- 2012-03-11 (日) 11:42
- ワインコラム
ワインを大好きになったきっかけは、2000年のフランス留学時代、スーパーで買ってきたチーズとワインを何気なく一緒に食べたところ、衝撃が走るような美味しさに打たれたことです。
ワインの銘柄は覚えていませんが(チーズはブリーBrieでした。)、ワインとチーズを合わせたらおいしい、というレヴェルではなく、新しい世界が開けた、と言って過言でないほどの新しい感覚を与えられたように記憶しています。
ワインをどっぷりと好きになり、日常の興味の大半をワインが占めるようになったのは、それから1ヵ月ほど後に、ブルゴーニュの造り手を訪問したときです。
当時、私はブザンソンBesançonという町に住んでいました。フランス東部で、ブルゴーニュのディジョンDijonから電車で30分ほどのところです。ブルゴーニュまで近いので、ほとんどワインの知識もありませんでしたが、まあ行ってみようと行ってみたわけですが...
電車でボーヌBeauneに到着です。当時の私が、ボーヌの街並みをどのように感じたかは覚えていないのですが、このときのブルゴーニュ訪問でしっかりと覚えていることが2つあります。
まずは、ボーヌ市内のマルシェ・オ・ヴァンMarché aux Vinsに行ったことです。有名なオスピス・ド・ボーヌHospices de Beauneのすぐそばに位置するこの施設は、ワインの販売も行っておりますが、最大の魅力はブルゴーニュのいろいろなワインを試飲できることです。入場料を支払い、テイスティング用のタストヴァンTastevin(ワインのテイスティングに用いる、金属製の丸く、浅い道具)を貰ったら、さあ地下カーヴへ。後は中にあるワインをリスト通りに制覇していくのです!
タストヴァン
当時、私は恐らくシャンベルタンChambertin、クロ・ド・ヴージョClos de Vougeot、ロマネ・コンティRomanée-Conti、モンラシェMontrachet程度の知識しかなかったと思います。ピュリニー・モンラシェPuligny-Montrachetやシャサーニュ・モンラシェChassagne-Montrachetを見つけては、「お!あのモンラシェかな?」と思い興奮していたと思います。
ボーヌのワインなど、いろいろありましたが、やはり予備知識の無いワインが多く、でもそれも楽しく、何か一つのワインを鮮明に覚えているということはありませんが、獣っぽい感じのワインがあったなとか、とても良い経験だったと思います。
2つ目は、ムルソーMeursaultの造り手を訪問したことです。
ボーヌまで来たからには、ムルソー村まで行ってみようと、歩き出しました。
ボーヌから歩いて行くと、象徴的な教会の尖塔が目印になります。
村に着くと、ここまで来たのだから生産者を訪問したい!と思い、事前の予約無しで訪問できた、シャトー・ド・ムルソーChâteau de Meursaultを訪れました。
この造り手は、ブルゴーニュ地方では珍しく、広い庭園と美しいシャトーを所有しています。ブルゴーニュにおいてトップ・クラスのワインの造り手グループにまだ届いておりませんが、初めてワイナリーを訪問した私は多すぎるほどの刺激を受けました。特に印象的だったのが、ワインの説明をしてくれた人の熱心さで、その説明を聞くうちに、ああ、ワインは単なる飲み物ではないのだなと思いました。ワインはキリストの血、と言われますが、本当に大切にワインを育んでいます。今後はワインを1滴も残さないようにしないと、と思ったものです。
このブルゴーニュ訪問での経験が、私をどっぷりとワインの世界に惹き込みました。以来、ワイン一筋で今日に至っています。
ワインはアルコール飲料であり、嗜好品でもあります。ワインを飲んでいる場合ではない、という時もあるでしょう。
しかし、ワインは自らが生まれた土地の記憶を持ち、造り手の情熱が込められています。ワインが生まれた土地の風景を思いながら、造り手の情熱を感じながら、じっくり味わってみるのも良いかもしれませんね。
ボーヌ近郊の夕暮れ
Clos Y企画の3月23日の単発レストラン講座で、ムルソーの2大巨匠、コント・ラフォンとコシュ・デュリのワインをメゾン・ポール・ボキューズのスペシャリテと共にお楽しみ頂きます。恐らく今後二度と再現できない、ワインと料理の素晴らしいマリアージュになるでしょう。ご興味のある方はご連絡ください。
このコラムを読まれて、ご意見・ご感想がございましたら下記メールアドレスまでご連絡ください。
- Newer: ワインコラム 第96回 アルザス地方の話 ポール・ブランク編
- Older: ワインコラム 第94回 カリフォルニアの話 フラワーズ編