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ワインコラム 第89回 ボルドー地方の話 シャトー・カントメルル編

まる1日、ワイナリーを回るための時間があるとします。

 

どのように時間を使うか計画を立てるのは、実はとても難しいものです。

 

ブルゴーニュBourgogneやナパ・ヴァレーNapa Valleyのように、ワイナリーが密集していて移動に時間をあまり取られないならば、午前中に2軒、午後に3軒という過密なスケジュールを立てることもできるかもしれません。

 

しかし、ブルゴーニュではひとつの造り手さんが10種類以上のワインを造っていることが多く、さらに複数のヴィンテージを試飲させて頂ける場合は試飲だけで1時間以上かかることがあります。通常ワイナリーの訪問は醸造設備や熟成セラーの見学から入ります。熱意のある造り手さんは畑まで連れて行ってくれもしますので、訪問時間が3時間を超える場合もあります。

 

事前に「訪問は設備の見学、ワインの試飲で90分です。」などと伝えてくれる造り手さんもいますが、このようなケースは少数派で、時間の予想は簡単ではありません。

 

私は300以上の生産者を訪問させて頂いておりますので、訪問時間に関してはある程度の予想が立てられます。

 

例えば、

 

ボルドーは1シャトー90分ほど。(シャトーの歴史のお話を聞く。醸造所、熟成室の見学。2、3種類の試飲。)

 

ブルゴーニュは1ドメーヌ120分ほど。(醸造所、熟成室の見学。12種類ほどの試飲。)

 

しかし、これは経験上の平均的な流れであって、例外はもちろん存在します。そのような場合、時間が足りなくなったり、余ったりしてしまいます。

 

私はワイナリーを訪問させていただく場合、通常は必ず事前に予約を取ってから行くのですが、ワイナリーの訪問と訪問の間に思わぬ時間が出来てしまった場合、訪問を断られるのを覚悟で近くのワイナリーに飛び込みで入ってみることがあります。

 

今回は、このような形で飛び込んだ、シャトー・カントメルルChâteau Cantemerleのお話です。

 

シャトー・カントメルルはボルドー地方、メドック地区のマコーMacau村に位置する、1855年の格付け5級のグラン・クリュです。マルゴーMargaux、ポイヤックPauillacといった村名アペラシオンではなく、オー・メドックHaut-Médocというアペラシオンに属するためか、メドック地区のグラン・クリュとしてはあまり注目されていないようです。

 

しかし、このシャトーは確実にその品質を上げてきています。特に2000年代後半の伸びは注目に値します。

 

さて、私の飛び込み訪問ですが、結果としては、やはりきちんと見学はさせてもらえませんでした。しかし、急な訪問者に対して、とても親切に対応してくださったことが記憶に残っています。

 

また、もうひとつ強く覚えていることは、このシャトーの美しさです。このシャトーは90haもの畑を所有していますが、シャトーへの門をくぐると、ちょっとした森があります。背の高い木の間の道を進むことは気分をリラックスさせてくれますし、その森を抜けて現れるシャトーは均整が取れて美しく、印象に残っています。

 

この美しいシャトーから生まれるワインは、前述のように素晴らしいものです。さらに、大きな特徴はワインの価格が低めに設定されていることです。比較的手ごろに上質なワインが楽しめます。このようなワインは、ありがたいですね。しかし、評価が上がってくると、価格も上がるのが世の常です。このシャトーのワインも徐々に高くなっていくかもしれません...

 

いまのうちに、試されることをお勧めさせていただきます!

 

Clos Yは、1月18日のレストラン講座のテーマを「ボルドー」とし、シャトー・カントメルル2006を含む、グラン・クリュを中心としたワインをそれに合わせた料理と共にお楽しみ頂きます。ご興味のある方はご連絡ください。

 

 

このコラムを読まれて、ご意見・ご感想がございましたら下記メールアドレスまでご連絡ください。

vinclosy@aol.com

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