- 2011-03-18 (金) 17:16
- ワインコラム
このように、ある生産者がある畑を単独所有している状態をモノポールと呼びます。モノポールの畑は少なからずあるのですが、ロマネ・コンティのように畑の名前と生産者の名前が同じ例は極僅かです。
今回ご紹介するシャトー・グリエChâteau Grilletは、その数少ない例のひとつです。
まず、場所を確認しましょう。フランス南東部、ローヌRhône川沿いに広がるワイン産地であるローヌ地方北部にシャトー・グリエは位置しています。大きな都市で言いますと、リヨンLyonがシャトー・グリエの北にあります。
シャトー・グリエというワインは、シャトー・グリエという生産者がシャトー・グリエA.O.C.範囲内の畑で栽培しているヴィオニエViognierという白ぶどうから造る白ワインです。
ローヌ地方でヴィオニエと言えばコンドリウCondrieuが有名ですが、シャトー・グリエは回りをコンドリウA.O.C.で囲まれています。コンドリウの中の一区画がシャトー・グリエとして独立しているような形です。
最近人気の出てきたぶどう品種、ヴィオニエは、今日では南フランスやアメリカ、オーストラリアなどでも栽培されています。それらのワインの中には比較的安価なものもありますが、以前はヴィオニエといえばコンドリウであり、コンドリウは今も昔も高値で取引される高級ワインです。
シャトー・グリエはそのコンドリウの別格もの、と言うことができるでしょうか。フランス4大白ワインのひとつ(あと3つはモンラシェMontrachet、シャトー・シャロンChâteau Chalon、クロ・ド・ラ・クーレ・ド・セランClos de la Coulée de Serrant)に数えられ、僅か3.2haの畑から、年間12,000本ほどのワインを生みだしています。
生産量が少ないので見かけることすら少なく、例えあったとしても高価なのでソムリエでも口にしたことがある人は少ないかもしれません。
以前のオーナー(ネイレ・ガシェ)があまり情報を提供していなかったので、謎に包まれた部分がある、ミステリアスなワイン、というイメージを私は持っています。つい最近、ボルドーのシャトー・ラトゥールのオーナーであるフランソワ・ピノー氏がシャトー・グリエを買収したと聞きました。今後、シャトー・グリエは変わっていく可能性があります。
畑は北ローヌの他の畑同様、急斜面にテラス状に拓かれています。
シャトーに行く場合、丘の斜面の細い道を登って行くのですが、その細さは車同士がすれ違うことができないほどです。私が車で登っていると、ちょうど上のほうから車が降りてくるところでした。苦労しながら斜面をバックで下って行った記憶があります...
機械による作業は不可能です。ひとつひとつの畑仕事を人の手で行わなくてはなりません。規模も小さいので、まさに手作りのワインと言えるでしょう。
ヴィオニエによるワインは、コンドリウひとつ取っても生産者により様々なスタイルがあります。共通して言えるのは、しっかりした果実味があること、アルコール度が高く、ボリューム感があること、でしょう。魚や甲殻類はもちろん、肉料理と合わせるのも良いと思います。
シャトー・グリエは、樽熟成を経ておりますのでより複雑みのあるワインに仕上がっています。希少性だけでなく、充実したワインの内容により今後ますます名声を高めていくことが予想されます。
ピノー氏がシャトー・グリエの価格をこれ以上上げないことを願っています...
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