- 2010-06-29 (火) 15:41
- ワインコラム
フランスの北東部、ドイツとの国境近くにあるこの地方は、ドイツ領だったこともある複雑な歴史を抱えています。
実際に訪れてみると、鮮やかな色調の家の壁や木組みの家など、フランスの他の地方にはない独特の雰囲気があります。
ワイン産地としてはかなり北のほうになり、香り高い白ワインが盛んに造られています。また、フォワ・グラを始め食材に恵まれ、美食の土地でもあります。
世界でもトップレベルのワインが造られているにもかかわらず、あまりワイン産地として注目されていないのは複雑な畑のためか、赤ワインが少ないためか...
しかし、優れた造り手によるアルザス・ワインの品質には驚かされるものがあります。
今回はトップの造り手の中でも、2008年に訪れたジュリアン・メイエJulien Meyerをご紹介いたします。
ドメーヌはノータルテンNothaltenという小さな村にあります。ジュリアン・メイエはそのワインの品質の高さの割にあまり知られていない造り手です。というのも、現当主であるパトリック氏がマスコミに出ることを嫌っていて、一切の取材に応じないからです。
もしかすると、常にしかめっ面で無口な怖そうな職人さんかな、とどきどきしながら訪問したのですが...
結論から言うと、かなり印象に残るほど、温かくて楽しい訪問をさせていただきました!
笑顔で出迎えてくださったパトリック氏は次々と自慢のワインを開けてくれました。いずれもぶどうが生まれ育った土地を素直に表現しているような、素晴らしいワインです。
また、普通は試飲中に食べ物は出ないのですが、こだわりのチーズやサラミ(いずれも生産者と友達のよう)を「食べて!」と出してくれます。話がはずみ、どのホテルに泊まっているのか、とか、どのレストランで食事をするのか、というような話題になりました。そこでいくつかお勧めのレストランを教えて頂きました。中でもとても気になったのは、パトリック氏曰く「この店のシェフは普通じゃない」というお店。なんでもそのお店のシェフは毎朝5時には起きて新鮮な野菜などの食材を確保し、本当に満足のいく食材を素直に生かした料理を作るようです。
パトリック氏のワイン造りもそうだな、と思いました。農薬など一切使わない、厳しい畑仕事をして、醸造はなるべくシンプルに、ぶどうの個性を引き出してあげる。ワイン造りのひとつの理想の形ですね。
さて、というわけでパトリック氏お勧めのレストランに行きました。話に聞いて、是非食べたい!と思っていたのが人参です。「その人参を食べると人参に対する考えが変わる。むしろあなたはそれを人参だとすら思わないだろう!」なんて言われたら、食べたくなりますよね?!
さて、メニューを見ると、ありました!人参!!実際にお皿を見てビックリです。本当に、人参です!気軽なビストロというよりこぎれいなレストランの前菜なのですが、見ると人参が1本、シンプルにお皿に乗っています。はたから見ればなかなか面白い光景でしょう。
しかし、尋常な人参でないことはすぐにわかります。その葉っぱ!先端までエネルギーに満ちているのがわかる、ぴんとして美しい、品格を感じさせる葉っぱです。
食べてみると...
人参とは思えない!自分は何を食べているのだ!!...とはならず(パトリックさん、ちょっと言い過ぎでした?)。
でも本当においしかったです。世界人参コンクールがあれば間違いなく上位に入ってくるでしょう。
メインの肉料理も、ワイン(ジュリアン・メイエ)もおいしかったです。
ワインも含め、アルザスはフランスでもかなり美食度が高い土地だと改めて感じた一日でした。
このコラムを読まれて、ご意見・ご感想がございましたら下記メールアドレスまでご連絡ください。
- Newer: ワインコラム 第55回 イタリア ロンバルディア編
- Older: ワインコラム 第53回 ブルゴーニュ地方の話 ジヴリー編