを原料とするワインは、陰干しワインなど一部例外を除き、収穫したぶどうを直ちにワインへと仕込みを始めなければなりません。
10月の初めと言えば、既に収穫が終わったぶどうの仕込みと、現在進行中の収穫が重なる、ワイナリーが一年で一番忙しい時期です。
収穫したぶどうを搾り、果汁を得て、それを発酵させる場合、早ければ1週間弱でアルコール発酵が終わりワインができます。
秋は新酒の季節でもあるのです!
一般的には出来たばかりのワインはすぐに瓶詰めされず、ワイナリーで熟成されます。短いもので数ヵ月、長ければ6年以上も樽などで熟成期間が取られ、それから瓶詰め、さらに瓶内で熟成させて出荷という流れです。
しかし新酒は、ほとんど熟成期間を取らずに出荷されます。もう少しで、北半球産の2012年新酒が出てきます。いろいろな場所で新酒が造られていますが、日本でおなじみの代表的な銘柄を挙げますと、ボージョレ・ヌーヴォーBeaujolais Nouveauがあります。
(ちょっと寄り道。Beaujolaisはフランス、ブルゴーニュ地方のワイン生産地区のひとつです。日本語では「ボジョレー」もしくは「ボージョレ」と表記されますが、フランス語でeauで「オー」と発音し、laiで「レ」と発音しますので、「ボージョレ」と表記する方がフランス語に近い発音と言えるようです。)
日本ではボージョレと言えばヌーヴォー!というイメージが強いですね。普段ワインをあまり召し上がらない方でも、ボージョレ・ヌーヴォーは購入することがあるでしょう。
新酒(=ヌーヴォー)は、ワインの中でも特別な存在です。出来るだけ早くワインを仕上げて消費者に飲んでもらうように、醸造において特別なテクニックを用いることもあります。つまり、早く飲んでもらうように、特別にフレッシュ&フルーティに造られた、ボージョレの中でも特殊なワインと言えます。日本はボージョレ・ヌーヴォー世界最大の市場ですので、通常のボージョレよりボージョレ・ヌーヴォーのほうが知名度が高いという特殊な状況にあります。
「ボージョレはどうもいまひとつ...」ですとか「ボージョレなんて!」と言うワイン愛好家の方もいらっしゃいますが、ワイン産地としてボージョレを見た場合、ヌーヴォーだけではなく、長期熟成に耐える偉大なワインも生産されていることを忘れてはなりません。
ヌーヴォーはヌーヴォーで、私は素晴らしいワインだと思っています。高級レストランでしっかりした肉料理に合わせるようなワインではありませんが、美しい紫の色調を持ち、バナナやキャンディーのアロマを放ち、果実味に溢れる喜びのワインだと思います。
新酒を味わう楽しみは、その年の出来が感じられることにもあります。例えば、同じ造り手のボージョレ・ヌーヴォーを毎年の解禁日に試してみると、そのヴィンテージが偉大な年なのか、軽い年なのか、などなんとなく予想が出来て楽しいものです。
ボージョレ・ヌーヴォーの解禁日、2012年は11月15日です。レストランなど、14日の夜からカウント・ダウン・パーティを行うお店がありますね。また、南仏のヌーヴォーやイタリアのノヴェッロ(=新酒)はボージョレ・ヌーヴォーよりも一足早く市場に出てきます。新酒のフレッシュさを楽しみながら、今年の出来に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか?
Clos Yは、10月17日のレストラン講座のテーマを「ブルゴーニュ」とし、良質なブルゴーニュのワインをそれに合わせた料理と共にお楽しみ頂きます。ルイ・ジャドのまるで素晴らしいピノ・ノワール!のような極上ボージョレ地方の赤ワインも登場します!ご興味がございましたらご連絡ください。
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