- 2011-11-12 (土) 11:47
- ワインコラム
フランス最南端、スペインとの国境沿いに位置し、東は地中海に面しています。よくラングドック地方Languedocと一緒にされますが、ラングドック地方が177,000haのぶどう畑を持ち、スパークリング、白、赤、甘口など多彩なワインを生みだすのに対し、ルシヨン地方のぶどう畑はその約1/5の34,000haです。
ルシヨン地方で造られるワインは、主に濃縮感の強い赤ワインと酒精強化による甘口ワインです。また、標高の高い場所で造られる上質な白ワインも、生産量こそ少ないものの見逃せません。
今回は、スペインから北上してフランスに入る場合、最初のワイン産地になるバニュルスBanyulsとコリウールCollioureについてご紹介いたします。
バニュルスとコリウールは、生産地域が重複しています。バニュルスと名乗るワインは全て酒精強化による甘口タイプのワインであるのに対して、コリウールは赤、白、ロゼのスティル・ワインです。
いずれも個性的な上質ワインで、数軒の優れた生産者がおりますが、私が訪問させていただいたのはその中でも最も重要な造り手のひとつ、ドメーヌ・デュ・マス・ブランDomaine du Mas Blancです。
マス・ブランはバニュルス・シュール・メールBanyuls-sur-Mer、「海の上のバニュルス」という美しい名を持つ、地中海沿いの美しい小さな町に位置しています。
マス・ブランはコリウールもバニュルスも、いろいろなタイプのワインを生産しており、いずれも高い評価を得ています。
この地域の畑は、海沿いの急斜面に展開されています。車で走っていると見上げてしまうような斜面もあります。傾斜が急なので機械作業は不可能です。南の暑い太陽が照りつける中、人手による作業が要求されます。
結果、大切に育てられた上質なぶどうから、素晴らしいワインが生まれます。
バニュルスはポートワインのようなタイプもありますが、熟成容器を屋外にさらして造るランシオrancioというマデイラワインのようなタイプや、厳しい基準を満たしたグラン・クリュGrand Cruなど様々なタイプがあります。その個性により、アペリティフからフォワ・グラを使った料理、デザートまで幅広く楽しむことができます。
屋外に晒されたランシオ用の樽
コリウールは生産量の半分以上が赤ワインです。グルナッシュやシラーなどが使われますが、ワインにより品種構成が異なります。すると当然ワインの個性も異なりますが、色が濃く、果実味が豊かで、熟成によりその魅力を増していく素晴らしいワインです。私は、生産量は少ないのですが、コリウールのロゼを強くお勧めします。ロゼワインとしては濃い色調を有し、僅かにタンニンも感じられる、赤ワインのような性質を備えたロゼワインです。バニュルス・シュール・メールで、地中海を見ながら地元の魚介類と合わせたら最高でしょう!...なかなかできないことですが...
さて、マス・ブランではいろいろなキュヴェを試飲させて頂きました。個性的なバニュルスたち、畑別のキュヴェで仕込んだコリウールたち。それほど知られていないこのアペラシオンに、これほど上質なワインがあると、嬉しくなりました。
品質の割に、その知名度ゆえか、価格は控えめに設定されています。見つけたら是非試してみてください。冬は特に濃厚なコリウールの赤、そして甘いバニュルスが素敵な時間をくれるはずです。
Clos Yでは、11月16日のレストラン講座のテーマを「ルシヨン地方」とし、この地方のワインをそれに合わせた料理と共にお楽しみ頂きます。マス・ブランの2000年の赤ワインが2種類出ます!ご興味のある方はご連絡ください。
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