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ワインコラム 第49回 シャトー訪問の話 幻のデュ・テルトル編

この10年で、訪問させていただいたワイナリーの数は300を超えました。

 

車がすれ違うこともできないような細い曲がりくねった山道をどきどきしながら登ったり、ふいに開けた視野に飛び込んできた雲海に目を奪われたり、数メートル先も見えない濃い霧の中を恐る恐る進んだり...

 

偉大なワインを生み出す優れたワイナリーは、人里離れた場所にあることが少なくなく、「ワイナリーを訪れること」が「ちょっとした冒険」になってしまうことがあります。

 

初めて訪れる土地が多いですし、時間にゆとりを持って訪問の計画を立てるのですが、今までに2件ほど、訪問の予定をしておきながら訪問できなかったワイナリーがあります。

 

今回はそのひとつ、幻に終わったシャトー・デュ・テルトルChâteau du Tertre訪問のお話です。

 

シャトー・デュ・テルトルは、ボルドーにある、1855年の格付け5級のグラン・クリュです。しっかりとした構成がありながらしなやかで、若いうちからおいしく飲めるスタイルが好きで、2008年の秋に訪問することにしました。

 

アペラシオンとしてはマルゴーMargauxになりますが、シャトーはマルゴー村の近くのアルサックArsac村に位置しています。

 

ボルドー、メドック地区の有名シャトーは、ほとんどのものが主要道路近くに位置していて、初めて訪れるにしても道に迷う心配はほとんどありません。あの道を走ったことがある方なら、ワインのラベルに描かれているシャトーの建物が次々に現れる風景を楽しまれたことでしょう。

 

しかし、アルサック村は主要道路から外れた内陸部にあります。村に行くこと自体は難しくないのですが、村に着いてもシャトーがどこにあるか分からず迷ってしまいました。

 

そこで、近くにあったシャトー・ジスクールChâteau Giscoursに立ち寄り、シャトーの場所を教えてもらおうとしたのですが...

Giscours3 シャトー・ジスクール 

「すみません、あの...」

 

ジスクールの受付の人「ああ!ナカニシさんですね?お待ちしておりました。」

 

「???」

 

どうしたことでしょう、シャトー・ジスクールの人が、私の訪問を予定しているとは??!

 

実は、シャトー・デュ・テルトルとシャトー・ジスクールは同一人物が所有しております。系列会社ということですね。どうやら、これら2つのシャトーの訪問を管理する人は同一人物で、私のシャトー・デュ・テルトルへの訪問の予定を、ジスクールのほうに入れてしまったようなのです!

 

道を聞くために偶然訪れたシャトーでこのようなことになっているとは...驚きました...!!

 

シャトーの人曰く、今の時間はシャトー・デュ・テルトルには予定が入っており、訪問ができないとのこと。ジスクールを訪問しないかと提案されたのですが、ジスクールは過去に訪問したことがありましたし、何よりデュ・テルトルを一目でも見たかったので、ジスクールを出て、デュ・テルトルに向かいました。

Ch. du Tertre シャトー・デュ・テルトル 

メドックMédocらしい、小石が多く含まれた石灰質の痩せた土壌にぶどうの木が整然と列をなしています。よく手入れされているのがわかります。

Ch. du Tertre2 デュ・テルトルの畑

あの素晴らしいワインは、この畑から生まれるのだなと、きちんとした訪問はできなかったものの、来られて良かったと思いました。

 

みなさまもワイナリーを訪問するときはお気をつけください(笑)

 

 

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