- 2011-10-08 (土) 14:22
- ワインコラム
今回は、パリで出会った素晴らしいワインについてご紹介させて頂きたいと思います。
日ごろ私は、日本には世界中のワインが集まっており、世界的に見てもかなり広いワインの選択肢が与えられていると思っております。実際、フランスでも入手困難なフランスワインが比較的容易に入手できることがありますし、その点で恵まれていると思います。
しかし世界にはそれこそ数えきれないほどのワインがあります。地元で消費されてしまい、他に出回らないワインも少なくありません。
さて、フランスの首都、パリ。パリは「ワイン産地」と言える場所ではないと思うのですが、世界中の素晴らしいワインが集まる場所と言えるでしょう。
まずはパリのレストラン、プティ・ヴェルドPetit Verdotでのお話です。このお店のオーナーは、ボルドー地方を代表するレストラン、コルディアン・バージュCordeillan-Bagesで日本人ながらシェフ・ソムリエを務めていらした石塚氏です。レストランというより気軽なビストロ風のお店ですが、流石に素晴らしいワインが揃っています!
食事と合わせて、グラスで10種類(!)ほど飲ませて頂いたのですが、特に印象的だったのは、
Mâcon-Villages Terroir de Clessé 2006 Domaine Michel
Vouvray Clos du Bourg Moelleux 1959 Huet
前者はブルゴーニュ地方南部、マコネ地区のシャルドネによる甘口白ワインです。この地区ではプイィ・フュイッセPouilly-Fuisséなど素晴らしい白ワインが産出されていますが、通常は辛口です。例外的に甘口を造る生産者がいますが、片手で数えられるほどでしょう。この造り手さんのワインは初めてだったのですが、やはり、世界にはいろいろなワインがあるものですね。
後者はロワールを代表する生産者の熟成甘口ワインです。1959はロワールでは伝説的な超優良年です。その味わいは...ブショネ(主にコルク中に発生してしまったT.C.A.という物質が原因で起こる、ワインの劣化の1種。ワインが濡れた段ボールのようなひどい香りを放つようになってしまいます。)でした!出していただく前から、「ブショネだけど試してみる?」と聞かれて試したのですが、なかなか派手なブショネでした。半世紀以上経った極上ワインを開けて、ブショネって辛いですよね...
さて、気を取り直して、ワインショップで発見した珍品をご紹介いたします。
Vin de Table de France Le Vin des Amis 2009 August Clape
ワインの格でいうと、何ということはないテーブル・ワインなのですが、これがとんでもないワインでした。造り手のオーギュスト・クラープはローヌ北部、コルナスCornasを代表する生産者です。ローヌ北部にはコート・ローティCôte-Rîtie、エルミタージュHermitageなど錚々たるクリュがひしめいており、中でも高級ワインはバリック(225ℓ容量の樽)で長期間熟成させることがあります。そんな中、オーギュスト・クラープは昔ながらの大樽熟成で、しかも新樽は一切使いません。原料となるぶどうが生まれ育った環境をそのままワインとして表現しています。誰もが、ひと口目から「素晴らしい!」と言ってしまうようなワインではないのですが、特にある程度の熟成を経ると他のワインでは得難い感動を与えてくれる極上ワインとなります。
そう、オーギュスト・クラープのワインは素晴らしいのですが、真価を発揮するまで時間がかかるな、というのが私の個人的な正直な感想です。恐らく、その点は造り手さんも自覚しているのでしょう。そのため今回このコラムでご紹介するワインを造ったのかな、と思いました。このワインが...素晴らしかったです!2009年、まだまだ若いですが、素晴らしくおいしかった!いかにも北ローヌのシラーという感じで、極上のシラー飲みが持ち得る芯の通ったスパイスのアロマを持ち、果実味、酸味ともに豊かで、何より明らかにオーギュスト・クラープのワイン、コルナスを思わせるニュアンスに富んでいるのです。このワインの名前を訳すと「友人たちのワイン」。クラープの偉大なワインを、若いうちから、手ごろな価格で飲んでもらいたいと、正に友達用に少量生産したのでしょう。私はこの造り手さんを2004年に訪問しましたが、このようなワインがあるとは知りませんでした...この品質で12ユーロほどでしたので、毎日でも飲みたいほどです!
改めて、世界は素晴らしいワインで溢れています。
あなたは今晩、何のワインを飲みますか?
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